#111 : Classic / ep.2

 飯森・久瀬夫妻から託されたメモ書きは、餃子と徳川家康ゆかりの栃木県宇都宮市近郊にある孤児院の住所だった。

 児童養護施設、《こどものいえ》。

 水上高原での妹婦婦ふうふとの——こう言うと絶対に凛子から怒られる——キャンプから帰った足でマーベリックへ、そこからトンボ帰りで再び北関東に向かう美琴の体はさすがに満身創痍。重だるい頭で訪問のアポだけは取り付けたけれど、詳しい事情は何も話していない。


「来てしまった……」


 幼稚園をひと回り大きくしたような《こどものいえ》の園庭からは、子どもたちの楽しげな笑い声が聞こえてくる。


「妙な誤解されたりして……」


 美琴の足は止まった。

 メイクはほぼしていないし、服装もキャンプ仕様のカジュアルでよれよれ。身も心もボロボロに打ちひしがれたアラサーの独身女が、児童養護施設を訪れるという状況だ。


 ——人さらいだと思われるのでは? むしろ保護される側では?


 今さら不安になって《こどものいえ》の門の前を右往左往していると、園庭で子ども達と遊んでいるおばあちゃん先生と目が合った。とりあえず愛想笑いを返しておくと、こちらへ向かって歩いてくる。

 不審者として通報されるのでは?

 反射的に隠れる場所を探してしまって、いや隠れたりしたら余計に怪しまれる、アポは取ったのだから堂々としておけばいいのでは? なんて考えて、結局愛想笑いのまま、おばあちゃん先生の言葉を待つほかないのだった。

 まるで根性がない。打倒・芦屋千枝なんて夢のまた夢だ。


「ご連絡いただいた黒須さんかしら?」


 おばあちゃん先生——あとで聞くに、杉江先生というらしい——は可愛らしく品のある言葉でこちらに微笑みかけてくれた。目元の笑い皺には、笑顔を絶やさなかったであろう彼女の半生が刻まれているようで、わずかに安心できる。


「す、すみません、急なご連絡になってしまって……。お電話した黒須美琴です……」

「緊張なさらないでくださいね。誰しも最初は不安ですし、いきなりになるワケではありませんから」

「……お母さん?」

「あら、里親になりたいということではなくて?」


 最大級のあらぬ誤解を与えていた。

 《こどものいえ》は児童養護施設なのだから当たり前と言えば当たり前だ。


「あ、ああいえ……ええとですね……」


 とは言え、真っ向から否定するのも違う気がする。むしろ失礼極まりない。ここで暮らす子どもたちに対しても。うんうん唸ってどう説明していいものか迷っていると、杉江先生はくすくす笑っていた。


「聞いていますよ、から。どうぞ、お入りくださいな」


 杉江先生は事情を知っているようだった。一瞬間を置いて、からかわれていたのだと気づく。


「知っていたならそう仰ってください……」

「ふふ、ごめんなさいね」


 この喋り方と、この笑顔。そして人を食ったような態度と茶目っ気。それだけでの正体は手に取るようにわかる。

 ここが、あの人の居た場所。


「私は親代わりですから、いろいろと心配になってしまうんですよ。老婆心ですね」


 呆れてしまうくらい屈託のない杉江先生は、よく似た雰囲気を漂わせていた。


 *


 拝啓、八幡浜でみかんを作っているおじいちゃんおばあちゃん。みかん送ってくれるのは嬉しいけど食べきれません。こと姉はみかん食べないし、凛子さんは大のオレンジ嫌いだから余ります。なのでみこ姉、もっと言えば居候時代にお世話になったシャンディさん頼みなのですが。


「うちに頼み?」

『ええ、葵生ちゃんにしか頼めないことです』


 スキャンダル大好きな記者も寝静まった真夜中。横浜のマンションにひっそり戻って《せとか》たちにご飯をあげていたら、シャンディさんから電話がありました。声はいつも通り落ち着いていて、経堂で倒れていたときのような怖さはありません。だからひと安心です。安心ではあるけれど。


