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実は、というか、なんというか、彼女のお願いは早いうちに叶うことになっている。僕がなにもせずとも、そうなっている。
彼女がそこまで知っていたかわからないが、知っていたからこそ言ったのかもしれないが、近いうちに諦目さんがここを訪れることになっていたのだ。
新幹線の中で話しているうちに、そうなった。まだ受けてくれるかわからないうちだったが、もしダメなら直談判を、受けてくれるならお礼をと言うことで、どっちにしろ直接顔を見せるようだった。
兎時さんの店から出た僕はちょうどきたバスに乗り、家に帰った。そして新幹線の中でもらっていた名刺からメールアドレスを見つけ、そこにメールを送る。会社用のアドレスだが、諦目さんの家でも見れるという。本当は私用のメールはNGだということだが、一通だけなので、まあなんとかなるだろうということだった。
言い訳のしようはいくらでもある。諦目さんは人差し指を口の前に当てながらいった。
社会人の、しかも上に立つ人間というのはなにかと弁が立たなくてはだめなのだ。当初の見かけ通り諦目さんも役職者で、だとすれば言葉もうまく扱えるだろう。
メールには兎時さんが依頼を受けてくれたこと、そして直接会いたいという旨を書いて送った。仕事に見えるように多少堅苦しい言葉を使ったが、しょせん会社勤めなんてしたことない人間だ。逆に変かもしれない。
まあ、多少文章が崩れていたり二重敬語や使い方が間違っていたとしてもまさか添削されて戻ってくることはないだろう。メールを打っただけだがとりあえず仕事をした気になり、清々しい気持ちで夕食を取る。もう時刻は9時になろうかとしていたので、遅めのごはんだ。
食後にアイスを食べながら、このあとすべきことを考える。
この後、すなわち、諦目さんの依頼が、問題なく解決すると仮定した場合の、その後。
自分はどう、動くべきなのか、少し考えた。
兎時さんはこれで終わりと言ったが、それはきっと彼女の中でだけの話なのだろう。これまでの経験上、なんとなくそんな気がする。
今回の仕事、僕は仲介人の立場だが、どうもそれだけじゃすまないような気がしている。なにせ相手は死神だ。間違いなく、れっきとした神様だ。それを相手にする以上、念には念を入れておいた方がいい。兎時さんが失敗するとは思わないが、思わぬ流れ弾に被弾することだってあるのだ。
「とすると……」
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