quiet talk #5 : Cherry Blossom

 春の訪れを告げる薄紅色の花々が、往路と恋路を祝福してくれていた。


 小高い台地と低地の境にある、坂の多い町・六本木。そのはずれに位置するアンティッカの裏手は公園になっていて、街の中枢にある六本木ヒルズまで点々と桜並木が続いている。

 夕刻。西に傾いた茜色の太陽が公園を、桜並木を。そして隣を歩くシャンディの白磁の肌を見とれてしまうほどに赤く染め上げている。


「綺麗ですね、シャンディさん」


 美琴の視線は茜空より、強い風に揺れる満開の桜より、隣のシャンディに向いていた。陽の光に照らされた琥珀色の瞳は、きらきらと輝く琥珀のようで美しかった。


「桜の花を見てから仰ってくださいな。こんな状況に相応しい、貴女お得意の常套句クリシェがあるはずですよ」

「そうですね。では失礼して」


 流行の漫才師のように「時を戻そう」と告げて、今度は満開の桜並木を見上げてから呟く。


「綺麗ですね、シャンディさん」

「ええ。とても美しい桜です」

「貴女の方が綺麗ですよ」

「知ってますよ、ふふ」


 口元に手をやって、シャンディはころころと笑ってみせた。

 バーテンダー・黒須美琴による立場逆転遊戯ゲームを終えた美琴は、凛子を駅まで送ってから再びアンティッカにとって返した。

 シャンディとデートの約束を取り付けたからだ。

 それも美琴からシャンディへ、告白を伴うもの。


「美琴さんの心は、あたしでいっぱいですね」

「認めますよ。張り裂けんばかりの胸中をどう告白すれば意中の貴女をモノにできるだろうと心配になってしまって」

「安い女じゃありませんよ、あたし」

「気位は特に高いようですからね」

「だって実際、偉くて可愛いんですもの。これでふんぞり返らない謙虚さを持ち合わせていたら、非の打ち所がないじゃないですか」

「ええ。そんな傲慢な女王様には、それこそ完璧な王子様が必要だと思いまして」

「そうそう。最後までその調子でお願いいたしますね」


 どうにも柄じゃない。自身でもそう感じながらも紳士じみた背伸びを辞めないのは、シャンディのまとったオトナびた雰囲気が原因だ。彼女の美しさにあてられて憧れてしまったものの末路、惚れた弱みなのだろうと思うと美琴の口元は自然と緩む。


「ですが、ただ告白するだけでも面白くないので」

「また遊戯ですか……。大事な決め時くらい花を持たせてほしいものですが」

「手加減されたって嬉しくないでしょう? あたしも本気で勝ちにいきます。あたしが予想しない告白をしてくれたら美琴さんの勝利、あたしの想像通りの告白だったらあたしの勝利」

「勝者のご褒美は?」

「敗者を好きにできる権利、でいかがです?」

「願ったり叶ったりです」


 シャンディはやる気に満ちたように瞳を輝かせていた。

 が、言葉や態度とは裏腹に、シャンディは歩道を区切るガードレールに手をやって止まった。肩で息をしている。


「病み上がりなのに無理をさせてしまいましたね。戻りましょうか」

「いえ、へーきです。ちょっと休めば……」


 華奢であばらが浮くほどに細いシャンディは、その白磁の肌の見た目通りに身体の弱いもやしっ子だ。体調もよろしくない。身体が重いのだろう。

 美琴はシャンディの前で屈んだ。


「運びますよ、

「運ぶ、って。ちょっと、美琴さん……!?」

「シャンディさんは軽い女ですから、女の私でもなんとかなりますよ」

「そっ、外なんですよ? 人目もありますから!」


 抵抗を無視して、美琴はシャンディの脇と足下に手を伸ばす。

 シャンディを自身の身体に押し当てるように抱きしめて、力を入れて立ち上がった。見た目通りシャンディは軽かったが、それでも大して鍛えていない美琴の筋力では足下がふらつく。


