第二十六章 エピローグ

 最後まで読んで頂いて、本当にどうもありがとうございます。


 この作品が完成したのは、もう一年以上も前のことになります。

 その時に、正式にエピローグも書いたのですが、時間が経過して内容が古くなってしまいました。

 本文でも、部分的にそうした箇所があるかと思います。


 現在、企業では働き方改革なるものが進行中ですが、成果は上がっていないようです。

 相模原障害者殺傷事件では、公判が始まりました。

 トランプ大統領を巡る状況も、日々変化しています。


 そういう訳で、エピローグだけは、この挨拶に代えさせて頂くこととしました。また機会があれば投稿するかもしれません。


 書く前は、『自分にノンフィクションなんか書けるのだろうか』との懸念がありました。そのため、なるべく字数を稼ぐように意識して執筆に取り組みました。その結果、原稿用紙1500枚分というボリュームに膨れ上がってしまいました。

 現在、ショートバージョンの構想もあるのですが、他の構想もあり、実現するかは不明です。


 最後に、自己愛性ブラックとは何か、簡単に解説をしておこうと思います。

 ここでは、『自己愛』と『分離不全』というキーワードが重要となります。


 彼らは、自己承認欲求と自己顕示欲が強く、自身の成果をアピールすることに血道を上げます。

 そして、『未分化な一体感』によって、常に不安と恐怖、自信の欠如を抱えています。そのため、一人ではいられず、常に誰かと一緒にいてワイワイキャッキャとはしゃいでいることを好みます。

 誰かが傍にいて、認めてもらえると実感することで、安心感を得られるのです。

 その結果、過剰な成果主義と長時間労働、そして飲み会地獄に陥ります。


 モラハラも、分離不全が原因です。

 彼らは、他者に一体感を抱き、自身の一部、或いは延長としてとらえています。

 そのため、部下や選手が失敗したり、思い通りに動かないと、パニックを起こして自己愛憤怒に陥ります。

 そして、他人を客観視出来ないために、具体的で適切な指示や指導が出来ません。

 よって、指示はより抽象的で不明瞭なものとなってしまいます。

 『親の顔が見たい』『どういう育ち方をしてきたんだ』などのワードを繰り出すしかなくなってしまいます。


 パワハラや暴力も同様ですが、更に他の要素が加わります。

 彼らの仕事や競技に対するモチベーションは、根源的な『不安』や『恐怖』なのです。

 そのため、部下や選手のモチベーションを上げるとなると、不安や恐怖を煽ることが必要だと考えます。そのツールとして、パワハラや暴力が最適ということになります。


 よって、部下や選手を自殺に追い込んでも、彼らは自身の非を認めたり、反省したりするということはありません。自分がそうして上手くやってきたため、自分が絶対的に正しいと信じています。

 更に、自分の非を認めることは、自分の存在そのものが否定されたと認識されるため、命がけで自分の正当性を主張するでしょう。


 ブラック企業のみならず、最近は、ブラック部活、ブラック指導者の問題がクローズアップされるようになってきました。自治体や業界団体が是正のための取り組みに乗り出しているようですが、根本的な原因とメカニズムが理解出来ない限り、対処するのは難しいでしょう。


 また最近は、コーチングやらアンガーマネジメントなるものが注目を浴びているようです。

 実は内容を見たことがないので何とも言えませんが、そうした取り組みにも、自己愛性PDと分離不全の概念が役に立つかもしれません。

 また、DVやストーカーにも当てはまる概念ではないかと考えています。


 自己愛性PDの本質は、『悪』ではなく『弱さ』です。

 彼らは『迷子になった三歳児』、或いは『怯えて吠える犬』のようなものです。

 見た目は強面でハイテンションかもしれませんが、その心の内は、とても脆弱で不安と恐怖に満ちています。彼らに対峙した時に、冷静に、注意深く観察していれば、誰でもきっとそのことに気付くことが出来るでしょう。

 そして、コフートが提唱するように、『共感』によって彼らの不安感や恐怖感を和らげることが出来れば、自己愛性ブラック傾向を矯正することも不可能ではないかもしれません。

 

 取り敢えず、本書はここで終了しますが、自己愛性ブラックについてはエッセイの方で執筆を続けるつもりです。そちらの方もお楽しみ下さい。


 ブラック企業とブラック部活の被害者がいなくなる日が訪れることを祈りつつ、筆を置きたいと思います。

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