見てるだけ

なな

見てるだけ

 「ねぇ、何で私がこんな目に合うのかな?」

 放課後の学校の屋上でそうやって震える声で問いかける彼女を見つめながら、僕は寄り添うように手を握り口を開いた。

 

 「大丈夫さ、アイツらだってその内すぐに飽きるよ」

 「何よ! 他人事みたいに、貴方には分からないわよ!! 私が何をされてるかなんて知らないくせに!!」

 検討外れの僕の言葉に彼女は狂ったように怒り手を払いのける。

 僕はその彼女の言葉に内心心を締め付けられる様な気持ちを覚えながら言葉を捻り出した。

 

 「知ってるさ・・・・だって————」

 言い終わるより先に僕のポケットからスマホが落ちる。

 画面が開いた状態のそれは当然彼女の目にも留まる。

 彼女の様子を見ると興奮し赤くなっていた頬が徐々に青ざめ瞳が驚愕の色に染まるのが分かった。

 

 「何よ、これ・・・・」

 彼女の声色は恐怖で塗りつぶされ、僕を見る目は酷くおびえている。

 「違うんだよ、これは・・・・」

 僕が一歩近づくとそれに拒絶するように彼女は一歩後ずさる。

 

 「全部・・・・全部あなただったのね!! 貴方のせいで私は・・・・」 

 そういって、僕から逃げる様にまた一歩後ろに下がり、フェンスに体を預けた瞬間――――。

 バキッ。

 「嘘・・・・?」

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 「あーぁ、また壊れちゃった」

 

 僕は既に人ならざるものとなった彼女の姿をひとしきり撮り終えるとスマホをしまい、屋上を後にしようと歩き始めた。

 

 「次はどの子で遊ぼうかなぁ♪」

 階段を降りながら、次の遊び相手に思いを寄せる。

 大丈夫。 僕は絶対に捕まらない。 僕はいつでも傍観者。

 

  僕はいつでも――――「見てるだけ」

 

 

 

 

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見てるだけ なな @SHICHI

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