第4話
これ以上はこの場所に長居すべきではない、と俺の第6感が呟いているので草原を道が見えた方向へと急ぎ足で進む。
スライムの残骸は土をかけておこうと思ったら、ほとんど消えて無くなってしまうところだった。魔石を取ってしまうと崩壊が早まるとか、そういうことかも。
歩きながら、かつ周囲の警戒をしながらも、レベルや
最初のレベルアップ・アナウンスの直後がステータス管理機能の解放だったことははっきり覚えているが、その後のレベルアップが何回流れたか回数には自信がない。多分5回ぐらい?
(ログ見れんのかなぁ…)
「ステータス『ピコーン♪』か・ん…り…… うお~い、なんだこれ」
ステータス画面が見えた。
ステータスと唱えれば良かったんだと事後になって実感できた。これって俺、本当は知識として知ってたんじゃね? 女神の知識の埋め込み、使い勝手悪すぎだろ。
ステータス画面(画面てか脳内ビジョンていうか、まあ取り敢えず画面と呼ぶ)は自分の視界の中にしっかり見えるんだけど、肉眼で近くを見ていても遠くを見ていても、常にピントが合った状態で見えるほぼ透明のウィンドウ。
瞳孔の向きではなく顔の向きが基準(もしかしたら脳の向きかも)で、視線の方向とは連動してないので、なんか急に額辺りに固定された3つ目の眼ができたような感じ。
これって自信もって言うけど、他人には見えない仕様だね。視点がこんな感じってことは自分の中で完結してないとおかしいし。もし他人から見られるとしたら、脳内をスキャンされてるような感じになるんじゃないだろうか。それは勘弁。
そんなことも考えながら歩いたり周囲を見回したりしながら見ていても乗り物酔いのように酔わない。身体に優しい親切仕様。
ちなみに文字は日本語。数字はアラビア数字。
文字やウィンドウのいろんな個所に意識を向けるとサブ画面が開いたり、スクロールしたりズームアウトしたりとか。
ステータスの数値に関しては、正直この世界の平均値とか何かの標準値みたいなものがないと何とも言えない。そもそも最初がどんな数値だったか俺は見れてなかったんだから、どの程度増えたのかも分からない。
でもね。体感的にはレベルアップ以降、戦闘はしてなくてもいろいろとパワーアップした実感はあるので、この辺はしっかり検証はしたいところ。
で、現在のレベルは6。最初のレベルアップは特殊だったから、もしかして転移直後はレベル0だったんじゃないだろうか。レベル1になってやっとステータス画面が見れたという感じ。
ログ見れればはっきりするんだけど、多分この考えで間違いないはず。
そして不思議なのは年齢。おそらく満年齢だとは思う。
17歳だってさ。
なにこれ。この世界は一年の日数が多いの? それとも一日の時間が長いのか、転移者の年齢は適当なのか。
(これ、取説みたいなのってないのかな。知らないで済ませちゃいけない類のがありそうなんだよな、マジで)
と頭の中でぼやきつつも面白くて、いろいろ試してみてる。でも周囲への警戒は忘れずに。
そんなこんなをしてたら道が目の前に見えてきた。草原もここまでという感じで、ここからは木の植生が増えてるのが見える。
ステータス画面を閉じるのは簡単だった。
「ステータス・クローズ」でも「ステータス画面終わり」でもいいし、手っ取り早いのはステータス画面邪魔だなと意識すれば、文字が薄くなったりさっと消えてくれたりする。
「このUIいいなぁ、地球に居た時に欲しかった。IT業界が100年進歩したかも」
と独り言。
直後に、でもこの画面と外とのインターフェースは実現難しいよなと冷める。
さて、そんなことを考えてるのは現実逃避の現れ。
問題は、道。
太陽の位置から考えて、道はほぼ東西の方向で伸びている。
明らかに人造だと思える路面があるのも判る。全面ではないけど地面が緩そうなところなのかな、石畳だからね。
人の手の入り方から考えて、街に近いんだろうと推測。
街から遠く離れた個所を舗装している可能性も当然あるけど、そうじゃないマメさを感じたので。
女神も街に近いところと言ってたし、しばらくどちらかの方向へ道沿いに進んでみて、街が見えてこなければ引き返して逆方向へ進んでみるか。
その見極めの目安の時間を太陽の高さを見ながら考える。
ステータス画面は、スキルに関する部分にハマると周囲への警戒心がかなり薄れそうな予感いっぱいなので、それは初めから自重してる。
ここからはそれ以外の画面も全部閉じてしまい肉眼モードオンリーに移行。
周囲の警戒と、戻りの可能性を考えて景色を覚えておくために左右と進行方向をしっかり眺めておくようにする為だ。
なんとなく西向きに決めて街道をしばらく歩いていると、目の前が少し下り坂に変わる。そして前方の坂を下りきった所を見ていたら、その両脇の林が妙に気になってきた。これまで見えていた林と比べて、水が集まる箇所なのか木々の密度が他よりも濃いようだ。そこまでは、あと200メートルぐらい。俺が今感じているのは何かの気配というものなのかな。そこに何か在るのか居るのか。
足を進めて残り50メートルほどで、いよいよ嫌な予感しか沸いてこない。
木が揺れていたり物音が聞こえる訳ではない。ただそこに黒いなにかが在って、気持ち悪い感じ。
もしかしたら、これが害意・悪意というものなのか?