「ほら、軽い女でした……」

「やせ我慢しないでください。たしかに平均よりは軽いですけど、それでも四十――」

「おや、シャンディさんの体重は林檎3個分では?」

「それはどこぞのネコちゃんです。とにかくあたし重いですから!」

「貴女が軽そうに見えて重いってことは知ってましたので」

「そっちの重い軽いではなく――」


 美琴の腕の中で暴れるシャンディを、普段通りのキスで抑えつける。抑えつけた後で、ここが人目のある屋外であることを思い出す。

 ふと顔を上げると、少女が口をぽっかり開けて美琴達を見ていた。


「こ、子どもの教育にも悪いですよ。だから下ろしてください……」

「いいえ。どうせならこういう愛のカタチもあると教えてあげましょう」

「強引なんですから……」


 言っても聞かないことに気づいたのだろう、シャンディは誰とも視線を合わせず済むように、美琴の胸元へ顔を沈めた。アンティッカではさんざん辱めてくるのに、外だと弱い。そんなシャンディの姿が愛おしい。


「この展開は予想の範疇ですか?」

「……予想してるワケがありませんよ。まったく」


 不満たらたらのようでいて、シャンディが回してきた両手がきつく美琴を抱いてくる。平静を装って六本木ヒルズの中心部へ歩みを進めるので精一杯だ。腕と脚が震えるが、一度始めた手前、途中では投げ出したくない。

 どうにか目的地にたどり着き、複合施設のエントランス前でシャンディを下ろした。夕焼けでシャンディの顔色はうかがえないが、俯きがちで当惑した姿を見ればどう感じたのかは自ずと想像がつく。

 ため息をついたシャンディは、下弦の瞳でにらみつけてくる。


「ホント、困った美琴さんです。勝つためには手段を選ばないんですから……」

「それだけ私も本気だということです」

「充分伝わりましたよ」


 苦笑するシャンディと共に、エントランスをくぐる。向かう先は商業施設の屋上、空中庭園だ。

 その一番端。見晴らしのよい高台になった場所へ歩みを進める。遠くに見えるのは新宿の高層ビル群。そして眼下の公園には満開の桜並木。そのどちらもが茜色の夕焼けに彩られ、長い影を同じ方向へ伸ばしている。


「そういえば、以前のデートの時もこんな空を見上げていましたね。夕焼けと宵闇のグラデーションが美しいこの時間を、マジックアワーというそうです」

「よくご存じで」


 横浜店外遊戯の第三戦。ディナーの時に見上げた空は、今日と同じようなマジックアワーだった。一日のうちでもっとも綺麗な時間。どんなに下手くそなカメラマンが撮影しても綺麗に撮れるとさえ言われる空模様。


「それで。いったいどんな告白をしてくださるのかしら。マジックアワーの演出まで用意して」


 先ほどまでの恥じらいはどこへやら。むしろ先ほど辱められたぶんを倍返ししてやるとばかりに瞳をぎらりと光らせてシャンディが詰め寄る。マジックアワーの中で見たシャンディの姿は、何よりも美しくて思わず息を呑む。

