第11話 転生過多
流行りの異世界転生がついに私にも訪れた。
転生の事実に驚く描写は見飽きたと思うので割愛する。
私の容姿が見目麗しくなったことも大した目新しさはないと思うので省く。
唯一特殊だと思ったのは、多発だということ。
長くなるが、どうか聞いて欲しい。
まず私はご多分に漏れず勇者として転生した。今現在の強さはそこまででもないが行く末の成長次第では神殺しも成すであろうと告げられた。そのお告げを下さったのは神殿の一番偉い人であり神の声が聞こえるという法王様なのだが、この法王様も実は転生者だった。私に耳打ちして「前はしがないサラリーマンだったんだけど電車で事故って転生しちゃった」と言ってきた。それから旅立つ際に王家の秘宝のとっても強い剣をくれた国王様も転生者だ。「現代知識で農業とか改善しました」と言っていた。確かにこの国は豊かで食事も美味しい。旅立つ前に私も連れて行って欲しいという申し出が転生者の美少女から出た。「今は美少女なんですけど転生前は男でした。勇者様すごく可愛いから一緒に旅してもいいですか?」貞操の危険は感じたが戦力的に申し分ないので帯同を許可する。たぶん一線を超しそうになれば何らかの力が働いて阻止されるだろうと思う。道行く我々の前を魔物が通せんぼする。人以外に転生したタイプか。お互いの苦労話をしていると唐突に何もない空間が光り出しエルフが転生してきた。なるほど、醜く転生する者もいれば美しく転生するものもいるというバリエーションの豊かさを演出したわけだ。これからも頑張ろう、という感じで会話は終了し大きな街に着いた。「ここはホニャララの街だよ」と言っている人がいるがあれも転生者だ。転生したけどスローライフを楽しみたい派の人というわけだ。その日に泊まった宿屋の主人と相部屋の人達も転生者だった。特筆すべき点はない。寝て起きたら朝になっている。空に登る太陽は実は転生者だそうで、なんのかんの色々あって太陽として万物を見守っているらしい。ああそういえば私の目的は転生者の魔王を倒してハーレムを築き上げつつ道中は無双することなのだが、魔王の城は遠いため太陽にお願いしてみた。「魔王を倒してくれない?」「だめだめ、あれも元は人なんだから、なんかちょっと罪悪感出ちゃうから、とりあえず会話してみたら?」それもそうだなと思い、ワープ出来るタイプの転生者に手伝ってもらって魔王の城に到着。魔王にこう言う「人に悪さするのはほどほどにしたほうがいいと思う」「え、してないしてない」そうなのか。魔王は良い魔王だった。それより、と深刻そうな顔をする魔王。どうしたのかと聞くとけっこう大変な事態を聞かされた。
増えすぎた転生者と元々この世界にいた人とで戦争が起きるそうだ。
なんだ、そんなことかと思った。
転生させる転生者を探してばらけさせればいいじゃないか。
どちらにせよ、あまりに空虚だ。
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