第43話

 ようやく着いた。


 長かったー。


 あいつ何か知らんけどずっと元気だったしなぁ。


 永遠に質問責めしてきやがったから全然寝ることが出来なかった。


 「浅野って何型?」「好きな食べ物は?」「好きな女性のタイプは?」「犬派?猫派?」「都会が好き?田舎が好き?」「マンション?一軒家?」


 あいつ本当に興味あってその質問したのか?


 本当にあいつの考えていることは分からん。


「じゃあ今からバスのところまで移動するぞ」


 担任の先生を先頭にみんながついて行く。


「なぁ、浅野」


 そう言って俺に話しかけてきたのは森だった。


「ん?どうした?」


「本当の本当に佐々木と付き合ってないのか?」


「ああ」


「なんで?」


「なんでってなんだよ」


「いや、あれで付き合ってないのはさすがに嘘だろ」


「なんだよそれ、何度も言うけど俺と佐々木は付き合ってねぇぞ」


「ねぇ何の話してるの?」


 俺と森の会話に神崎が入ってきた。


「いや、浅野と佐々木が付き合ってないって話」


「え、嘘でしょ。あれでまだ付き合ってないの」


 なんだよこいつも。


「なんで?」


「だからなんでってなんだよ」


「あれで付き合ってないのはさすがに嘘でしょ」


「お前もか」


「で、なんで付き合ってないの?」


「なんでってお互いが好きじゃないからだろ」


「それ本気?」


「当たり前だろ」


「「はぁ」」


 二人同時にため息するなよ。


「じゃあ仮に佐々木が浅野のこと好きって言ったら付き合うのか?」


「は?そんなん………知らん」


 正直佐々木のこと嫌いって言う自分がいなくなっていることに驚いている。


「そんなことより森って佐々木のこと好きじゃなかったけ」


 とりあえず話題を変えることにした。


「そらぁあんなの見せられたらみんな諦めるよなぁ?」


「うん」


 なんだよ。森と神崎が何か意思疎通している。


「あんなのってなんだよ」


「「この世で最も美しいものを消して見せましょう」」


 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


「おいやめろ、黒歴史なんだよ」


「なんで?かっこよかったのに」


「なぁ」


「おい、おちょくんな」


 マジで記憶の中から消し去りたい。


「浅野〜」


 俺の名前呼ぶ声が聞こえてきた方を見ると寺田がこちらに走って向かってきた。


「どうした?そんな走ってきて」


「香奈ちゃんがどっか行っちゃった」


「電話は?」


「出ない」


「あ〜はいはい、すぐ連れ戻してくるから」


 俺は佐々木を探すべく集団から離れた。


「本当に付き合ってないの?」


 何か神崎の声が聞こえたが無視して佐々木を探しに出た。


 あいつ本当に何で何もできないくせに勝手な行動するんだよ。


 どうせ最初のうちは色々歩き回ってたらみんなに出会えるだろうと思っているだろう。


 そして今ごろになって焦り始めてるんだろうなぁ。


 何故かは知らないけどあいつは東方向に進む傾向があるんだよ。


 あいつも無意識らしい。


 お、いたいた。


「おい」


「あさの〜」


「泣きそうになるなよ」


「見つけてくれてありがとう」


「そういうのいいから早く戻るぞ」


 俺は佐々木の手首を掴んで引っ張って歩いた。


「もう一生離れんな」


「うん、もう一生離れない」


 何で嬉しそうなんだよ。

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