第52話

 俺は佐々木の告白に応えることができない。


 別に好き嫌いの話ではない。


 俺と佐々木には拭いきれない過去があるのだから。


「で、今日はどこに行くんだ?」


「え?」


「いや、だから今日はどこに行くんだ?」


「あ、え、ちょっ、え?」


「何でだよ、お前が誘ってきたからお前が場所考えてこいよ」


「だってだって、こういうのって浅野が考えてきてくれるものだと思ったから」


「なわけねぇだろ。お前どうするんだよ今日」


「どうしよっか」


「お前なぁ」


 最悪のスタートだよ。


 これって俺が考えておくべきだったのか?


 そんなこと考えてても仕方ない、さっさとどこに行くか決めないと。


 ていうかこの場所なんか懐かしい気がするな。


「なぁ」


「どうしたの?」


「水族館行くか?」


「水族館?ああ!あの」


「そうだ。あの水族館だ」


 俺と佐々木と寺田と森の4人で行ったことのある水族館に行こうと提案する。


「どうだ、行くか?」


「うん、いこ」


 水族館に行くことに決まった。


 懐かしいなぁ、佐々木とロケごっこして寺田に怒られたなぁ。


 あの時は今みたいな関係になるとは思ってなかっただろうな。


 12月24日に隣に歩いているとは思わなかっただろうな。


 水族館に着いた。


 あの時は夏に来たが、今は冬だからちょっとだけ雰囲気が変わった気がする。


 状況も違うから初めて来た感じがする。

 

「なぁ、ここでロケごっこして寺田に怒られたの覚えてるか?」


「忘れるわけないじゃん、あとここのスタッフにも怒られたからね」


「そう言えばそうだったな」


「でも楽しかったね」


「ああ楽しかったな」


 あの時はロケごっこをしていたから真剣に魚を見ていなかったが、今見るとめちゃくちゃ面白いな。


 なんでこんな楽しいのに俺らはロケごっこなんかしてたんだ。

 

 わー、サメいる。近くにおるとめちゃくちゃ怖い。


 クラゲだ。めちゃくちゃきれい。


「きれいだね」


「きれいだな」


 緊張しているのか分からないがお互いが話さない。


「最後に観覧車乗ろ」


「分かった」


 観覧車に乗ったがお互い無言の時間が続いた。


「あのさ」


 お互いが無言だったが佐々木が話し始めた。


「まだ17しか生きてないけど、この一年が一番楽しかった」


「うん」


「最初は私がいじめてたのに、私がいじめられたら浅野が助けてくれて、友達も出来た」


 佐々木の目が潤んだきている。


「夏休みも、体育祭も、文化祭も、修学旅行も」


 佐々木の目は赤くなり始めた。


「………っ、いまもっ…ずっど」


 佐々木の目から涙が溢れ始める。


「…で、すぅ、だから」


 とうとう告白なのだろう。


 しっかり断らないといけない。


「っ…あのね…………ぅ」


 佐々木の目から涙が止まらない。


 次に口を開いたら告白だからしっかりも断る準備をしておく。


「なぁ佐々木」


 なぜか次に口を開いたのは俺だった。


「多分、俺達同じ気持ちだと思う」


 俺は泣いてる佐々木の手を取る。


「好きだ。俺と付き合ってくれ」


「………っ!はい」




 おい。

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