第19話 校内十七不思議
我が大学附属高校は巨大な迷路だ。
旧校舎の上から無計画に工事計画は継ぎ足され建物のキメラのようになってしまった。
どれくらいの不細工キメラかと言うと、理科室と理科準備室は一見すると隣合っているのに、その間には意味不明な階段があって昇り降りの必要がある。
男士トイレと男子トイレが並ぶ充実のトイレゾーンがあれば個室1つの女子トイレがある。
校内に自然を取り入れようとして川が引かれ、その反面なのかコンクリート打ちっぱなしの生物室がある。
特に体育館が意味不明だ。校舎全体の中央中間に位置し、地下から屋上まで謎の吹き抜け、しかも天井は開閉式。これじゃ野球のドームみたいだが、作りは完全に体育館なのだ。
最も酷いのは「継ぎ目」と呼ばれる旧校舎と新校舎の境目だ。真新しいリノリウムの床と、古くて重い色をした木の床が混在している。わざと作ったとしか思えない。いっそ芸術的かも知れない。
そんな学校だからか、よくある学校の七不思議も少し様子が違ったりする。まず数が違う。わが校は七不思議ではなく十七不思議と十ほど多い。本当に全て実在するのか甚だ疑問だ。継ぎ接ぎだらけの建物だからこそ出来た十七不思議もある。噂というよりも事実だが……。
題して「蠢く廊下」
継ぎ目の最も入り組んだところ、校内にありながら小道ほどの細道がいくつも通るここで、スロープ状になった床がガタガタと動くのだ。
噂が大流行りした頃に自分も見に行ったが、本当に床が動いているのだ。床板一枚が下から上につき上がるようにドッタンバッタン……。
タネを明かすと人力だ。
継ぎ目の付近はマイナーな部活動の部室がいくつか入っているのだが、その中のひとつ、奇術部がやったことだった。奇術部の部室奥には用途不明の地下空間があり、その地下空間が噂のスロープと繋がっている。スロープは見た目状は分からないが中空構造になっており、人が3人もいればガタガタと揺せる程度には軽い。
隠しカメラまで設置されており、おそらくは驚く生徒達を見るために設置されたのだろうが、いまのところ奇術部は容疑を認めていない。
「蠢く廊下」もタネがバレれば勢いはすぐに鎮火してしまった。もともと部員獲得のため起こした騒動では、という見方もあり、仮入部期間中にタイミング良くネタバレにまで至ったのは奇術部の計画通りという噂もある。真相は分からないが奇術部には新入生が10人も入部したのだった。
他にもいくつか十七不思議は知っている。
「戦う二宮金次郎」
「歴代ミスコンNo.1の胸像が収められた部屋」
「水しかないが1本10円の自販機」
「呪いのムラマサソード」
これらも誰かの仕業だったりするんだろうか。
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