第17話 パーティー結成
「こんな自分に都合の良いことばかり言ってはダメだと解ってる。だけど、シュンが暇な時だけでもいいから、私と一緒に依頼を受けたりしてくれないだろうか」
エリーゼからこんなお願いされた俺だけど、即答しました。
「仲間、友達って意味で、俺からもお願いするよ。今後ともよろしく。と言うか、この前も話したけど、俺ってホントすごい変わったとこ出身の田舎者でこの国の常識とかゼロだから、とにかくいろいろ教えてくれると助かる。それも俺からのお願い」
エリーゼは、ほっとしたような。めちゃくちゃいい笑顔で言う。
「分かった、シュンありがとう。うん、任せて」
いや、この娘ホント美人です。どっちかと言えば可愛い系だけど。打ち解けてしまうと少し残念系の部分も見えてきて、そこがまたイイ。
左手の指輪が、ちょっと久しぶりにググッググッと震えたような気がしたけど、問題ない。多分気のせいだろう。
そんなこんなで宿の食堂に長居してしまっていたので、マスターに挨拶して部屋に戻る。営業時間終了までもう、そんなになかったしね。
マスターは俺とエリーゼの間の雰囲気を何か感じ取ってたみたいで、やたらニコニコしてた。
その翌朝、恒例(となる予定)の朝訓練を終えて他の宿泊客より遅い朝食を食べようとしていたら、エリーゼが今度は荷物を抱えてやって来た。
宿をこの双頭龍の宿に変わるんだと。
昨夜帰り際にイリヤさんとは話が付いていたらしい。
エリーゼって意外と行動派なんだね。
それに対しては
「お、おぅ…、いらっしゃい」
としか言えない俺。
そんな訳で朝食はまだだと言うエリーゼと一緒に朝食。そしてエリーゼの宿の部屋は、廊下を挟んで俺の部屋の真正面になる。多分イリヤさんが気を利かせたんだと思う。他にも空いてる部屋はあったみたいだし。
しかし、これは悪いことはできません。いや、する予定もないけど。
部屋も決まって荷物を運び込んだエリーゼは今日は武器屋に行くんだと。どの店に行くのか尋ねたら、やっぱりベルディッシュさんのとこ。さすがフレイヤさんのシンパ。
あそこなら俺も一緒に行くわ、てことで二人でベルディッシュさんの店へ。
店でエリーゼが弓について相談している間、俺は店の棚にある短剣を見ていた。講習会の時に投げて無くなってもいい程度の短剣が何本かあると便利かな、てなことを考えてたから。
何見てるのかとエリーゼに聞かれて、そのままそう答えたら
「シュンには石の投擲があるんじゃないの?」
と笑いながら言われる。
「いや、もし頭部粉砕してしまったら討伐部位残らないかもしれないだろ。打撃系になってしまう石より刺突系になる短剣みたいなの方がいいかなって思うんだ」
とは言え、そもそも手裏剣をどこにどうやって何本装備するのかなど悩みは多い。
忍者ってどうやって、あんなたくさんのアイテム持ってるんだろうね。
エリーゼは言う。
「マジックバッグ持ってたら、そういうの一気に解決じゃないかな」
「ん? マジックバッグって戦闘中にそんな感じで使えるの?」
俺がそう言ったら、ベルディッシュさんが答えてくれる。
「使えるぞ。その用途だとお勧めは腰にベルトで着けるポーチ型だが、マジックバック高いからな」
エリーゼは、うんうんと頷きながら言う。
「予備の矢をマジックバッグに入れてる話はよく聞くよ」
ふむ、マジックバッグか…。
「親父さん、マジックバッグって幾らぐらいするものなんです?」
ベルディッシュさんにそう尋ねた。
「時間停止のは論外だろうから、そうじゃない容量小さい物でも金貨300枚ぐらいか、今はもう少し高いかもな」
まあまあの車を新車で買うような感じね。
この世界の金貨1枚=1万円 ぐらいのレートだと俺は思ってるので。
「容量小さいのって、その容量はどのくらいなんでしょうか」
容量の小さなマジックバッグだと、それは1立方メートルぐらいらしい。1000リットルってことだね。
倒した魔物の死体を何体も入れて持って帰るとかそんな用途じゃないし、悪くはないなぁ…。女神の慈悲のおかげでお金そのくらいだったら出せないこともないし、また稼げばいいし。
「シュンが買う気になってる」
エリーゼがベルディッシュさんの耳元でそんなことを言ってるが気にしない。
「いや、ちゃんと考えてから結論出すよ。持つならエリーゼと二人揃っての方がいいと思うからさ」
マジックバッグ持ってる人は完全に手ぶらで身軽だけど、そうじゃない人は大きな荷物を背負ってるなんて図が、同じパーティーなのにお互い気まずいよね、と俺的にはそう思った次第。かと言ってマジックバッグに全員の荷物を入れるのは、戦闘中とか一人だけはぐれたりなんてことを考えるとそれは有り得ない。メンバー全員がマジックバッグを使っているというのが理想。
そんなことを話したりした後に、ベルディッシュさんの店で補充の矢を大量に買ったエリーゼと一緒に宿に戻る。大量の矢を宿の部屋の例の収納に仕舞っておくため。
この冒険者のことも考慮して備えられた大きな収納。大活躍だよ。
で、まだ昼前だけど風呂に入りたいと言うエリーゼ。
イリヤさんは快諾。さすが女同士は問題点の共有が滞りなく出来ているみたい。
エリーゼは前の宿に風呂が無かったせいで、たまに銭湯みたいな所で入る以外は部屋で身体を拭いていただけらしい。宿をここ双頭龍の宿に移ってきたのは、風呂がある宿として元々知ってたからというのも理由としては大きかったみたい。
なので、ここからは別行動。また夕食の時にな、と声をかけて俺は自分の部屋に戻る。そして魔力操作、気配察知、鑑定の鍛錬。
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