第4話 告白
「話ってなにかな?」
あれから何度かデートを重ねて、気付いたら半年が経っていた。
俺は女として、アキラさんは男として、本来の性別を逆にして付き合ってきた。
「あのさ、俺達、本当の性別で付き合えないのかな?」
初めは女の自分を受け入れてくれるからアキラさんに魅かれていた。
だけどその感情は少しずつ変わって、男でも女でもなく真澄を受け入れてくれるアキラさんを好きになっていた。
「それって私が女だから?」
男として振る舞い、それを崩さなかったアキラさんが『私』と言った。
「性別は関係ない。なんて言い切れないんだけど、俺は男として、アキラさんは女の子として付き合ってもうまくいくんじゃないかなって思ったんだ」
「……無理だよ」
少し
「マスミはさ、自分より背が高い女の子ってどう思う?」
いつもの『マスミちゃん』ではなく呼び捨てになっている。今目の前にいるのがデートを重ねてきた『マスミちゃん』ではないことに配慮してくれているのだろう。
そういう細かな気遣いがまたカッコイイ。
「気にしない」
俺はアキラさんの質問に即答した。
元からこの身長だと女の子と同じ目線だったり、背が高いことはよくある。そんなのは全然気にならない。
「私は嫌だな」
今まで男として振舞っていたアキラさんの一人称は『私』のままだ。
「私は、自分より小さい男は恋愛対象として見れない。私の方がカッコよく見られちゃうから」
「なら……!」
俺がアキラさんよりカッコよくなる! そう宣言したかったけど言葉が詰まってしまった。
アキラさんのカッコよさは身をもって知っているから。
「私よりカッコよくなるって? それはハードルが高いんじゃない?」
そしてアキラさんは俺の言いたいことなんてお見通しだ。
ますます差を付けられてしまった。
「俺は……アキラさんよりカッコよくなるのは…‥無理だと思う」
「うん。だからもう……」
素直に負けを認めた。努力はするつもりだけど、きっと勝てないだろう。でも、さよならなんて言わせない。
「俺がアキラさんの可愛いところをたくさん見つける。俺よりも、わたしよりも可愛い女の子にする!」
「なにそれ。それだって無理だと思うよ」
「無理じゃない!」
俺は知っている。アキラさんがゴシックフェアリーの店内を
男装してイケメンになるのがアキラさんの個性であるように、可愛い女の子に憧れるのもアキラさんの一部なんだ。
「ゴシックフェアリーで羨ましそうな顔をしてたよね? メイクもスキンケアも俺が教えてあげる。だからアキラさん、俺を
しばしの沈黙が訪れる。やばい。俺、変なこと言ったか?
「お……おとこにしてくれって、それはつまり……」
「ちちち、違います! いや、ゆくゆくは……って、そういう意味じゃなくてですね」
「あっはっは。やっぱりマスミは面白いね」
わたしの中に居る男をからかって楽しむアキラさんだ。
「そんな風に言われたの初めてだよ。私を男として見る女の子か、ボーイッシュな女の子として声を掛ける男。マスミはどちらでもないんだね」
「どれもアキラさんの一面だと思うしそれは尊重するけど、俺は可愛いアキラさんも見たい! 一緒に可愛くてカッコよくなろう! なってください!」
自分でも何を言ってるかよくわからない。だけどアキラさんとは男とか女とかそういうのを超えた一人の人間として付き合っていきたいとは思っている。
「なんだよもう。十分カッコいいじゃん」
俺をギュッと抱きしめるアキラさんの腕は細いけど温もりがあってすごく安心した。
その温もりをお返しするように俺もアキラさんを抱きしめる。
「アキラさんより背が低いし、イケメンじゃないし、力だってないけど、それでも俺をカッコいいと思ってくれる?」
「う~ん。どうしようかな」
「さっきカッコいいって言ってくれたのに」
「そうやって
男はカッコ良く、女は可愛くなんて誰が決めたんだろう。
できれば俺だってカッコ良くありたいけど、もし可愛い俺を好きになってくれる人がいるならそれでいい。
それに俺は可愛いアキラさんを見たいけど、カッコ良いアキラさんだって好きなんだから。
「私から一つ提案なんだけどさ」
「うん」
「今度は女同士とか男同士の恰好でデートしてみない?」
「それ楽しそう」
「僕らの特権だからね」
「わたし、絶対にアキラさんに負けないから」
「実は最近、少しだけ胸が成長したんだ」
「まさかそれは俺のために……」
「残念だけどウソ。そうやってすぐに男が出るようじゃ、私と並んだ時にバレちゃうよ?」
男の自分と女の自分。
どちらも本当だし、どちらも作り物。
そんな二人が出会って一つの愛が生まれた。
性別が逆だと付き合えない! くにすらのに @knsrnn
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