「ぼのぼの」の感想文 (かなり前)

 「ぼのぼの」は素晴らしい作品です。愛と友情、それに日常の愛おしさについてこれでもか!というレベルで語り、精神に異常をきたす恐れのある作品を今まで私はみたことがあるのでしょうか、いや自分でもわかりませんし思い出せません。とりあえず個人的には頭部が毎回変形・交換し、またその一部を慈愛に満ちた表情で凝視しながら他者に分け与えるという威風堂々とした人、みたいなやつが主役の、我等が愛して止まないのかもしれない「ア○パ○マ○」より好きです。

 のっぺりとした独特の喋り方や世界観。あなたの他者に対する慈しみと破壊衝動を根源から呼び覚ますことでしょう。私も彼らを見るたびに感情・思考・気性など、自分を構成する要素について深く考えない日はありません。自分を見つめ直すキッカケをこの作品は与えてくれるのです。例え自分の本性を知って落胆するようなことがあったとしても、画面の向こう側にいる彼らは優しく出迎えてくれるはずです、きっとそのはず。具体的に言えば、自分の住処っぽいような洞穴まで誘導、いえ案内してくれることでしょう。

 また上級者ともなればラッコ・アライグマ・シマリスの三人の声を聞くだけで異世界へと旅立つことができます。私が幻視したものをご紹介しましょう。ラッコはアライグマの元を訪ねた際、シマリスを捕食するシーンに出会います。口のまわりには血が付着し、手にはシマリスがいます。シマリスの頭部はなくピクリとも動きません、当然「イジメる?」なんてあざといことも言いません。アライグマはラッコに向かって「なぁシマリスが動かないんだ…一緒に遊んでいたはずなのに…急にどうしたまったんだよ…それになんだが口の中は甘い味が広がっているし、シマリスからはスゴく甘い香りが…」なんてことを幻視、もとい夢想します。これが巷で有名な二次創作というやつでしょうか。ワクワク、ドキドキしますね。

 

 登場人物たちの魅力についても語りきれるものではありません。やはり挙げるとしら主人公のラッコです。ラッコなのに表面に光沢があり、まるで皮膚を曝け出しているようなイラストとなっています。とても愛くるしいのですが、私は一瞬毛を毟られたのかと邪推をしてしまいました。やはりポップでキュートなものが良いですよね、現実的すぎるとむしろ脳が変になりそうですから。

 色々語ってきましたが何より一番大事なことは、やはり自我を保つことでしょうか。私もたまに見返してはいますが、「あれ、こんな話あった?….思い出せない」なんでことが多々あります。単に私の記憶力が弱いのか、それとも画面を見ずに悶えていたのかはっきりしません。でもそんな作品は他にあったでしょうか、ある気がします。

 もしあなたがこの作品に興味を持って視聴したなら、観ている内に自然と湧き上がる不思議な感情に気づくことになるでしょう。また脳から不思議な分泌物が放出され、溢れ出る想いを抱くことでしょう。ここまでくるともう後には引き返せないレベルでこの作品にドップリと浸かっていること間違いなし。知らないうちにこの作品に取り込まれているはずです。

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この「世界」に対する解答 甘蜘蛛 @HLofCAFL6741

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