第3話 浜辺の家

『この世の発祥の地』


と呼ばれた久高くだか島。


その浜辺から内陸に向かうと、草木の間に小さな家が見え隠れしてくる。


屋根はわらで端正に整えられ、長い髪の毛のように上で結ばれている。壁は強めの木材で骨組みを作り、土で塗り固められていた。


すべて、浅瀬で遊んでいた少女の手作りだ。


竹を半分に切って木々の枝に結び付け、雨水がそれを通って下に置いてある壺に溜まるようにしてあった。部屋は竹を引き詰め、その上にやわらかめの葉を乗せている。


大きなサンゴのかけらが集められ、家の周りをぐるりと取り囲むように積んであった。白い海岸線のようだ。


その奥には、彼女の胸をときめかせた漂流物が、所狭しと飾ってあるのだ。


色鮮やかな紫や赤色が混じり合い、鳥の模様が施された女性用婚姻の服。象に台車を引かせた戦士の絵。髪の毛を剃り一人葉の上で座っている男性の置物。十字の木に繋がれた人。海水で滲み、縫い目が解かれつつある布には、見たことのない山や海、星空が描かれていた。


(こういうのって、本当に天地の間に存在するの?)


と、彼女に思わせた品々たちだ。

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