第46話

 イッテェ


 あいつ思いっきりビンタしやがったよ。


 それで結局何もしないまま終わったし。


 まぁ修学旅行はまだ始まったばっかりだし切り替えて温泉にでも入ろう。


 俺は温泉に入る時も自分の家のお風呂に入る時も絶対に体を先に洗ってから入るんだけど、実は先に温泉に入った方が良いらしい。


 温泉は余分な角質や毛穴の汚れを落としやすい成分があるらしい。


 そんな温泉に都合の良い成分があるの?って思っちゃうよね。


 そんなこと聞いたら洗わずに温泉に入りたいけど他の人が体を洗わずに入ってたら嫌だからなぁ。


 やっぱり体は綺麗にしてから入りたい。


 小さい頃、初めて温泉に入った時は火傷したんじゃないかってくらい熱くて中々入れなかった思い出があったなぁ。


 まぁそんなことは置いておいて、さっさと体を洗って温泉に入ることにする。


 


 ふぅ〜


 


 いやー、全ての疲れが吹っ飛びますわ。


 何だよ、俺は今にも溶けてしまいそうだ。


 もう何にも考えたくない。


 今はただただ温泉の温度を肌で感じていたい。


 これが無の境地ってやつなのか。


 今思えばこの六ヶ月めちゃくちゃ濃かったなぁ。


 佐々木と色々あって、夏休みで佐々木と寺田が仲良くなって、体育祭でなんとか佐々木を走れるようにして、文化祭で黒歴史を残した。


 いやぁ、本当に色々あったなぁ。





 気持ちよかったぁ。


 脱衣所にある扇風機で汗が引くまで待って着替え始める。


 温泉の後は100%と言っても過言でもない、牛乳タイムだ。


 牛乳、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳、のこの三つが主流だろう。


 一番人気はやっぱりコーヒー牛乳で、牛乳、フルーツ牛乳の順番だと思う。


 俺はフルーツ牛乳派なのだ。


 なんだろう、あの美味さを表現するのは少し難しい。


 俺の中ではミックスジュースの一個上だと思っている。


 うわ、ここ自動販売機のタイプじゃねぇか、ビンだから割れるか心配なんだよ。


 

 ガゴン


 

 危ねぇ、音がすごかったよ。

 

 フルーツ牛乳を手に取り休憩所みたいなところへ向かう。


 休憩所に行くと椅子に佐々木が座っていた。


 寺田でも待っているのか?


 俺は自動販売機に戻る。



 ガゴン



 よかったぁ、割れなかったぁ。


 まぁここは無難にコーヒー牛乳にしておいた。


 コーヒー牛乳を手に取りもう一度休憩所に戻る。


「おい」


「ん?」


「どっちが良い?」


 俺は佐々木の前にコーヒー牛乳とフルーツ牛乳を出す。


「じゃあフルーツ牛乳で」


 何で俺と佐々木はこんなに気が合うんだよ。


 俺はフルーツ牛乳を佐々木に差し出す。


「ほい」


「ありがとう」


 俺は余った方のコーヒー牛乳を飲む。


「まだ怒ってるのか?」


「別に怒ってない」


 絶対にあの時怒ってただろ、お前。


「どうする?今夜抜け出すか?」


 俺は屋台に行きたいのだが、一人だどつまらないので佐々木を誘う。


「当たり前じゃん」


「よし、じゃあ点呼終わったらお前を迎えに行くから」


「うん」


 返事を聞き、部屋へ帰るため俺は余ってるコーヒー牛乳を一気に飲み干して、ビンをゴミ箱に捨てる。


 




 フルーツ牛乳飲みたかった。

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