禁断の知識の実を食べてしまい、楽園を追われたアダムとイブの物語。
無学なもので原典はほとんど知らないないのですが、知る限り話の筋そのものはほぼそのままだと思います。つまりある種の超訳というか、有名な逸話を小説として再解釈・再構成した作品として読みました。
宗教的なものを題材としながらも、書かれている主題そのものにはそういう色がなく、むしろ普遍的な人の有り様を描いているところが好きです。というか、まさにその〝書かれているもの〟が好き。主題というか。
アダムの抱える疑問あるいは不安のような思いと、それによって浮き立つイブという人間の人物像。そして、結局最後まで答えが得られないところ。と、こうして別の言葉に要約しようとしてしまうと、どうにもニュアンスが違ってしまってもどかしいのですけれど。
タイトルと章題が好きです。最後の締め方が綺麗で、染みるような余韻のあるお話でした。