ラブコメ主人公
可憐とエリーが来るまでズッコンバッコンしていた貴音と有栖。
何とか可憐とエリーが来る前に部屋の匂いを消臭し、二人をリビングに迎え入れた。
女子のお泊まり会ということで貴音は自分の部屋に戻ろうとしたが、三人に止められたので一緒にいることに。
「貴音くん、有栖ちゃんとイチャイチャし過ぎじゃない?」
「そうですよ。人前だと恥ずかしい……」
あんまり人前でイチャイチャしたがらない有栖に貴音は無理矢理くっついている状態。
貴音は恋と自覚した時に恥ずかしがってくっつかなかったが、今では人前だろうと有栖から離れたがらない。
貴音のことが好きでやまない可憐には嫉妬しかないだろう。
そしてエリーはこの状況を見て「これが修羅場というやつですか?」と茶々を入れている。
「有栖は離れちゃダメ。というか前は可憐がいてもくっついたじゃん」
「それは白河先輩に取られたくないからで、今の兄さんは私の彼氏ですから」
頬を赤らめながら言う有栖は本当に可愛くて、貴音は思わずキスしそうになるが、流石にダメだったようで彼女は手で顔を抑えて離れようとしてきた。
有栖は完全にデレデレ状態にはなってくれないようだ。
「イチャイチャするのが嫌なら、私が貴音くんとしようかな」
「んなっ……ダメに決まってるじゃないですか。兄さんは私のです」
圧倒的有利であることは変わりないが、ライバルである可憐がいると有栖は対抗心が出てしまう。
誰にも渡さないと有栖自身からくっつき、最愛の兄である貴音を他の女性に近づけさせないようにしてくる。
「むぅ……こうなったら料理で胃袋を掴むしかないね」
可憐が貴音とイチャイチャしてもあまり意味がないと本人はわかっているので、来る前に買ってきた食材で料理を作りたいようだ。
もう日が落ちてきているし、そろそろ晩ご飯の準備をしてもいい頃合。
「私も作ります」
有栖と可憐はキッチンに向かって行った。
「可憐が何故、俺を好きなのか不思議すぎる」
抱き締めて寝てしまうというきっかけはあったのだが、貴音にとって未だに疑問である。
貴音は妹である有栖以外の人に興味を示さないシスコンで、学園のアイドルの呼ばれる可憐にも色眼鏡を使ったりしない。
「お兄ちゃんは学園のアイドルである白河先輩を抱き締めて寝るという、全男子が望んでいるということをしましたからね。皆に知られたらどうなるんでしょうね」
「想像したくない……」
前に教室で少し話しただけで色々と言われたし、もし、可憐を抱き締めたということが知られたら、貴音はあることないこと言われるだろう。
貴音にとっては有栖と一緒にいたいだけなので、できることなら可憐には諦めてほしい。
だから可憐には酷だが、貴音は有栖とイチャイチャしまくることになるだろう。
あの様子だと諦める可能性はかなり低いだろうが。
「これは私も混ざって昼ドラ並のドロドロ劇を描いた方がよろしいですか?」
「絶対に止めてくれ」
有栖、可憐に加えてエリーまで混ざってしまったら、どうなるかわからない。
可憐がいるからそこまで目立たないが、有栖も可憐も美少女だ。
ただ、エリーに関しては貴音の好みから外れているのだけど。
「エリーは料理しないの?」
これは貴音が思った疑問。有栖と可憐は料理を作っているが、エリーは何もしようとしない。
「料理を作る時間があるのなら、アニメを見てた方が有意義です。よって私のご飯はコンビニやスーパーの惣菜がメインです」
「それで一人暮らししてるのか……」
日本に留学しているエリーは当然一人暮らしをしており、家事は一人でやらなければならない。
それなのによく一人暮らしできるな……と貴音は思ってしまった。
「そう言うのであれば、お兄ちゃんが私のご飯を作りに来てください」
「無理だ。俺は前にレンジを爆発させて料理禁止になった過去がある」
貴音は料理が壊滅的で、どんなにレシピ通りに作ったとしても失敗してしまう。
以前に有栖と一緒に料理を作ったことがあるのだが、その時にレンジに卵を入れたら爆発し、それからは料理禁止と言い渡された。
ただ、以前に有栖が体調を崩した時には作れたので、貴音は妹のためとなれば人並み程度には作れるようになる。
「レンジを爆発って……私もしたことがないですね。あれですね。お兄ちゃんは天性のラブコメ主人公です。可愛い女の子を引き寄せ、アニメに出るような失敗をやらかしますし」
「俺はそんなの望んでいない」
「ラブコメ主人公は天性の才能で、望まずになるものです」
「なりたくない……」
シスコンの貴音は有栖と一緒にいたいのであって、他の人とはなっても普通の友達で良いと思っている。
可憐に好意を寄せられて迷惑……とまではいかないが、告白する前の関係に戻りたい。
どうあっても可憐の想いには応えられないこだから。
「まあまあ、ご飯が出来るまで暇ですし、兄弟物のアニメを見ましょう」
エリーはリモコンを手に取ってテレビをつけ、アニメを見始める。
アニメを観るのは貴音も好きだからいいのだが、エリーはとてつもなくマイペース。
貴音は少しエリーにため息をついて、ご飯が出来るまでアニメを観るのだった。
妹と学園のアイドルを抱き枕代わりにして寝ていたらいつの間にか惚れられていた しゆの @shiyuno
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。妹と学園のアイドルを抱き枕代わりにして寝ていたらいつの間にか惚れられていたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。