第69話
翌朝は、皆起きてくるのが遅かった。そんな中、俺とエリーゼはいつものように朝訓練。お茶が入ったカップを片手にフレイヤさんが、俺達の様子をじっと見ていた。
「そんな凄いこと毎日やってるの?」
フレイヤさんは呆れているのではなく驚いた表情だ。
エリーゼが答える。
「いつもこんな感じ…?。いえ、もう少しきついかも」
「…それは、凄いとしか言えないわね」
やっぱり呆れた表情になったフレイヤさん。
今後の調査についての話し合いが行われる。参加者はフレイヤさんとギルド職員と、俺達アルヴィース二人とバステフマークの三人。
まずは、扉発見組は全員が負傷したこともあり、今日一日キャンプで休んで明日には街に戻ることになった。他のパーティーは、予定から遅れ気味というマップ埋めを引き続き行う。
「安全地帯の話は、とても重要な事ね。シュン君は、他にも見過ごした所が在るんじゃないかというのが心配なのね」
そして、俺が報告していた安全地帯に関しての話になっている。
俺は昨日も考えていたことを、話す。
「有力なのは、最初のオークが居た方のボス部屋近辺でしょうか。ただ、あそこは今考えると色々とイレギュラーですよね」
フレイヤさんは、ニッコリ微笑みながら答える。
「そうね。今日、可能だったら
俺の鑑定のことはギルド職員には話していない事なので、今は曖昧な言い方で終始する。
ゴブリンキング部屋から降りる第2階層には今日は誰も進まず、明日以降に別パーティーが調査を進めることになる。俺達は当初の予定通り平原フィールドの調査だ。
「シュン、任せろ」
シャーリーさんのその声で俺は、スッと脇に避ける。
珍しくシャーリーさんが弓を使ってオークを撃ち抜いた。
1匹だけだったし、いざとなったら俺もすぐに撃てるようにしていた。
「いいだろ。エリーゼのを見て、弓変えてみたんだけど我ながらいい感じ」
シャーリーさんが胸を張ってそう言った。胸ほとんどないけど。
そしてさっさとオークを丸ごと回収してしまう。
平原フィールドで、迂回すると時間がかかりそうな場合など、時折どうしても接敵してしまうオークは対処するようにしている。集落の実態がまだよく解らないので大々的な討伐はしないでいるのだが、仕方ない。
そして、最初にこのフィールド階層に降りて来た時に見つけた集落の他に、これまで既に3つの集落を発見した。そのどれにもオークはあまり残っていなかった。最初の集落の場合と同じように、建物の数の割にはかなり少ない。
その日見つけた集落は少し規模が小さくて、建物は10戸ほど。そして、それに対してそこに居たオークは3体だけだった。
集落に残っているオークには、何か共通点があるのではないかというのが俺達の疑問だったのだが、まだ明らかではない。単純に、あの俺が切り殺したオークキングがオーク達を横穴の方に呼び集めた、その後に生まれた個体という事なのかもしれないが、ただ、それにしては当たり前のように集落の留守番をしているような雰囲気で、それに違和感を感じる。
もし後で生まれた個体ならば、あたかも、そうするように誰かから指示されたかのように思える。その誰かというのが新しいキングなのか、それもすぐには判らない。
セイシェリスさんの、時間だという声で俺達は引き揚げ始める。
来る時に調べたが、あのマジックバッグが出たオークのボス部屋の周囲には魔物の侵入を妨げる安全地帯は無かった。だからこそオークが通れて、横穴の方へ移動できたという事なのだろう。
ただ安全地帯は無いとは言え、そこは広い空間でもあり策敵は俺とエリーゼで万全なので、予定では行きも帰りもこのボス部屋で一旦休憩をとることにしている。
階段を上がってその部屋に入った途端に感じた違和感のまま、俺は、最初に俺達がトラップの結果として入った時に出来たこの部屋への入り口を見た。
「あれ? 入口が…塞がってる」
全員が俺を見て次の瞬間には俺の視線の方向、トラップだった入り口が在った辺りを見た。今日、来た時には確かにあったのに。
「総員警戒! ウィルとエリーゼはそっちの入り口の所で警戒」
セイシェリスさんが、すぐに警戒を指示して、もう一つの本来の入り口の方を示してウィルさんとエリーゼに言った。
「シュン?」
「はい。普通の壁です。通路側には最初のようなトラップがまた出来ているのかもしれませんが」
「そうか…隠し扉が再生するという話は知らなかったが…」
セイシェリスさんはそう言った。
シャーリーさんも、壁を調べる。それ以外は全員警戒態勢。
予定を変更して、トラップの確認をするために通路を急いだ。ほとんど一旦外に出てからまた入り直すようなものだが、すぐに確認しておこうという事で全員の意見は一致した。
そして、問題のトラップがあった地点。
シャーリーさんはポツリと言う。
「無い…トラップが無い」
俺は、その前後を手当たり次第に鑑定で見続けるが、何も見つけられなかった。
翌日、今度は平原フィールドへ降りる階段が塞がれていた。
「この近くに居ると危険な気がする。今日はこれで引き揚げよう」
セイシェリスさんの判断で、俺達は全員外に出た。
フレイヤさんは既に街に帰っている為、ギルドの現場責任者であるハイゼルさんと協議。平原フィールドの調査は断念して、ゴブリンキングのボス部屋方面に全てのパーティーが専念するという事になる。また、平原フィールドへの階段があった部屋には近づかないようにするが、定期的に観察は行うことになった。
横穴を警戒する領兵は既に到着していて常駐体制を取っている。拠点としているのは仮の粗末な小屋などだが、近いうちにもう少しちゃんとした建物が建てられるらしい。領兵も調査に参加するという話になっていて、その辺の調整はハイゼルさんの仕事であるが、まずはダンジョンに慣れてくださいという感じで、入り口近くでマップの確認などをして貰っているとのこと。
その後俺達は、1週間かけてゴブリンだらけの第2階層を、分岐を確認しながらマップ作成しつつ踏破。安全地帯もまた、同じようにボス部屋手前の広場がそうだと確認できた。そして、またもやゴブリンキングが居るボス部屋で蹂躙して、第3階層にまで到達。この時、アイテムは出なかったことに全員で安堵した。
そして第3階層は、ゴブリンに加えてコボルト、オークが出現する階層だという結果を示して、調査の仕事は完了となった。
その間、調査チームは何度か平原フィールドへの階段があった部屋にも行ったが、階段が消えて以降の変化は特にない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます