番外編 ハゲの呪い?
「優先輩、メグ先輩が違和感を感じ取れるズラハンターなのはわかりますけど、新入生勧誘に使えるんですか?というか、確か私もメグ先輩に声をかけてもらったかも。私が呪う力を持っていることも見抜いていたのかな。」
「少しだけ当たっているわね、芦谷さん。もう部活を決めている人や迷っていない人は声をかけても無駄でしょ。私もメグと初めて会ったとき、彼女、じーっと見てニタァって笑ってきたわよ。何か心に引っかかる人に声をかけただけよ。案外美人が好きなだけじゃないかしら。」
「美人が好きなだけ、それはあり得ますね。私も優先輩も比較的美人ですから。」
そこで納得する芦谷さん、かわいいわね。
「それよりも最近の練習の成果を見せてちょうだい。」
芦谷さんには他人から受けた被害を呪いにして返す力がある。
呪わないように我慢していると、一気に爆発してしまうことがあるので日頃から少しずつ小出しにして、ガス抜きをするようにアドバイスしている。
「最新の呪いは男の人にはハゲの呪い、女の人には二重あごの呪いです。」
得意そうな芦谷さんだけど……。
「は?何かしら、それ。」
「男女とも、できれば避けたいハゲと二重あご。これを呪うことによってすぐには結果は見えませんが、私としては、ものすごくスッキリするんです。人を傷つけるわけじゃないし。私のせいではなく、ハゲたり二重あごになったりするかもしれなくて罪悪感も全然ありません。ちょっとやってみますね。今朝電車の中で肘で押してきたおじさんにハゲの呪いを…。」
芦谷さんは一心に呪っている……。相手が遠いせいか、ハゲの呪いのためか嫌な気配はごく微量。
「芦谷さん、素晴らしいわ!少しは嫌な気配がするけど、こんなの誰だって気分を害したときのレベルよ。よくやったわね。」
「はい、私お掃除部に入って割と居心地よかったんですけど、この方法を優先輩から指導していただいてからはとっても気楽になったんです。ありがとうございます!」
多分彼女は自分の力に気づいていて、どうしていいかわからず周りと一線を画していたのだろう。過去の私のように。
「この調子でもう少しバリエーションを増やすといいわ。何がいいかしら、自分が好きではない異性に言い寄られて困る呪いとか、どうかしら?」
「私は困りますけど、モテるって喜ぶ奴だと意味がないですよ。優先輩、もっと意地悪なやつがいいですって。私に任せて、またいいのができたら見てくださいね。」
過去の私には誰も助けてくれる人がいなかった。
小学生の時、クラスの男子の意地悪に反撃して喰らった一言。
「なんだよ、《《お前んちで買い物しないように》》母さんに言うからな!」
この一言に私は凍り付いた。
うちは商店街にある八百屋。男子たちの母親が買いに来ないのはまだしも、変な噂がたったら店の売り上げが減ってしまう。
私の様子を見て、効果絶大だと感じた頭の悪い男子たちは頻繁にこの手を使ってきた。周りの女子も気の毒そうな顔をするが、巻き込まれるのが嫌で私には近寄らない。私は身をひそめるように、小学校生活を送るようになった。
嫌な気配に敏感になったのはこの頃から。嫌な気配を感じると素早くその場から逃げる、これが私にできる唯一のことだった。
この嫌がらせは一年近くであっけなく終わった。
うちの八百屋が商店街から駅近のスーパーに変わったから。家がケチケチしていたのはスーパーにしたくてお金をためていたからだったのだ!
経営がうまくいって、私は私立の中学に行かせてもらえることになった。
当時小学校六年になった私は、あと一年でオサラバする頭の悪い男子たちに、先生にバレない可能な限りの意地悪をし、奴らがしでかした悪事をすべて大人にチクった。私の完全勝利だと思っていた。
「神戸優さん、友達に相談するという選択肢もあることを忘れないで。」
卒業式の後、声をかけてくれた六年生の担任は気づいていたのかもしれない。
高校で知り合った友達はみんな親切で、楽しい毎日を送っている。
でも私は今でも小学校のときのバカな男子を許せていない。
あいつらも、ハゲればいいわ。
【ここから時系列はメグ高3でストップしてサザ〇さん方式で行きます。】
聖グレース女学校お掃除部! 清泉 四季 @ackjm
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