第3話 三人の殺人鬼

鳴上なるかみ アリス

かつて理由も無く迫害され自殺した後、

死後の世界にて命を器を満たし生き返った少女、

今は紫色を主とした魔女のような服装をしている、

最近は最果 ユウと服装がかぶり倒していることを気にしているとか。

彼女の武器は右手に握られたナイフを主軸にした体術、

殺すことに特化した騎士道もクソも無い技術だ。

"基本的には"大人しい。

今は十三の魔女の一人。


鳴上なるかみ リデル

産まれる事の出来なかったアリスの弟、

死後の世界でアリスと共に命の器を満たし、母親の腹を突き破って今の姿で産まれた。

自身の姿を持っていなかったため姿も声もアリスと全く同一、

"普段の"アリスと比べると非常に殺意が高いので危険。

今はアリスとセットで十三の魔女の一人。


フラウロス

世界の最初期から存在している悪魔、

クラウディウスやレーヴとは昔殺し合ったり同盟を組んだ仲、今は仲が良い。

無数の刀剣を使役する力を持っている、それ以外にも魔法の扱いに秀でており、戦闘能力は十三の魔女の中でも上位。


鳴上アリス、リデルは現代の世界の一つを滅ぼしに来ていた、

半分程度は殺し終わっており、今はその世界では日本と呼ばれている場所に来ていた。

「アッハハハハハハ!!!ねぇアリス、僕今すっごく生きてるって感じがするよ!!」

「そう。」

「た、助けて!殺さないで………」

「殺せば殺す程、また命が満たされるんだ、僕も、アリスも!」

「そうね。」

「だからもっと殺そう!もっともっと殺そう!!」

「もちろん、初めからその気で来たんだもの、

世界を滅ぼす為に全てを殺す、もう何度もやっているでしょう?」

「アハハ!それでも幸せなんだ!!なんどだってやりたいね!」

「そう、私は退屈だけど。」

「えー?命に満たされて幸せじゃないのー?」

「別に、もう復讐はとっくの昔に終わったし、ただの作業にしか思えないわ。」

「あぁそう、じゃあこいつは貰っちゃうねー。」

「どうぞ、好きにしていいわよ。」

「ひ、や、やめ」

「ばいばーい♪」

リデルは一切の躊躇いなく笑顔で喉元にナイフを突き立てた。

「んー、にしても本当に今日は気分が良いなぁ、どうしてだろ?」

「あら、あなたいつもそんな風じゃなかった?」

「んー、違う、なんていうかこう、不思議な高揚感!」

「ふーん、まぁその感覚は解らないでもないけれど、なんなのかしらね、コレ。」

リデルの言う高揚感は多分、アリスも感じている妙な落ち着かない感じとか、

思考がシンプルになる感覚、色んな無駄が削ぎ落とされて鋭利になる感覚、

きっとそんな感じ、普段は無い積極的な感覚、だと思う。

実際アリスも今日はやけに調子が良い、どこにナイフを振るえば致命傷を与えられるかが手に取るように解った。

殺せば殺す程次が欲しくなった、正直に言って逆らい難い殺人衝動がある、

アリスはそれに違和感を感じ、あえて積極的に殺さないようにし、

リデルに任せるようにしていた。

結果はリデルのこの感想、やはりこの世界に何かが干渉している。

うーんうーんと考えを巡らせていると唐突にリデルが叫ぶ。

「ねえ!ねえねえ!見てよアリス!見たことのない面白そうなのが居るよ!!」

はあ、今そんな事どうだっていいのに、と無視して考え続けるアリス、

「アリス危ない!!」

そんなアリスに向かって一本の剣が飛んでくる、

アリスはそれを咄嗟にしゃがんで躱す、

「ちょっと何!?」

楽しそうな顔をしたリデルが駆け寄ってくる。

「わっかんない!!でもすっごく強そう!!手伝ってよ!!」

「仕方ないなぁ。」

剣の飛んできた方を見ると高層ビルの屋上に何やら見慣れぬ黒い何かが立っている。

「なにあれ、あんなのこの世界に居たっけ。」

「ね?見たこと無いやつでしょ?クランテより強いかなぁ?」

「さぁね、でも………」

でも、おかしい、インターネットが発達しているようなこの時代で剣?

銃ではなく?

この世界に本来無い何かが起こっている、

もしかしたら世界の融合までに間に合わなかったのかもしれない。

それならば、いずれにせよ出た影響の尻拭いはするべきだ、アレと戦おう。

相手は高層ビルの屋上、とりあえずはビルの中に侵入し、階段を駆け上がる、

階段の周りはガラス張りになっており外の様子がよく見える、


こちらに向かって飛んでくる無数の刀剣もよく見える、逃げろ!


