第5話

海の近い港町。

当時はそこに住んでいた。

潮風で髪はゴワゴワ。だけど塩水のせいか肌が磨かれたらしい。ニキビは無く、小麦色の肌をしていた。

セーラー服にカーディガンをはおり、大きなリュックにはRICOHGRのコンデジが入っている。

RICOHGRをカバンから出して一枚撮る。

丁度、花が咲いていたからだ。

黄梅は甘い香りを放ち、幸せ色の花を咲かす。

凍てつく冬に咲く、暖かな黄色。もうすぐ春が来ることを予感させるような、兆しの華。

深い空の蒼に、黄色い花がよく映える。

あまりにも香りが甘すぎてクラクラした。

「いいなあ蛍〜RICOHGR〜」

朔太郎は頬を膨らませて自分のPENTAXQを見ている。

「まー、俺はこのQちゃんで俺の世界を作るけどね〜」

「また馬鹿なこと言ってる」

朔太郎はいきなり寝そべる。

散歩中のワンちゃんが通り、朔太郎のカメラを覗き込んだ瞬間、シャッターの音がした。

コイツは写真のことになると周りを見ているようでみてない。

「おー。可愛い!いい感じっ!」

朔太郎はPENTAX Qの液晶画面をお姉さんに見せる。飼い主は溢れんばかりの笑顔になる。


「わあ。ありがとう」

「申し遅れました。僕ら、石英高校の写真部です」


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きみはできない子 夜人(らいと) @Leica_camera

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