第5話 罪を償い300年
3世代前の僕が犯した罪には、300年という破格の刑罰が課された。罪状は殺人と放火という2件のみだが、その内容が凄まじかった。西の端っこの小国を丸々焼いてしまったのだ。国1つ焼いておいて死刑ではないのは、僕の国に死刑制度がないからだ。
この国の人間は、死ねば生まれ変わる。なので全国民の魂を測定器で測り記録する。懲役300年の罪を犯した僕はちょうど100年、牢屋の中で生き、死んだ。刑期はあと200年。その三日後にとある夫婦から2代目のかつての僕が生まれ、そしてすぐ牢屋に入れられた。2代目も長生きで、なんと100歳まで生きた。僕という人間の魂は強力で、長生きしやすいのだそうだ。
刑期の残りはこれであと100年。3代目のかつての僕は85歳まで生きたらしい。そしたら後は15年。
明日、僕は15歳を迎える。
生まれて初めて外を見る。
期待に胸が膨らむけれど、少し怖かった。
稀代の犯罪者がこの国の最大級重い刑罰を受け終え、魂は浄化されたとして大きく報道された。模範的な良き囚人であった僕は、少ない時間ながらテレビを見る自由などがあった。
僕の出所を心待ちにする一派があるそうだ。ちょうど300年前ほどに発足したカルトじみた宗教団体。その一団はかつて大昔の僕がやった大罪を神格化し、信奉している。出所した僕を迎え入れ、その宗教団体のアイコンにしたいのではないか? とニュースの解説さんが話していた。
明日、僕は15歳になる。
世界に解き放たれる。
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