第5話
「エッ???」
そんな素っ頓狂な声が宿の中を響かせた。
猿田彦との戦いで俺と鳳凰さんは宿の帰ってきていた。すでに周りの人がいないのは把握済み。そもそも宿に泊まる人が少ない安い宿なので寝息を立てている方々の耳には届かないだろう。
「……あの、すみません。まさかそんなに驚くとは思わなくて」
「ば、ばばばばばばばば……」
俺の前にいるのは熱があるのかと思いそうなほど真っ赤な顔をしている若い女性。小刻みに震えており、好きとうるほど美しい髪がブンブン揺れている。
「バカなの?主人はバカなのか?こんなど深夜で二人きりの時に『脱いで』なんて言われたら誰だって驚くに決まっているでしょう」
彼女の名前は鳳凰さん。一見見た目は若い女性なのだが、実は十二干支第10席というすごい人らしい。一人の時は双剣と弓を操る。
俺はそんな彼女の主人であり、彼女に見合う実力を持つべく彼女に教わるように頼んだところだった。
あ、紹介が遅れたな。俺は彼女の主人になった空葵と言います。大学の研究所で一つの物語を読んでいたらいつの間にかこの世界に来ていた転移者です。あ、そういえばあの左手の紋章は濃くなっていました。
「?そうですか?初めてのことだったので驚いてしまっただけなのですが」
「そうか初めてだったか。それはしょうがない。魅了されるのは当然だろう……そんな訳あるか。主人は私を性奴隷か何かと勘違いしておるのか?」
「あの……鳳凰さん。なにか勘違いをされているようで。」
「なんだ?」
「いきなり目の前で鎧から旅行人用の服に変わったら誰だって驚きますよ」
そうなのだ彼女は鎧から一瞬でただの服に変わったのだ。
というか鳳凰さんという言い方はなんか嫌だ。だが今はまだイタズラを仕掛ける。
「というか、鳳凰さん、まさかではありますが『イヤラシイ』こと穂考えてはいませんでしたか」
刹那僕の横の壁に矢が刺さっていた。
「主人ではあるが私よりも弱いくせに、何度もなんどもコケにして。」
どうやらやりすぎたようだ。顔を真っ赤にして頬を膨らましている。
すみませんでした……
話題を提示する
「ところで鳳凰さん」
「ん……名前。嫌」
あなたもでしたか。では名前を変えましょう。
彼女がコクコク頷く。
じゃあ「鳳ちゃん」 不満そうだ
では「凰ちゃん」 上と同じく
朱音……満更ではないようだ
では鳳凰さん改め、朱音 これからよろしく
十二戦記 @yatamikami
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