思い付いて、手早く片手で持つのに適当な大きさの石を探して二つ拾う。
左右に一つずつ投げ分けて、気になっている辺りを狙って牽制球。
自分でもびっくりするほどの速球と正確さで林に吸い込まれ、硬い木に当たったような乾いた音が響いた。片方は、草か何かで止まってしまったようだ。
ウギャ、ウウギャ、ギャ
ググギャ、ギヤ、ギャ
グギャウギャ
現れたのは左から3匹。右にも居るはずなんだけど、と一瞬だけ思うが出てきた3匹に向けて剣を構える。
(今度はゴブリンか。テンプレすぎるんじゃね? 愛しの女神様~)
『うふふ♡』
いや、うふふじゃねえよ。と脳内妄想は頭から追い出す。
俺の左側に回り込もうとする1匹を気にしながら残り2匹の様子を見ると、こちらを挑発しているのだろう。ギャオギャオと騒ぎながら、剣をこちらに向けて威嚇しつつ、もう2匹もじわじわ距離を縮めてくる。もう一番遠いやつでも20メートルぐらいの距離だ。
おそらく、右側の林に隠れている他のゴブリンが、俺の背後を取れるようにしてるのか。
こりゃ、やっぱり先手必勝かな。そうだろうな…。
という訳で、俺は左に回り込んできた奴に突進。ゴブリンは背も低くリーチがない相手。どうにでも料理できるだろうと、一撃必殺を意識して剣を振るった。
このゴブリンは剣と小さな盾を持っている。剣の長さは俺の剣よりも少し短い。ショートソードというほどの短さではないが、もしかしたら女性用の剣なのかもしれないなと思う。何故そう思ったのかは自分でも謎。
俺の剣にタイミングを合わせているつもりなのか、そのゴブリンは剣を振ってこようとしているが既に遅い。少しだけ剣筋を修正して奴の右肩、剣を持っている方を切り抜くように打ち伏せた。
剣はゴブリンの右肩から先を切り飛ばし、そしてついでのように右側のあばらを上から順に削るようにして粉砕した。
血の匂いがムッと広がる。
(ゴブリンも血の色は赤なんだな)
そんなことをふと考えながら、返す剣を2匹目に叩きつける。
このゴブリンも剣と盾装備だ。但し最初から盾を体の真ん中に構えている。
躊躇いなく、その盾とその持ち方では受け流せないであろう、そういう所に剣を叩きこんだせいで、ゴブリンは大きく後ろによろける。
そこで4匹目が出てきた。こいつは槍装備だ。
そのまま、そいつの傍に走って突きを繰り出す。
奴に槍を突き出す余裕は与えない。
一撃目で槍を持っていた手の指を何本か弾き、2撃目で喉に突き立てて終了。
残り2匹。
最も後方にいた1匹がグギャグギャと騒ぎながら、連携して2匹で攻めようと先にバランスを崩していた1匹へ声をかけているのか。
敢えて2匹の真中へ飛び込む。盾を前に突き出してくれているので、そこに蹴りを入れてからもう1匹の脳天目掛けて剣を振り下ろす。頭蓋骨に食い込んだ剣は、すぐには抜けそうにないと判断して、短剣を抜いた。
またもや、バランスを崩して尻餅をついていた残りの1匹に、さらに蹴りを入れて転がしてしまう。そいつは既に剣を落としている。
その最後のゴブリンの首に短剣を入れたところで
『レベルが上がりました』
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