第15話 アニメ化したとしてだな

 生徒会長がまた変なことを言い出した。

「で、どうする?」

「どういう意味ですか?」

「だからだな。俺たちがアニメしたとして、どうする? 答えろ副会長」

 副会長の僕としてはどうしたもこうしたもないのだが……。会長は続ける。

「ハイ! 今オープニング始まりました! ほら!どうすんだ書記」

「えっあっ、あたしですか? えっと、とりあえず踊りますか?」

「ダンスか、まぁアリだな。アニメOPの謎ダンスはあるあるだ。よし、書記はしばらく踊っていろ」

 また変な遊びを始めた……。うちの生徒会長は気まぐれな人でちょこちょここんな事を言い出す。おそらく今日は僕ら生徒会がアニメになった時を想定してみよう、という遊びらしい。

「いっ、いつまで踊っておけばいいですか?」

「どの辺が使われるか分からんから目一杯だな」

ええ~……と不満声だが書記は謎のダンスを健気にも続ける。

「さて、この辺で男性視聴者の人気も獲得したいところだな、会計! 出番だ!」

呼ばれた会計が見るからに嫌そうな顔で抗議した。確かに会計の美貌であれば男性票も獲得できそうだ。

「……何すればいいんすか?」

「パンチラとかしとけばいいだろ。視聴者のほとんどはお猿だ!」

「……普通に嫌なんすけど。水着でいいすか?」

 水着ならいいのか……。

 というわけで今、生徒会室にはスク水を着た会計と謎のダンスを踊る書記がいる。

「ほら副会長、お前はどうする?」

「いや、僕は二人みたいな綺麗どころじゃありませんし、そんな大したことは……」

「金髪碧眼でイギリス人と日本人のハーフとかいう手垢のついたような設定しているくせに、女装でもしておけ」

「別に設定じゃないんですけど!」

 有無を言わさず女装させられた。

「謎ダンス、スク水、女装男子か、だいぶ画面が華やいで来たな。よし、鳥を放て!」

 鳥!? なに言って――。

 どこからともなく白いハトが下の方から斜めに横切っていった。あー確かに鳥がぶわーっと飛んでいくのは見覚えあるけどどうやったんだ……と、良く見れば生徒会室の入り口で大量のハトを抱えた庶務が居た。

「……ハァ……ハァ……これで、いい? 会長?」

「結構! 今のは中々の演出だった」

 庶務……。居ないと思ったらそんな言いつけを……。

「よし、それではそろそろ走りにいこうか」

 は?

「アニメのオープニングと言えば走る風景だ。皆それぞれ自分のキャラをよく理解してアピールするようにな。とりあえず俺は前髪をかきあげてナルシストっぽい素振りをするつもりだ」

 ナルシストっぽいこと自覚あったんだ……。

「書記は何もないとこでずっこけろ、会計は急に服が脱げて赤面、副会長はあざといポーズ、庶務はまぁバランス的に何もしなくていい」

 こんな調子で廊下の往復が始まった。いつ終わるんだろうか……。この「走る」ではなく、今日の話だ。アニメっぽいオチとは……。

「会長、シメってどうするんですか?」

「安心しろ、科学部に爆弾を用意させた」

「えっ、それ大丈夫なんですか?」

「大丈夫だろう。頭アフロになるだけだ」


その後、我ら生徒会は夕暮れに窓辺で黄昏れ、ウユニ塩湖で撮影をし、生徒会と敵対する風紀委員会と睨み合う構図を撮り、精神世界っぽい白い空間で裸で抱き合い、ふと何かに気づいて星空を見上げ、タイトルロゴが最後にドーン!と出た音と共に科学部お手製爆弾で髪型をアフロに決めアニメ化への予行演習を終えたのだった。


 その後の反省文で小説一本書けそうだった。

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