25-七月二十四日(日)

 倒れ伏した佐藤うずらが、か細い声を出した。

 下腹部を、その矮躯が浮き上がるほどの威力で殴り上げた。内臓のいくつかは損傷していると考えられる。

「──あ、した……で、終わり、ですね」

「ああ、そうだね」

 連続的な遡行により、佐藤うずらの時間認識が逆転している。

 現在時刻、午後三時二十七分。

 佐藤うずらが質流れの店でタイム・タイムを購入したのは午前中である。あと一度タイム・タイムを奪い取り、跳躍すれば、佐藤うずらの記憶は消える。

「まちあわせ、し、ンッ……しましょ、か」

「待ち合わせ?」

「ご、午後、ご、じ……学校の、グラウンド。くふっ、デートには、遅い、ですかね」

「ハハ、デートを望むならそれでもいいけど、身体検査してからね」

「せ──うッ、セクハラ発言、なのです」

 タイム・タイムの目盛りを最大に設定する。

「では、午後五時。学校のグラウンドで」

「──はい」

 タイム・タイムを引っ繰り返す。




▼ Continued...

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