第49話
「全員揃ったか?」
学年主任が声をかける。
修学旅行も最終日となり、もう帰るために新幹線に乗ろうとしている。
一瞬だったなぁ。佐々木が迷子になったり、佐々木にビンタされたり、佐々木と一緒に夜抜け出したりしたなぁ。ほとんど佐々木との思い出だな。
森も寺田もいたけど結局は佐々木とほとんど喋っていた気がするが、まぁ、寺田も森と話せて良かったのだろう。
「よーし、全員いるな?じゃあ移動するぞー」
そういえば行きの時はここで佐々木が迷子になって俺が探しに行く羽目になって、俺と佐々木が手を繋いでいたところを見られて死ぬほど恥ずかしかった。
うちらの高校の生徒たちは新幹線に乗るため移動を開始している。
一応、ほんの念のために佐々木の方を見てみる。あいつは一回やらかしているから、また同じことが起こらないように見張っておかないといけない。
心配しすぎ?いや、あいつは何回でもやる女だ。
佐々木の方を見てみるとなんか変なところを見ながらポケ〜としている。
またあいつは、何で前のことを反省してないんだよ。
「おい、もう移動してるぞ」
「わ、ほんとだ」
このバカ。
思わず頭を抱えてしまう。
「勘弁してくれよ」
「だってぇ」
「「だってぇ」じゃなくて、お前は行きの時のこと覚えてるのか」
「ん?なんかあったけ?」
「お前なぁ」
「それより修学旅行楽しかったね」
はぁ〜
満面の笑顔で言うなよ。怒る気が失せた。
「まぁな」
「また来れるといいね」
「そんなことはいいから早く行かないと置いていかれるぞ」
ほら、こんな会話してたからもう集団から遅れをとっていた。
ここで遅れて新幹線に乗れなかったら笑えないぞ。
「待って」
佐々木が小走りで俺についてくる。
ふぅ〜
無事に新幹線にのることが出来たぞ。
だが、なんで隣がまた佐々木なんだよ、もういいって、あいつの特徴としてはいつもと違う環境になるとテンションが上がってしまうのだ。
だから新幹線も普段乗らないからテンションが高いのだ。
これだったら俺が寝れない。だけど窓側の席は譲ってもらった。
佐々木は今トイレに行ってるからもう今のうちに寝てしまっておこう。
もう何話しかけられても反応しないようにしよう。少しでも反応してしまうと起きてるのがバレてしまうからな。
これで一番きついのは無視してる気持ちになってしまうことだ。だけど今回は寝てやる。
あ、来た。
薄く目を開けて佐々木が席に戻ってきたのを確認する。
「ねぇ浅野」
反応するな。
「ねぇ浅野」
反応するな。無視無視。
「ねぇねぇ浅野」
段々心が痛くなってきたが、俺もここは心を鬼にして無視を貫く。
「完全に寝てる」
よしよし、あいつは俺が完全に寝てると思ってるぞ。
「ねぇ浅野。今日もだけどいつもありがとう」
ん?
どうした?何で急に俺に感謝を言ってるんだ?
「最初の出会いこそ最悪だったけど、いじめから救ってくれて」
ああ、あったなぁそんなことも。
「友達作りも手伝ってくれて」
良くもあそこから今の佐々木と寺田の関係になれたなぁ。
「一番楽しい夏休みも過ごせたし」
ボーリングに水族館に夏祭りにも行ったっけ。
「一番頑張った体育祭も送れたし」
あの時は佐々木がリレーのメンバーに選ばれて特訓したよなぁ。
「一番記憶に残った文化祭も送れたし」
いや、あれは俺も一番記憶に残ってるんだよなぁ。
「今回の修学旅行も今までにないほど楽しかったし」
そうか、それは良かったよ。まぁ俺も楽しかったかな。
「それもこれも浅野のおかげだよ。いつもありがとう。大好き」
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
今こいつなんて言った?大好き?いや、聞き間違い?どっち?多分だけど聞き間違いは無いと思ってる。だってそれまでの言葉はちゃんと聞き取れてたし。
じゃあこいつが佐々木じゃない可能性は?いや、それも無い。さっき薄く目を開けて確認したし。
て言うことは佐々木が俺を?いやいや、佐々木が俺を好きになるはすがない。
とりあえず落ち着け、今起きてるのがバレるのと厄介なことが起こる。
自惚れてる可能性は?それはちょっとあるけど、寝てる時に言う?普通。
おいおい、今後どうやってあいつに接すればいいんだよ。
今あいつどんな顔してるんだ?
薄く目を開けて確認する。
スースー
寝てる。
やっぱり俺が自惚れてるのか?
でも、その前にめちゃくちゃ感謝してたし、大好きまでの助走にしては十分だ。
考えれば考えるほど頭がおかしくなりそうだ。
おいおい、どうしてくれるんだよ、寝れなくなったじゃねぇか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます