第51話

 結局来てしまった。


 12月24日が。


 緊張しすぎて全然寝れなかった、本当に情けないと思っている。


 もう本当に一瞬、佐々木が誘ってきてから今が。


 何でこんなに時間が早く進んでいるように感じるのだろう。


 修学旅行の新幹線の時はバカほど時間が過ぎるのが遅かったくせに。


 何で今日を断らなかったのだろう、断ることなんかいくらでも出来たのに。


 断らなかったのか、断れなかったのか、自分の中で自問自答する。

 

 自問自答をいくらしても答えは出てこない。


 嘘だ、多分だけど自分の中での答えは決まっているがそれを受け入れることが出来ないのかもしれない。


 そんな自分が情けなくて仕方ない。


 今は9時で、佐々木との集合時間は11時からなのでまだ時間には余裕がある。


 女子ってめちゃくちゃ準備に時間がかかるらしいからな、大変だな。


 佐々木は今頃準備をしているのだろうか?


 あいつのことだから遅刻の可能性も低くはない。


 そしたら今日の全部の会計を奢らせてやる。


 全部一番高いのでって頼んでやる。

 

 そんなことしたらあいつ涙目になりながら俺にお金ないって言って割り勘になるんだろうな。


 こんなの簡単すぎる予想だったな。

 

 家にいても仕方ないから超ゆっくり集合場所に行くことにしよう。


 行く途中でなんとか気持ちを整えよう。


 * * *


 街に近くに行くにつれてカップルの数が増えている。


 そらそうだよな、今日はクリスマスイブなのだから。


 もっともカップルが浮かれる日とも言える。


 集合場所に近づいてきた。


 しまった、早く来すぎたからまだ集合時間には30分もある。


 どうしよう、そこら辺の店に入って時間でも潰そっかな。


 いや、30分くらい立って待つか。


 集合場所に着いてスマホを見て時間潰しをする。


 横にはモデルみたいな女性が立っていたからもし佐々木が場所に困ったらこの人を目印にしよう。

 

「あれ、浅野?早いね」


 急にモデルみたいな女性が俺の名前を呼んできた。


 何でこいつは俺の名前を知ってるんだ?


 俺のことを知ってる人なんて数が限られてるのに。


 でも、声は佐々木なんだよな。


 俺の知ってる佐々木はこんなにかわいいはずがないんだがな。


 一応確かめてみることにする。


「もしかして佐々木か?」


「?そうだよ」


 え?こいつってこんなかわいかったけ?


 こいつがちゃんとしてるところなんか見たことなかったから分からなかったけど、こいつってめちゃくちゃかわいいんだな。


「そうだよな、ごめん」


 かわいかったから気づかなかったとは死んでも言えない。


「うん、別にいいよ。今日は楽しもうね」


「ああ」


 自惚かもしれないが今日佐々木に告白されるかもしれない。


 だって12月24日だぜ?


 大好きって言われたんだぜ?


 どんなに鈍感でも分かることだ。


 でも、告白された時の応えはもうすでに決まっている。


 俺は佐々木の告白に応えることはできない。

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