叶わなかった初恋をずっと引きずっていた男性が、故あってその相手を助け、長年の想いを遂げるお話。
一章立ての短編ですが、その章題がなんと『エピローグ』。どうやらなんらかの物語の終章であるらしく、それがどういう意味かは読んでいくうちにうっすら見えてくる、というお話の筋。
単にこの作品単体に留まらず、このエピローグに至るまでの道筋を想像させる、独特の面白みがありました。
ある種の変化球的な構成であることには間違いなのですが、といってその構成に甘えているわけではない、というのが好きなところ。
このエピローグだけでひとつの物語として完成されており、なおかつその主題にしっかりとした重みがある。無残に散った初恋の思い出と、それに囚われ続けることの苦悩。結局、癒すことのできなかった深い傷跡。そういうものの重みというか、お腹にずしりと溜まる読み応えが魅力的でした。