ニンニクの匂いのするカリフォルニア

 人に慣れていない高校生くらいの男の子はニンニク売りを試みる。一日一箱吸う計算で勘定していて焚いた分だけ爪で女の子を傷つける。練習通り売り文句は上々。


「散逸したとされていた玉音放送の完全版合成すべて一発撮り。四枚あげます。お気に入りです。気をつけなさい。日本音声研究所とアビィロード・スタジオの協力を頂いたのですが来年以降これ以上の写真が撮れればいいのです。」


 人に慣れていない高校生くらいの男の子は既に200カートン分を傷つける。

 命題が出てくるとその証明を得てアセテート盤から細心の注意――どこ式っていうんだっけ。カリフォルニアだっけ――とにかく全て一発撮りで写真を仕上げる。


 二人は暮らしはじめる。相手が女の子だから1K特有の窓ひとつしかない台所の空気の悪さに耐えられるかどうか不安な男の子はやはり入口と出口は別な方が効率がよいと考えた。合理主義者だからピロートークの話題はさっき終わったセックスのフィードバック。


「臭いよ。キスの後のニンニクのせいなのかな」

「ごめんね。換気扇はめいっぱい回したんだけど」

「いいよ。もしかしてちんちんたってる? 下のおへそみたいなとこが可愛いから好き」


 ここにある録音はイメージトラックとサウンドトラックを焼き付けたものだからちょうど写真一枚分におさまる。今は行方不明だし、売ってもない。尋問を繰り返すと女の子は「記憶にない」と言うようになってきた。


 今日でもう3年目だ。女性向け雑誌に冷え性で手先が冷たい女の子はニンニクを食べるといいと書いてあった。こんな時間に皿を割ってしまった。捜査官は家政婦に礼を言う。


「皆さんありがとうございました 。写真は朝載せます」


 せどりの全貌を暴露したのはだれだ。協定参加各国を血豆で塗りつぶしたのは。写真をビンロウと一緒に吐き出したビッチはどいつだ。はやる気持ちを押さえて紳士的に、紳士的に尋ねる。


 ニンニクの粉をまぶしたシュークリームには手を付けずに女の子は言った。

「カリフォルニアだっけ――とにかく全て一発撮りで写真を出してくれたんです。」

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カットアップ二報 阿部2 @abetwo

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