「いいけど、だいじょうぶなん? 体調悪そうやけん心配なんよ」

『ご心配ありがとうございますね。その件で、精密検査をしておこうと思いまして』

「あ、聞いたことある。ブライダルチェック!」

『そんなところです』


 ブライダルチェックということは、みこ姉とシャンディさんの結婚は秒読みということです。うん、素晴らしい。お似合いです。右も左も日本人ばかりのうちの親戚も、とうとうグローバル化の波に乗るのです。

 おじいちゃんおばあちゃん、義理の孫娘は可愛くて賢い異人さんですよ。


「うわー、おめでとう! うちご祝儀出す!」

『ふふ。ではご祝儀代わりに頼まれてくれますか?』


 そうでした。ひとりで勝手に舞い上がって、シャンディさんのお願いを聞き忘れてしまうところです。今の私はアラジンでいうところのランプの魔神。一宿一飯の恩義もあります、なんでも叶えてあげましょう。


「みこ姉とシャンディさんのためやったらなんでもやるよ!」

『……なんでも、と言いましたね?』

「うん、なんでもよ!」

『ではまず、質問です。葵生ちゃんの身長と、足のサイズは?』


 どうしてそんなことを聞くんでしょう。よくわかりません。


「163センチで、靴は23とかそのへん?」

『合格です。では明日の朝、御茶ノ水駅の女子トイレでお会いしましょうか』

「え? なんでトイレ?」

『ふふ。ミステリーツアーですので』


 電話は切れました。シャンディさんは普段通り、謎まみれです。病院が多い御茶ノ水——この1年で東京の地理にそこそこ詳しくなりました、えっへん——は分かりますが、なぜ改札ではなく女子トイレで待ち合わせなのでしょう。

 謎です。スマホを握ったまま、うーんと唸ってしまいます。


「……シャンディさんから?」

「ほうなんよ。ねえ、ひふみん。都会の人ってトイレで待ち合わせするん?」


 部屋から出てきたひふみんに尋ねてみても、答えは返ってはきませんでした。微動だにしません。考え込んでいるときのボーッとひふみんです。

 しばらく待つと何やら思い当たったようで、ひふみんはゆっくり囁くように言いました。


「密室、女がふたり。何も起きないはずがなく……」

「何が起きるん?」

「…………葵生が心配」


 何を心配しているのかよく分かりませんが、ひふみんが寄ってきたので抱きしめておきました。相手はシャンディさんなのですから心配なんて要りません。


「ようわからんけどだいじょうぶやけん」

「…………」


 物言わぬひふみんが不安そうなことだけは伝わりました。ひふみんは心配症だからでしょう。「心配ないけん」と何度となく撫でてあげて、明日に備えて眠ることにしました。


 そのときのうちは、知らなかったのです。

 まさか——あんなことが起こるなんて。


 *


 《こどものいえ》の応接室は、子ども達の写真や絵で埋め尽くされていた。

 「先生ありがとう」の寄せ書きや、折紙の花で彩られたクレヨン描きの画用紙の数々。家族写真も——きっと養子縁組を結んだ親子のものだろう——飾られている。

 すべて、ここを巣立っていった子ども達の残したもの。

 《こどものいえ》は、一言では言い表せないような宿命を背負う子どもたちが、新たな運命を見つける日までのゆりかごとなる場所。


 写真の表情に、似顔絵の筆致に、自分勝手に想いを馳せては、胸を打たれる。

 涙もろくなってしまったのは、歳のせいじゃない。ここを巣立った少年少女たちと、同じ宿命を背負っていたあの人のことを想ってしまうから。


「見つかりましたか、あの子は」

「……すみません。勝手に家探しするようなマネをしてしまって」


 お茶を持って応接室の敷居を跨いだ杉江先生に詫びて、「お掛けください」と言われていたソファに戻る。

 愛する人の、知らない顔。知るのは怖くもあるけれど、好奇心が勝ってどうも落ち着けない。心ここに在らずでそわそわしてしまう。かと言っていきなり切り出すのも失礼だから、会話の糸口を探すことすら難しくて。