 ただ、遊戯に負けるワケにはいかない。鼻を明かす意味でも、成長を見せる意味でも、美琴は昔よりは格段に高く伸びるようになった背伸びをしてみせる。


「どんな告白だと思います?」

「あたしが望む返事はひとつだけ。今日はちゃんと言ってくれるんでしょう?」

「ええ。ですが、シャンディさんの理想のデートにはほど遠いんです。あの夜で覚悟を決めていれば、デートコース探しのハードルを上げずに済んだのでしょうけど」

「ふふ、そうですね」


 美琴は横浜以上のデートを必死で模索していた。ネット検索だけでは飽き足らず、地元横浜の観光雑誌まで頼ったほどだ。

 横浜には無数の観光地がある。

 以前は遠巻きに眺めるだけだったみなとみらいの大観覧車。水上バスクルーズや、山手の異人館に英国風ガーデン。足を伸ばせば八景島も定番のスポットだ。

 だが、シャンディの好みは分からない。聞き出そうとしてもはぐらかされるばかりで、理想のデートに応えるのは難しい。


「ですから本気のデートは日を改めて行うとして。今日はお返事だけでも伝えようと思ったんです」

「ご配慮いただきありがとうございますね」


 暗に今日がであることに触れて、シャンディは美琴から視線を外して景色を眺めていた。

 沈黙の時間が伸びるほどに、美琴の鼓動はうるさくがなりたてる。庭園の手すりに掴まって、並んで都心の風景を見ているだけでは状況は好転しないのに、美琴の口はたった二文字を切り出せなかった。


 告白が恥ずかしいワケではなかった。

 今さら「好き」だと伝えたところで、それがシャンディの心を響かせるようには思えなかったのだ。なんだかんだ美琴は、もう何度もシャンディに「好き」だと告げている。


「…………」


 普段なら責め立ててくるシャンディも、今日は明らかに美琴を待っている。出方を窺っているという方がより正しいだろう、琥珀色の瞳はイタズラに歪んだまま、隣に絶つ美琴の横顔にちらちらと視線をやっていた。

 きっとシャンディは、美琴の覚悟ができるまで待つだろう。それがどれだけ苦しい片思いだろうと、彼女から美琴に手を出してくることはない。

 シャンディのためにも、これ以上は待たせられなかった。

 美琴は深く息を吸い込み、もうずっと前から決まっていた覚悟を口にした。


「……私は、シャンディさんが好きです」

「ええ」

「好き、だなんて言葉では言い表せないくらい、貴女に魅了されています。貴女の……少し攻撃的で嗜虐的な言葉も、時に狼狽えてしまう可愛らしさも。貴女が頑なに守り通す謎も含めて、愛しています」


 六本木の喧噪と風の音で、シャンディの声は聞こえない。横目にちらりと見た彼女の横顔が柔らかく微笑んでいて、美琴は安堵する。


「それに……恥ずかしい限りですが、貴女から愛されたい自分がいます。こんな気持ちになることは今までなかったので、随分時間をかけてしまいましたが……ようやく結論を出すことができました」

「待った甲斐がありましたね」

「ええ。お待ちいただきまして、そして私を、貴女のいるオトナの世界まで引き上げてくださって、ありがとうございます。例の占い師が言っていた《優しくて寛大な教育者》の意味が、今になってようやく理解できました」

「教えることはまだたくさんありますけれど?」

「これは手厳しいですね」


 やはりまだまだ、シャンディには追いつけない。釣り合わない。

 だが、彼女の側にいればいつかは追いつける。いつかは釣り合える。


「……私でいいんですか、シャンディさんは。私以上に貴女に相応しい存在は、他にもたくさんいると思いますよ」

「謙遜なさらないでくださいな。美琴さん以上に相応しい存在なんていませんもの」

「では何故、私だったんですか?」

「恋に堕ちることに理由が必要かしら?」

「それは照れ隠しですか?」

「よくお分かりで」


 シャンディが肩を寄せてくる。春先の肌寒い空気の中、シャンディに触れられた部分が熱を持つ。心地よい体温が伝わって。それをもっとよく味わおうと、美琴はシャンディの腰に手を回して強引に抱き寄せる。


「あら、今日は随分と強引ですこと」

「今回の遊戯は、シャンディさんが予想だにしない告白をしなければ勝てませんから。普段とは違う私を味わっていただきたいんです」

「ふふ。背伸びも背伸びですね?」


 恥ずかしいところを指摘されて、美琴は思わず顔を逸らした。視界は都心のビル群から眼下の公園へ移る。日が落ちて薄闇の中、ライトアップされた薄紅色の桜並木が美しい光の道を作っていた。


「……あの桜を、これからも貴女と見ていたいんです。来年も再来年も――」

「死が二人を分かつまで?」

「――これも予想の範疇でしたか」


 どうにか奇を衒おうとしたものの、やはりシャンディの予想を越えるのは難しい。しかも先の告白は、今よりもさらに進んだ関係を暗示していることに言ってから気づいてしまう。


