第42話

 翌日街に戻り、そのまた翌日にフレイヤさん交えて今回のチーム総括。場所はギルド会議室、参加者は今回の対策チームほぼ全員。総勢18名。


「こちらに気が付いていない上位種を発見して、絶好の討伐の機会だと判断し、攻撃を決行した。そのための攻撃手段が確実にあり、事実、一撃で撃破している。上位種を失った烏合の衆のオークを、ヘイトコントロールしながら個別撃破する作戦だった。

 その後のオークの増援の多さ、上位種の多さ、そしてキングの存在は全くの予想外だったが、なんとか撃破。駆逐した。

 判断が甘かったかもしれないが、犠牲も無く、怪我もほとんど無い状態で終えられたことは幸いだった」


 セイシェリスさんの報告は続く。


「オークの横穴は奥が深く、日を改めて専門家を派遣すると聞いているが、我々も、もう一度現地を訪れて、実際に見分したいと考えている。その許可を、ぜひお願いしたい」


 頷いたフレイヤさんは真剣な表情で、俺とウィルさんを交互に見ていた。


「ありがとう。確かに、今回のチーム全員で仕掛けていたとしても、逆に少なくない犠牲は出たでしょうね。そういう意味でも、少数精鋭で臨んだのは結果としては良かったと思うわ」


「けどね。お願いだから、もう二度と無茶はしないで」

 フレイヤさんは泣きそうな顔をしていた。


「キングよ。ジェネラルが4匹。メイジ。そして全部で150匹。

 それをほとんど二人でとか、バカでしょ!

 シュン君! ウィル!

 特にウィルはBランクよ。なんでシュン君引き摺ってでも撤退しないの!」


 素直に頭を下げる俺とウィルさん。いやでも、皆が居るところで、そんな怒らなくてもいいんじゃないでしょうか。


 やっと落ち着いたフレイヤさんは、会議を続けるべきと判断したギルド職員や他の冒険者からの報告に耳を傾けた。



「やはり、横穴の調査をもっとすべきという、当初のアルヴィース二人の懸念を、チーム方針としてしっかり組み込めなかった私の責任ですね。ごめんなさい。危ない目に合わせて」


 最後に、フレイヤさんはそう言って、チーム全員に向けて頭を下げた。




 その後、なんか恒例になりつつあるんだけど、ギルドマスター室で、フレイヤさんと俺達二人と、バステフマークの三人とで集まる。


「セイシェリスが言ってた、横穴を見たいという話なんだけど。

 実は、あれがどういうものかは、ほぼ推測できてるのよ。

 貴女達も、ある程度は察しているように思えるのだけれど」


 フレイヤさんは、皆にお茶を配り終えるとそう言った。


 そして、お茶を一口飲んで言う。

「あれは、ダンジョンね」


 セイシェリスさんは、ため息をついていた。そして

「うん。どう考えても、あれはそうよね。だから奥を見に行きたいって言った」


 フレイヤさんは、セイシェリスさんに頷く。

「ダンジョンの発生原因や、その発生後のロジックは、世界の謎だと言われてるわ。シュン君達もそれぐらいは知ってるわよね…。うん。

 発生が謎とは言っても、ダンジョンの実態はそれなりに研究されて、その歴史もあるの。そういう研究結果と過去の例から考えると、今回のは多分、あるダンジョンから派生して生まれた、そのダンジョンへの新しい入り口。まあ出入口と言った方がいいかしら」


「……」


「それにね。当初から私が、もしかしてダンジョンでは、と推測した理由がもう一つあるの。シュン君、解るかしら?」

「……はい。多分ですけど。俺の探査が、外からはあの中に届かなかったから…、ですか」


「正解。気にしてたでしょ。私も変だと思ったわ。だけどやはり、ダンジョン内への外からの探査は拒まれるのでしょうね。気配察知が外から効かないのは、既に実証されていることだから」



「あれは、既存のダンジョンの新しい入口。という事は、どこかと繋がってる…」

 俺がそう呟くと、ウィルさんが

「もしかして、ドリスダンジョンか」


 フレイヤさんはそれに頷いてから答えた。

「それは本当に、予想というより、当てずっぽうに近い話になるのよ。

 でも、先々月ドリスティークダンジョンで発見された、新層。新しい階層と無関係とは思えないわよね。一番近いのがそこ、というのもあるけど」


 近いと言っても、スウェーガルニから今回の横穴までは、急いで半日。まあ1日かかると思っていいだろう。オークの横穴は、俺とエリーゼが発見した訳だけど、探査スキル持ちだからこその、スピード移動のなせる業だったので。

 そしてスウェーガルニからドリスティークダンジョンまでは、3日はかかる距離である。


「ここに居る皆には、言うまでもないことだと思うけど、他の人には言わないでね。新ダンジョン発見か、なんて噂が広まったら収拾付かなくなって、調査に支障が出てしまうわ」


 フレイヤさんはそう言った。

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