「この写真ですね。懐かしいわ……」


 美琴の望み通りの展開へ、ちょいちょいと手招きしてくれる杉江先生の気遣いがありがたかった。

 十数名が並ぶ集合写真の一番端に、そっぽを向いた金髪の少女が写っている。三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。反抗的で自由気まま、過去をひた隠しにし続けてきた彼女の面影がちゃんと残っていた。

 シャンディは——シャルロット・ガブリエルはたしかにここで、生きていた。

 ようやく、肩の荷がわずかに降りた気がする。


「みんな覚えていますけれど、彼女は別格でしたね」

「シャルロット・ガブリエルさん、ですか」


 杉江先生はくすっと笑った。


「ええ、正解です。座ってお話しましょうか。立っていると疲れてしまって」

「あ、ああ!」


 先生がこれだけ気を遣ってくれているのに、こちらは自分のことでいっぱいいっぱいだった。ぺこぺこ謝って応接室のソファに身を落ち着ける。窓の外からは、背負った不幸な境遇など感じさせない、子どもたちの笑い声が聞こえていた。


「人間は多かれ少なかれ、さみしさを抱えて生きるものです。必要もないのに、他人と自分を比べてしまうからですね。たとえば、うちの子たちであれば、親元で育ったたちとの差を」

「分かります……なんて言えるほどの経験はしていませんが、想像はできます」


 黒須家は両親ともに健在で、特に離婚の危機もない平和な一般家庭だった。波風が立つときは決まって、似たもの同士の母と琴音がケンカして、これまたよく似た父と美琴がおろおろするという具合。

 杉江先生は美琴の返答に安堵したように口元を緩める。


「シャーリーは特に、他人を意識してしまう子でした。彼女の生まれを考えれば当然でしょう。子どもは、言葉をオブラートで包む術を知りませんから」

「つまり、見た目が原因で、その……」


 杉江先生はゆっくりと頷いた。

 幼少期のシャルロットはそれはそれは可愛らしい、西洋人形のような女の子だったのだろう。ちゃんと正面から捉えた写真が残っていれば、ひと目見ただけで愛おしさで目が潰れる自信がある。

 ただ、それは美琴に限った話。

 普通と違う異物は、排除されてしまうもの。


「賢い子でしたから、私たちとお話はしてくれるんです。でも、ある一線から先には絶対に踏み込ませない。嘘をついたり、わざと大げさに振る舞ってはぐらかしたりする、本心を見せない子」