右から左から剣が飛んでくる、その殆どは両刃の長剣で一撃が重く、

何度もナイフで弾く事は難しい、仕方がないので躱しながら階段を駆け上がる。

絶え間なく横殴りの刃の風が吹く、階段のあちこちに当たり、そして歪む。


ガコンッ!


「リデルッ!」

階段が耐えきれずに崩れ落ちる、登る側は何とか残っているが降りる側が完全に破壊されてしまった、後から追ってきていたリデルが落下しそうになるところを何とか手をつかんで引っ張り上げる。

「ごめんアリス助かった!」

「しっかりしてよね。」

二人は残りの階段を一気に駆け上がる、ドアをけ破ってようやく黒い何かと対面する。

「………これはどういう事かな?」

姉弟の前に立つそれは見知った顔だった、

赤紫の三角帽子と前の開いたローブ、右手には先ほどから飛んできていた長剣と同じものが握られ、腰まで届く銀髪の奥から赤い瞳が虚ろな目でこちらを見ていた。

「フラウロスじゃん!どうしたのー?殺すぞ!」

「あはは、いやァちょっとね、しくじっちまってさ。」

「しくじった?あなたが?」

「ん、そう、影みたいなやつ、こっちで見なかったか?」

「いや、見てないけど、リデルも見てないよね?」

「うん、見てないよ。」

「おー、それは僥倖ぎょうこう、実はその影のせいで今体が言うこと聞かなくってさァ。」

「まァ単刀直入に言うとだな、私を殺してくれ。」

「ふぅん、いいけど、そっちの世界はカタがついてるんでしょうね?」

「あァ、ちゃんとケリは付けてある。」

「じゃあ殺すだけでいいのね、じゃあ死ね。」


アリスが一瞬で距離を詰め喉元にナイフを突き刺そうとするが、

フラウロスは右手の剣でそれを防ぐ。


「言っただろ?体が言う事を聞いてくれないってさ、だから本気で勝負してほしいんだわ。」

「まぁ頼んでくるぐらいなんだからそうよね、はぁ、やるわよリデル。」

「アハハ!任せてよ!滅多刺しにしてあげる!!」


リデルがフラウロスの背中にナイフを突き刺そうと背後に回り込む、

フラウロスはアリスを弾き飛ばし、リデルに向かって3本の剣を召還しけしかける、

リデルは左に飛んで一本目を躱す、

ナイフで弾いて二本目を躱す、

しかし三本目が躱しきれない、

切先が顔面に直撃する瞬間、

アリスとリデルは場所を入れ替え、

アリスが三本目を弾く。


「へぇ、そんなことできたのかお前ら。」

「まぁね、私達は二人で一つだもの。」

「理屈は解らんがどっちも斬れば同じだな。」


フラウロスは正面のアリスと背後のリデルの両方に向けて剣を放つ、

しかし狙いが甘いようで二人とも躱す事はあっさりできた。

アリスとリデルが同時に斬りかかる、

フラウロスは左手にもう一本の剣を握り、左手でアリスの、右手でリデルのナイフを弾く、

一瞬の隙をついてフラウロスが右の剣でアリスに斬りかかる、

右上から左下に抜ける振り下ろし、

アリスはさっと小柄な身を引いて躱す、

リデルがナイフで突きを繰り出す、

フラウロスは体を捻り刃を腹のギリギリで躱す、

そのまま左脚を軸にコマのように自身を回転させて周りを斬り裂く。

結局二人は再び距離を取らざるを得なくなった。


「はぁ、魔法も使えて剣も使えるってずるくない?」

「ほんとホント!これでも喰らえ!」


リデルがその場でナイフを振るう、するとその切先をなぞるように紅い残像が形を成す、

三日月のような形のそれはひとりでにフラウロスに向かって飛んで行く。

フラウロスは右手の剣をぶん投げて、対応しようとする………が、

その紅い光波は剣をいとも容易く切り裂きフラウロスに向かってくる。

当たる寸前に横に転がって避ける、帽子は犠牲になったが体は無事だった。

フラウロスは一度見ただけで確信した、

あの光波は、

一度当たれば、

確実に、

死ぬ。


アリスとリデルは容赦なく光波を放つ、

二人がナイフを振るう度にその全ての軌跡から光波が生まれ、飛んでいく。

光波に囲まれたフラウロスは全方向に莫大な量の剣を構え防御しようとするもあっさりと切り裂かれる。

姿が見える様になったころにはフラウロスだった肉片があたりに散らばっていた。


「さて、リデル。」

「うん、そうだねアリス。」

「いつの間にか世界が閉じられてしまったみたい。」

「ならやることは一つ!!」


アリスとリデルはおもむろに近づき、そして抱き合い、


お互いの心臓にナイフを突き刺した。

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世界を救う為に世界を滅ぼす人達の話 まほうつかい @ma42ky

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