第35話
今日はティッシュ配りをする。
今日一日だけのバイトだ。
私の中でこれが人前に出て、緊張を治せれると思っている。
でもさぁこれって本当に大丈夫?私ってそこらにいる女子よりは相当可愛いよ?一瞬でティッシュがなくなったらどうしよう。
小さい頃ってポケットティッシュなんかいるかって思ってたけど、結構何かに使うから今は重要な物に感じるんだよなぁ。
今はなんだっけ?ポケットからキャンです。が流行ってるんだっけ?キュンなんかポケットに入れる余裕があるならポケットティッシュ入れといた方が65倍良いだろう。
さぁてポケットティッシュを渡しまくろうかな。
「あ、あの〜」
全然声が出ん。
さっきまではいけるかなぁって思ってたけど全然声がこの世に出ん。
なんかすっごい頭が痛い。目眩もすごいし。人がいっぱいいてみんなが私を見てる。
みんなが私をバカにした目で見ているように見えて仕方ない。
どれだけ自分に自信があっても無理なものは無理なのだ。
助けて〜。もう無理。全然いける気がしないんですけど。
はぁ〜。そうやって諦めてまた浅野に頼ってしまうのか?いや、今回はなんとしてでも私の力で乗り切ってやる。
話変わるけどなんかちょっと浅野ってかっこよくない?改めて思ったけどなんだかんだ優しいし、ずっと私のために動いてくれてたし、かっこいいし、なんなのアイツ。
よし、切り替えて頑張るぞ。
「あ、あの〜、ティッシュいりますか?」
聞いたけど手だけでいらないとやられた。
やめてよ、断られたら結構心にくるんだから。
結局午前は一個もテッシュを渡すことはできなかった。
結果は出せなかったけど休憩をしようとしていたら
「全然減ってないじゃん。分かってる?あなたはお金をもらってやってるってことを」
責任者みたいな人に少し怒られたしまった。
仕方ないけどそんなこと言われたらプレッシャーで押し潰されそうになるじゃん。
「ごめんなさい。午後からは必ず減らしますので」
しっかり頭を下げて謝った。
昼ごはんを食べたけど味が全然しなかった。
大丈夫、午後から頑張れば大丈夫だから。
「あ、あの〜」
「………」
「あ、あの〜」
「………」
「あ、あの〜」
「………」
声が届かない。
緊張とプレッシャーで押しつぶされそうになって声が全然出ない。
あと自分の情けなさで悲しくなる。
もう無理なのかなぁ、私。
「ねぇそこのあなた」
諦めかけた時に多分だけど主婦の方に声をかけられた。
「はい」
「ティッシュってもらえる?」
「はい、もちろんです」
やった、初めてのティッシュ配りなんですけど、うれぴ。
「あなたかわいいんだからもっと自信持って」
そう言って主婦の方は私の手を握ってくれた。
「はい、ありがとうございます」
うれしいなぁ、こうやって励ましてくれるの。
なんだかいっぱい元気もらっちゃったなぁ。
でもなんで自信持ってって言ったのかな?自信持ってないの分かったのかな?そんなことある?
ま、いっか。今からさらにがんばるか。
しかし、それ以降ティッシュを配ることはできなかった。
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