「他人を信用できない、と彼女は言っていました」

「自分を信じられないから、他人も信用できないんですよ。仕方のないことですね」


 杉江先生の寸評が腑に落ちた。シャンディの過去を知れば知るほど、彼女が謎で隠したものが見えてくる。

 隠したかったのは過去そのものじゃない。

 過去のせいでカタチ作られた、自分自身。


「せめて私たちくらいは信用しなさいと、叱りつける先生もいましたね」


 杉江先生は、物憂げに斜め下を見下ろしてため息をつく。


「だけど、私にはできなかった。心を開けなんて言えば、心を開いたフリを覚えるだけ。本心を明るみにすることの怖さを教えるようなものです」


 曲がりなりにも教育に携わり続けている先生の話は、子育て経験のない身には理解が難しかった。

 けれど、幼少期のシャンディに当てはめて考えれば想像もつく。

 周囲に馴染めず溶け込めず、ずっとこの世界で浮いていた可哀想なアリス。

 他の生徒であるウサギたちも、施設や学校の先生たるフクロウたちを受け入れず、受け入れられず、孤独に生きてきたアリス。

 本当の姿を誰にも明かせないまま、いまだに女優だった頃の設定を引きずってしまっている、舞台の亡霊・芥川アリス。


「私は、どうしてあげれば——」


 言って、自身が泣いていることに気づいた。

 出てこなくなった言葉の代わりに、杉江先生は肩に手を当ててくれた。情けない自分の心が、温かな手で撫でられる。


「思うままに振る舞えばいいんです。貴女は、シャーリーの幸せを自分のことのように願える素敵なオトナですから」

「でも私は……まだ、コドモみたいなもので……」

「いいじゃありませんか、子どもでも。現状に満足せず、成長を続けることができるんですものね」


 どんな返事を返したのかわからない。ほとんどうめき声のような嗚咽まじりの音を、全身を震わせてひねり出していた。


 彼女に釣り合う人間になりたい。

 包み込んで、成長させてくれた彼女に並び立てるようなオトナになりたい。

 だから自分の嫌いなところを直したかった。弱々しい部分を見せられず背伸びしてしまう、情けなくなるくらいに幼いコドモじみた側面を、背伸びで覆った。

 だけど。

 背伸びは自分をよく見せたい気持ちの表れ。現状に満足できていない気持ちの裏返し。

 それはコドモならではの。

 そしてコドモにしかできない、成長し続けることの証。


「……オトナって、なんなんでしょうか」


 自分でも、何を尋ねているんだろうと思う。それも初対面の杉江先生に。彼女はシャンディの先生であって、自分の先生ではないのに。

 杉江先生は、「ふふ」と小さく笑った。


「大人ってなんだろうと悩み続けること。それが大人であり、子どもなのかもしれませんね」


 曖昧な杉江先生の言葉に、答えは出せなかった。沈黙が流れた直後、杉江先生はペンを走らせながら言う。


「そう言えば先ほど、とある女の子が見えましてね。なんの連絡も寄越さず実に十年ぶりに。親不孝な娘ですよ」


 メモ書きの内容は、《こどものいえ》からほど近い場所にある共同墓地。そこへの道案内だった。


「会って、いっしょに大人について考えてみてはどうかしら。あの子もきっと、答えを求めているでしょうから」


 腹は決まった。メモ書きを受け取り、美琴は地図に従って歩き出す。


 どうかまだ、その場に居てほしい。

 これ以上、すれ違っていたくない。

 そんなコドモじみた願いも、今は情けないと思わなかった。

 そうしたいからそうする。それが彼女のためにもなるのなら、喜んでそうする。

 歩きは早歩きに代わり、駆け足になる。動きやすい服装でよかったと、移動の疲れも気にせず走り出していた。


 *


 コン、コココンコン。とリズミカルにトイレの扉がノックされました。なので私もコンコンと返します。

 シャンディさんとの待ち合わせ場所は、御茶ノ水駅内の女子トイレ、一番奥の窮屈な個室。「先に入って待っていてください」なんて言われて白い壁を見守るのも飽きた矢先のことでした。


「シャンディさん?」


 しかし、返事はありません。扉を開けて外の様子を伺おうとしたところで、シャンディさんからのメッセージがスマホに届きます。


『静かに。ドアを開けてください』


 意図がまったくわかりません。まさしくミステリーツアーです。言われた通りゆっくりドアを開けると、この間、温泉旅行に行ったときのサングラスとマスク姿のシャンディさんが立っていました。

 そして途端、トイレの個室に滑り込んで鍵を閉めてしまいます。密です。いや、そんな話ではなく。


「どういうことなん……?」

「いいから服を脱いでくださいな。あたしも脱ぎますから」

「はえ!?」


 言うが早いか、シャンディさんは着ていたものを脱ぎ始めました。マスクにサングラスは当然。春物のカーディガンからゆったりしたブラウス、ロングスカートとなんの迷いもなく脱ぎ捨てていきます。

