第54話

 は?


 何で手紙が香奈読んで、そこに置かれてるんだよ。


 ちゃんと誰も分からないところに隠しておいたのに何で見つかってんだよ。


 あ!そういえば昨日香奈の告白を断るために、自分に言い聞かせるように読んでたんだ。


 やらかした。


 大事なものはしっかり片付けておくべきだろ。


 いや、昔から俺はそういうところあるんだよなぁ。


 俺にもかわいいとこあるんだぜ。


 そんなことはどうでもいいんだよ。


 早く香奈を追いかけないと。


 あいつ靴履かずに外出て行ってんじゃねぇか。


 靴履いてないし、加えて香奈はそこそこ足が遅いからまだ間に合う。


 外はこんなに寒いのにあいつ上着を着ずに行きやがったよ。


 何でこうなってしまうんだよ。


 何を間違えた?


 手紙を隠さなかったことか?


 告白をしたことか?


 香奈を色々助けたことか?


 どこで間違えた?


 修学旅行の時か?


 文化祭の時か?


 体育祭の時か?


 夏休みの時か?


 いじめから助けた時か?


 俺と佐々木が再会した時か?


 中学生の時か?


 初めて香奈と出会った時か?


 なんで間違えた?


 そうだよ、こんなものなんの間違いでも何でもない、起こるべくして起きてしまったんだ。


 いつかは起きていたんだよ。


 それが最悪のタイミングで起きてしまったってだけだったんだ。


 * * *


 あいつどこに行ったんだよ。


「か〜な〜」


 自分の中の出来るだけの大きな声で香奈に呼びかける。


 近所迷惑なんか関係あるか、香奈に会いたい。


「か〜な〜」


 すれ違う人達にも奇妙な目で見られたが無視だ。


 一人で探してても範囲が広すぎるから急いで電話で協力者を呼ぶ。


 携帯買っといて良かった。


 プルルッ


 頼む出てくれ。


「おい寺田、頼む香奈を探してくれ」


「どうしたの急に?しかも名前呼びじゃん」


「今はいいから。あと出来るだけ他の人にも協力を仰いでくれ。じゃあ切るぞ」


「え、ちょっ」


 友達が少ないことがここで後悔するとは。


 * * *


 なんでこんなに見つからないんだよ。


 プルルッ


 寺田から電話がきた。


「神崎くんの友達が香奈ちゃんを見つけたらしいから位置情報送っておくから」


「ありがとう」


 寺田から送られてきた位置情報を元に香奈のところへと急ぐ。


 神崎には後で礼を言っておかないと。


 * * *


 橋のところに香奈らしき人物がいる。

 

「おい、香奈なのか?」


「ごめん、浅野。私のせいで」


 香奈は欄干の上に立った。


「ちょっと待て」


 俺は急いで香奈のところへと急ぐ。


 俺史上最も早かったと思う。


 頼む間に合ってくれ。


 そして香奈は飛び降りた。


 


 

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