第4話 半分の使い方

「チョコマカ動くな!」

「追えないなんて大恥なんだぞ!」

素早く動き隠れては消え隠れては消え

明らかに煽った行動をとり続けている


「掴めますか?

無理なんだぞ、お前には出来ないぞ」

「あそうか、掴みゃいいのか。」

「ひぎっ!」「捕まえた」

ギリギリで交わして、殴る事を考えていた。良きアドバイスを貰うことで、ギミックにすら反映出来る。

「離せ..離すんだぞ!」

「掴めっったのアンタだろ、それにもう隠れんぼは出来ないよ?」

「か、からだが動かない..なんで!」

「アタシのギミックは触れたモノを停止させるんだ。秒単位のお粗末なもんだけどね、アンタには充分だろっ!」

「ぐべぇ〜!」

今度は普通に殴られる、本来したかった事がようやく叶った。

「いよっし!

ファーコート、何分経った?」

「えっとね..7分。」

「7分!?

かぁ〜..遅過ぎ、何だよソレ。」

「...いや、充分はやいと思うけど。」


草原上部

「ったく、何だってオレがこんなヤツ担いで歩かなきゃ..。」

重量が半端ではなく、小柄だが乗用車を持っている感覚が腕にのし掛かる。

「それにこいつさっきからカラダが薄く光ってやがって..。」

穴の空いた身体から、青白い光が滲み常に溢れている。

「ん、コイツ傷口が..塞がってる?」

輝きが延びたところが、新品のように磨かれて癒されていく。

「そうか、コイツのギミック」

ミニッツのギミックは類まれな治癒能力、提督もその効果に驚嘆していた。

「記憶がどうのってのもこのせいかもな、無意識に古いデータをアップデートしてる。」

何でもない記憶もそうでない記憶も、不必要とみなされれば即更新される。


「おやおやぁ?

負けん気くんが来てくれたのか。」

「タイミング悪いなお前、偶々見かけて近付いてきた癖によ」

「攻めたもん勝ちなんだよ!」

「いきなりくんなっての!」

抱えたミニッツを放り投げ戦闘を優先する。相手のギミックは速力強化か何かであろう、勢いのある接近戦を仕掛けて来た。

「手放していいのか?」「知るかよ」

構っている暇は無い、自分の戦いで精一杯だ。はやい拳を避けどうにか牽制し続ける。

「お前の相手はおれだ」「お前か!」

いつぞやのガトリング男が性懲りも無く弾数を稼ぎに参った。

「お前、傷が癒えてるな

再び蜂の巣にしてやろう。」

投げられ空中を落ちるミニッツが目を開けた。乱射される弾をギリギリまでカラダに引き付け左手で全て握る。

「掌で掴んだだと?」

「……。」

掴んだ弾を投げ返す。標準は持ち主、名も知らぬガトリンガー。

「修復したダメージを、学習した?」

「余所見すんなよ!?」「うおっ。」

「ぐおぉ...」

槍を持って槍を制す、強い力は打ち消すのが最適の戦い方。

「そうか、なら..」

格闘の動きにワープを取り入れた。ステップをショートカットし翻弄する動きにシフト。

「本意気か?」

「ミニッーツ!

オレを見ろ、見て動きを覚えろ!」

「……!」「..何?」

一つ気がついた。

治癒能力は発動する力であり、学習能力はおそらく機能。機械に備わったものだと。

「見ろ!」

言われた通りじっと見る、目に記録を施しカラダへインプット。

「覚えたか!?」「……!」

真っ直ぐはしる。反射的に相手が腕を伸ばし殴ろうとするとワープし左サイドへ。

「そんな..全部覚えたのか!?」

「オレも続くぜ!」

「待て、二対一は卑怯だろ!」

「攻めたもん勝ちなんだろ?」

「あああ...あぁっ!!」

右左みぎひだり怒涛のラッシュ。最後は派手にアッパーを顎へ、勿論二人の。」

「がっは..」

「これでスクラップ確定だな。」

「……」「どうしたミニッツ?」

「ガイザのずっと向こう、リーダーの向かった先が気になるようだ」

「あぁ、あの女か。

気にすんな、アイツはバケモンだ。認めたくねぇが、めちゃくちゃだぜ?」


一人行動をした理由は、他が足手まといになるから。

「思ったよりネジは落ちているわね。

なかなか良い方向に進んだみたい」

メインの資源集めを有意義に行えるとして意気揚々と進んでいた。

「8本か、まぁまぁの数ね!」

「おぉ気に入ってくれたか。」

「...何?」

黒コートの白い顔の男がバラを持って歌っている。

「何の用?」

「もっとネジが欲しだろう。」

「あら、くれるのかしら!」

「いいぞ、このワタクシを喜ばせる事が出来たなら幾らでも..」

「なら貰っていくわね!」「え?」

頭上から脚を振り上げ首を挟み、横に曲げる。男は泡を吹いて倒れ袖からは多量のネジが零れ落ちる。

「わーネジだー!」

顔を綻ばせ、心からはしゃぐ。


数分後

「皆、どこだ!?」

「はい。」「なんだ?」「慌てんね」

提督が着く頃には事は終わっており、皆それぞれの収穫を手にしていた。

「何それ。」

「よく隠れるガキ」「足速いやつ。」

「……」「ネジとバカ!」

「忙しくなりそうだね。」

一瞬で理解した。

ネジ以外の部品が〝新しい仲間〟だと言う事を。

「悪いけどそのネジ、全部無くなっちゃうから、もう一度とってきて」

「はぁ!?」

「補助班今夜寝れるかな。」

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