 脳裏に、昨晩のひふみんの言葉がよぎりました。


 ——密室、女がふたり。何も起きないはずがなく。


 シャンディさんは、女の人が好きな人です。

 そして私、黒須葵生は、いちおうは女です。

 ということは、すなわち。


「シャンディさんにはみこ姉という人がおるよ!?」

「時間もありませんので急いでください。靴も脱いで」

「う、うちそういうことやったことないけん……」

「あら、それは初耳ですね。お相手しましょうか?」


 「ひっ」と声を上げてしまいました。別にシャンディさんが嫌というワケではなく、単にそういうことを考えたことがないというだけですけれど。


「冗談ですよ。露骨に嫌がられると傷つきます」

「いや、ちゃうけん! シャンディさんが嫌いとかやなくて」


 すでにシャンディさんは下着だけになっていました。魔性のオトナの女っぽいのに意外と純情なレースが可愛らしい——ではなくて。逆にこちらの下着を、綺麗なシャンディさんに見せるというのが恥ずかしく。


「何にもしませんから、ほら早く!」


 なんて考えているうちに、あっという間にひん剥かれてしまいました。黒須葵生、一生の恥です。今日に限ってろくでもない下着を——


「はい、あたしと服を交換しましょう。で、これ被ってくださいな」


 そしてボストンバッグから取り出したのは、金髪のウィッグでした。

 なぜウィッグ? なぜカツラ? なぜ金髪?


「なんで?」

「今日の葵生ちゃんは、一日シャンディです。着替えたら近くの病院へ向かってくださいます?」

「なんで?」

「受付で予約表を渡してください。葵生ちゃんの名前でブライダルチェックを予約しておきましたから」

「なんで!?」

「だいじょうぶ、お金は払ってあります。保険証持ってます?」

「どういうことなん!?」

「着いたら説明しますから。今はとにかく検査入院へ向かってください。お願いします」


 シャンディさんに——すでに私の服に着替えている——頭を下げてお願いされると、疑問だらけですが何も言えません。もとより、なんでもすると言ってしまったから引くにも引けず、とりあえずまだほんのり温かいブラウスに袖を通します。

 身長と足のサイズを聞いたのは、この服交換のためなのでしょう。だけど、どうして検査入院に服交換どころかウィッグにサングラスまで必要なのでしょうか。これでは変装しているようなものです。


「……わからんけど、これで病院行けばいいん?」


 とりあえず着替えて、シャンディさんっぽい格好にはなりました。ハイウェスト気味のフレアスカートが苦しいですが、「ゆるめるな」というのがシャンディさんの指示です。


「ええ。敵は手出ししてきませんからご安心を」

「敵って何!? 狙われとるん!?」

「言葉の綾ですよ。さ、行ってらっしゃいませ」


 追い出されるように個室を飛び出したら、鏡に姿が写っていました。

 衣装は借りたもの、顔もほとんど覆っているので、パッと見はどう見てもシャンディさんです。挙げ句カバンまで交換したので、今の私はシャンディさんの替え玉。

 うん、可愛い。悪くはありません。


「……ふふ。ふふふ? あたしは、シャンディですけん」


 鏡に向かってモノマネをしてみましたが、全然似ていませんでした。すごすごとトイレから退散し、改札を抜けて病院へ。そして言われた通りによくわからない検査入院の説明が始まったあたりで、シャンディさんからメッセージが届きました。


『葵生ちゃんのおかげで、煙に巻くことができました。もう変装やめてもいいですよ。お疲れさまでした』


 まるでわかりませんが、待合室に戻ってウィッグを外しました。すると、近くに座っていた患者さんの顔がみるみるうちに青ざめて、一目散に走り去っていくのです。なんなんでしょうか。ひと違い?

 しかし、シャンディさんの目的はなんだったのか、私にはまるでわかりません。私にわかることと言えば。


「はい、黒須さん。採血しますねー」

「ひええ……」


 ブライダルの予定もないのに、受けることになった健康診断と、注射の痛みだけでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る