第21話 似たもの空親子

バタバタバタバタバタバタ!

「けっこう、うるさいんやね!」

騒音に負けじと母さんが叫ぶ。私も声を大きくして返事した。

「なんて言ってんの!?」

それで2人して笑った。お互いハイになっている。それもそのはず、ここはスカイハイなのだ。思い起こせば感慨深い。


たぶん始まりは小学生の頃だ。

学校帰り、小さな私は家の前で空を見上げアスファルトの地面にひっくり返っていた。ランドセルを背負ったまま仰向け、足を空に投げ出して、空を見下ろしていた。

「おかえり、何しとんの?」

洗濯物を取り込みにきた母さんが私を見つける。

「こうやっとったらなー。空飛んでるみたいなんや」

「へー。空飛んでるんか」

「そう、私はいまめっちゃ高いとこにおる。ずっとやってたら飛んでる感じするんよ。母さんもやってみてー」

「そうなぁ。お母さんは子供の頃にたくさんやったから、もうええかな」

「そうなん? 母さんも空飛びたかったん?」

それから空を飛びたいって話で盛り上がった。

私は車に乗っている時、車窓から流れる電柱を見るのが好きだった。自分が飛べるようになったらあの電柱のテッペン辺りをグルグルしてみたいことを母さんに言った。

母さんはもっと高くまで飛んで雲まで行きたいと言っていた。その雲は綿菓子で出来ているから好きなだけ食べて、綿菓子を布団にして寝ちゃうらしい。

「雲って綿菓子ちがうやん! 綿菓子の布団ベタベタしそうやしな」

「アホやな。空飛べるわけないやろ」

あぁ、確かに、と妙に納得したのを覚えている。


現在、上空4000メートル。

地上のあらゆる物は豆粒となった。

「うわぁ緊張してきたわぁ……」

母さんの顔がキラキラしている。きっと空を飛んでいた頃の私と変わらない表情だ。


スカイダイビング。

自由落下が約1分。パラシュートで約3分。

計4分間、子供の頃の夢を叶える。

あの時見下ろした大空の中にいる。

親子揃って空を飛ぶ。

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