10時42分

中は配管がむき出しになった通路が伸び、

ショップどころか部屋といった面持ちそえないが、

その配管の上に器用に何かの部品が並べてあった。



瓶詰めされたカラフルな何かの標本が、

恨めしげにこちらを見つめていた。


少年はポケットの中から、

何かの部品を取り出し男に渡す。


男はそれを何かの機器に繋げつぶやいた。


「5レア」


少年は嬉しげに頷くと、男に手を差し出す。


男は存在に置かれた缶の中からコインを振り出し、

少年に手渡した。


レアル。


チップにもなりそうにないその金額が、

民街みんがいの物価の安さを物語っていた。


「でっ、そっちのお嬢さんは何が欲しいんだ」



そう言われて私は当初の目的を思い出した。



「携帯」


男は再び私の格好を上から下まで見渡すと言った。


「言っとくがここにあるのは、

違法携帯だけだぞ。

正規の手続きは一切なし。

一回一回電波を拾わないといけないし、

どこからでも繋がるわけじゃない」


私は説明が不足していたのを感じ説明しなした。


「そうじゃなく、

私はここで携帯を修理に出してなかった?」


男はいぶかしげに私を見て、

こめかみを押さえてしまった。



「ん? いまいち意味がわからないが、

携帯の修理は入ってない」


男はそう言ってからつけたす。


「必要ならいつでも修理するぞ」


変な質問だったのはわかるが、

私が記憶がないのは出来るだけ内緒にしときたい。


私は変な質問する、

言葉が変な外国の観光者という事にしとく。


「ありがとう。

えっとそうだ、酸素マスクとかある?」


何気なく聞いた質問に、

男は陳列パイプの一角を指差す。


「カートリッジ式の旧型だ。

交換カートリッジはここにしか売ってない。

一本で10時間持つ」


無骨なパイプのついたマスクが、

陳列棚からはみ出し垂れ下がっていた。


腰に巻く太めのベルトに、マスクから伸びた

パイプが繋がっていた。


ベルトの横にはカートリッジを差し込む場所と、

いくつものポケットがついていた。


カートリッジの予備を納めておく収納だとわかる。


そのためかベルトは、

コルセットかと突っ込みたくなるほど大きかった。


「値段はマスク400、

カートリッジは1本200だ。


空になったカートリッジは、

100レアルで買い取るから、

実質は100レアルだ 」


宿泊所での酸素ボンベのレンタルが、

500なのを考えればこれは格安だ。

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サイファーシグナル 夜神 颯冶 @vx9

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