第44話
佐々木を連れ戻すことに成功してギリギリバスに乗りこむことにできた。
そこまではよかったのだが
「ねぇ見てよ、浅野あれ!」
何でまたこいつが隣なんだよ。
何で佐々木が窓側なんだよ。
「うっせぇな、寝させてくれよ」
「ねぇねぇ」
もう本当にやだ。
佐々木は俺を寝させないようにと体を揺さぶってくる。
「服伸びる、服伸びる」
たーすーけーてー
ただでさえバスの中で、揺れているのにお前も揺らしたら気持ち悪くなるだろ。
「おい、寺田。席変わってくれよ。お前も女子同士の方が良いだろ?」
前の席に座っている寺田に席の交換をお願いする。
「…………」
「おい、無視すんな」
スーッ
こいつ何か知らんけど席倒してきやがった。
別に良いけどちゃんと席倒すときは倒すって言えよな、後ろが俺でよかったな。
いや、もしかしたら俺の言葉に返事が出来ないくらい体調が悪くて席を倒した可能性もある。
「おい、大丈夫か?」
「何が?」
「いや、何が?じゃなくて、体調良くないんだろ?」
「何で?全然悪くないけど」
は?
「じゃあ何でさっき無視したんだよ」
「巻き込まれたくなかったし」
「じゃあ何で席倒したんだよ」
「寝よっかなぁって思って」
こいつ、絶対しばく。
「てめぇ」
俺は前の席に座っている寺田の頭を両手で持ち、髪を思いっきりワシャワシャして、寺田の髪を乱した。
「ちょっと〜めっちゃ髪乱れたじゃん」
知らん、心配して損した。
「髪を整えるのに40分もかかったのに〜」
よ、よ、40分?
すげ〜、女子。
男なんか寝癖がついてたら髪を整えるだけなのに。
それはちょっとだけ申し訳ないことしたなぁ。
「お前の髪めっちゃくちゃ綺麗だったぞ」
言ってから気づいたけど俺今めっちゃキモいこと言ったなぁ。
「うれしいけど、言ってることキモいよ」
「はい」
いや、本当に気を付けないとな、言った相手が寺田でよかったけど、違う人だったらセクハラで訴えられてるかもしれない。
にしてもすごいな女子って、髪をそんなに時間かけてセットするんだ、朝何時に起きてるんだ?
ふ〜
そう言えば何の話をしてたんだったけ?
あ!思い出した。
佐々木がウザいから席を変えてもらうおうとしたんだ。
そう言えばさっきから佐々木が静かだなぁ。
どうしたんだ?
「お〜い、佐々木」
「………」
「佐々木?」
「…………」
はぁ〜
「怒ってんのか?」
「べっつにー」
怒ってんなぁ。
「さっき無視したの悪かったて」
「別に気にしてませんけど。私なんか放っておいて穂花ちゃんと楽しく話しておけば?」
めんどせぇ
「悪かったって、どれ見ればいいんだ?あれか?」
俺は身を乗り出して窓の外の景色を見る。
「もう教えませーん。というかもうとっくに見せたかったところは過ぎてまーす」
「悪かったって、機嫌直してくれよ」
「ふんっ」
「もうしないから」
「も〜仕方ないなぁ」
「ありがとう。佐々木」
「浅野は本当に面倒くさい性格してるよね」
こいつ俺が下手に出てりゃ好き勝手いいやがって。
「浅野はそんなに私と喋りたかっんだ?」
あぶな、手出しそうになった。
「かわいいとこあるねぇ」
落ち着け、落ち着け。
「で、どんな話する?私が生まれてから今までの話を二時間ぐらい話すけど良い?」
「ええよ」
どういう話のチョイスだよ。
寝たかったのに。
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