「ふふ。常套句は飽きていますから。それに、そこまでいくとプロポーズですね」


 言葉の重みが違いすぎる。さすがにそこまでの――早苗と董子のような関係になる覚悟まではできていない。美琴はどうにか、かつてシャンディにされたように言葉を弄ぶ。


「シャンディさんはプロポーズだと受け取ってしまったようですね」

「言葉を弄ぶのがお好きなようで。誰に似たのかしら」


 くすくすと余裕の笑みを続けるシャンディに、美琴は正々堂々ぶつかる。


「今はまだ、貴女をちゃんと知らないので判断できませんが……。ゆくゆくは本当にそうなればいいと私は思っています」

「え……」


 ここだ。今が好機とばかりに、美琴はシャンディと視線を合わせた。アンティッカの仄明かりにも似た暗闇に浮かぶシャンディの瞳は、まあるく見開かれている。動揺した証を見逃さず、キラーフレーズを吐いた。


「貴女が一人ぼっちのアリスに戻らなくて済むように、側に居続けたい。これが今のところの、私の気持ちです」


 告げて、美琴はシャンディを抱きしめた。閉園時間が近いこともあって、屋上庭園は人もまばらだ。第一、見られたところで気にならなかった。


「遊戯の判定はいかがですか?」


 シャンディの手が、美琴の背に回される。シャンディの鼓動と吐息を感じた。控えめな胸が、美琴のそこそこの大きさの胸を押している。息苦しい。息苦しいが、それは胸部を圧迫されているからではない。

 緊張して、もう声が出ない。

 オレンジの香りと体温に包まれた途端、まるで恋する少女に戻ってしまった。シャンディのことだけで頭がいっぱいになる。他のことなど何も考える余裕がなくなる。

 オトナの恋愛にはまだまだほど遠い、と美琴は蕩けてしまいそうな思考の中でやんわりと自嘲する。


「……搦め手を使えるようになりましたね。それに、あたし好みの正々堂々。告白の返事と、遊戯の判定、どちらを先に聞きたいですか?」

「どちらからでも。貴女の望むままに」

「ふふ」


 美琴の腕の中で、シャンディが動く。眼前まで迫った白磁の素肌、桜にも似た薄紅色に色づいた唇に、美琴の意識は向かっていた。

 試してやるとばかりにニヤリと口角が上がった後、シャンディの唇が動く。


「いいえと言ったらどうします?」

「はいと言わせるまで、愛します」

「待ってと言われたらどうします?」

「もう待てないのは承知の通りです」

「あたしは性格悪いですよ? 口も悪いし、さんざん好きな人を試します。イタズラもしますしイジメて愉しんだりもします。それでも――」


 強引に唇を塞いで、シャンディを黙らせた。

 悪い言葉を弄び続けるシャンディの舌を、自身の舌で抑えつける。

 どんなシャンディだろうと愛するという誓いを立てる。どんな謎だって呑み込むと誓う。長く熱い口づけを続けて、ゆっくりと唇を離す。

 屋上庭園の仄明かりに半分だけ照らされたシャンディの顔は、これまで見たことのあるどんな顔とも違っていた。驚きつつも、照れくさそうにはにかんでいる。この表情が、本心から美琴を愛している証――ならばいいと美琴は思う。


「――イエス、です。待ち遠しかったですよ、

「敬語のままなんですね」

「あたしはこっちの方が慣れているので。でも美琴は、敬語はやめてくださいな。ずっとお店の関係を引きずっているようで、心の距離を感じます」

「貴女に一番綺麗な自分を見せたいから敬語なのですが」

「要らぬ心配です。どんな貴女だって綺麗ですよ」


 抱き合ったまま、今度はシャンディに唇を奪われる。

 心の通い合った口づけが、こんなにも身体を溶け合わせるものだとは知らなかった。全身が燃えるように熱い。もっとシャンディを求めようと、よりきつく抱きしめる。息苦しく、足下もおぼつかない。膝が笑っている。


「あ……!」


 立っていられなくなって、側のベンチに座った。腰から砕けたと言った方が正しいくらいに落ちた格好だ。痛む腰をさする間もなく、美琴の膝の上にシャンディがまたがってくる。


「あたしがどんな人間でも、美琴はあたしを愛してくれますか?」

「もう充分分かってるでしょ」

「いーえ。たっくさん愛の言葉を戴かないと理解できません。あたしって物覚えが悪いので」

「そうやってすぐ、人を辱めようとする……」

「それがあたしの愛し方なんですもの。ふふ」


 そしてしばらく、口づけを続けた。燃えるような情熱的なキスをしてくるシャンディは、日本人ではないのかもしれない。美琴の中にかろうじて残っていた理性は、そんなどうでもいいことを考えるだけで精一杯だった。

 ようやくキスの雨が終わった頃、シャンディは思い出したように告げる。


「夢中になって忘れてましたけど、遊戯の判定です。結果は……あたしの勝ち」

「いや、ここまでやって予想の範疇なの……? 私に負けたくないからってわざとやってない?」

「だって、本当にどこまでもオーソドックスな告白だったんですもの。美琴はまだまだお子ちゃまですねー」

「ぐぬ……」


 こちらは死ぬほど恥ずかしかったというのに、余裕綽々とほくそ笑むシャンディの姿はどうにも不公平だ。なんとか鼻を明かしたくなって、シャンディが予想もしえないような告白をしたくなる。


 その時だった。一瞬のひらめきだ。

 美琴の脳裏に妙案が降りてきた。どちらも死ぬほど恥ずかしい諸刃の剣の告白方法。


「じゃあもう一回、告白していい?」

「ふふ、もう一回と言わず。何度でもどうぞ」

「言ったね?」


 言質を取った。美琴はニヤリと不敵な表情を見せ、先ほどまで立っていた屋上庭園の手すりに手をかける。


 これから行う告白は、シャンディには絶対予想できない。

 何故なら意気地なしで背伸びがちな美琴は、恥ずかしすぎて絶対にやらない告白だから。

 美琴は大きく息を吸い込んで、叫んだ。


「シャンディさあああああんっ! 好き! 大好きいいいいいッ!!!」

「な、何してるんですか美琴!?」

「何って、告白よ! 六本木のど真ん中で、貴女への愛を叫んでるの!!!」

「そんな青春映画じみたことしないでください! いいオトナですよ!? 恥ずかしくないんですか!?」

「恥ずかしいに決まってるでしょ!? だけど……好きなんだからしょうがないじゃない!」

「やめてください、人が来ますよ!? 聞かれちゃっていいんですか!?」

「構わない! 私はシャンディが好き、大好き! 愛してるの! 貴女の姿も声も言葉も、優しいのにひねくれた性格も面倒くさいところも全部全部愛してるの!!!」

「わっ……分かりました分かりましたから! 恥ずかしいのでもうやめて……」

「なら、私の勝ちって認めて! こんな告白予想できませんでしたって!」

「そ、れはイヤです。一度取った勝ち星を譲るなんてしたくありません!」

「そんな頑固なところも好きーッ!」

「美琴!?」

「だったら私の愛に答えて! 大声で、全力で! シャンディ、大好き!」

「ああ、もう……!」


 めちゃくちゃにヤケクソな美琴の告白に、シャンディはほとほと呆れたように嘆息した。そして、美琴の隣に立ち、大きく息を吸い込む。


「美琴っ! 大好きですっ! 貴女をずっと離しませんからーッ!」


 なおも叫び続けようとする美琴の唇は、シャンディによって再び塞がれた。

 慌てふためくシャンディを見て溜飲を下げた美琴は、ようやく安堵のため息をついた。


「これからもよろしくね、シャンディさん」

「……もう、美琴のばか」


 ぷうっと頬を膨らませて赤らむシャンディがどこまでも愛らしくて、美琴は彼女を抱きしめていた。

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