第34話
わーすごくかわいい、誰?この美少女?
はーい。私でーす。
ファミレスのアルバイトに無事に受かって今私は制服を着て鏡の前に立っている。
私って本当に何着てもかわいいんだから。
鏡の前でくるるって回ったり、全力でぶりっ子のポーズをとったりした。
ガチャ
扉が開く音がした。
「何やってんの?もう行くよ」
穂花ちゃんが私を呼びに来てくれた。
もうそんな時間なのか。自分の成長とはいえお金をもらって働くのだ、しっかりしなくてはいけない。
私は一回深呼吸をして部屋を出た。
仕事内容は簡単に説明すると、お客様の席の案内、注文の確認、料理を運ぶ、お皿を下げる、レジ打ち、大体はこれだ。
ラッシュ時はしんどいけど暇な時は本当に暇なので穂花ちゃんとお喋りしている。
「なぁそこの店員」
私が食べ終わったお皿を持って行く途中に客から声をかけられた。
「はい」
私は呼ばれた客の方へ行く。
「おい見ろよこれ」
客は私にしょうが焼きを見せつけた。
「めちゃくちゃ焦げてるじゃねぇか。こんなものを俺に食わそうとしてるのか」
は?全然焦げてねぇじゃん。良く見ても分からないのにコイツいちゃもんつけやがって。
「大変失礼しました。今新しいのに変えてきます」
そう言ってしょうが焼きのお皿を持って行った。
私に言ってもしょうがないじゃん。しょうが焼きだけにね。
鉄板のダジャレをブチかまし少し心に余裕ができた。
「ごめんなさい。このしょうが焼きのお肉が焦げていたらしいので新しいのに変えてください」
少し申し訳ないけどキッチンの人に新しいのに変えてもらえないかお願いした。
「は?全然焦げてねぇじゃん。もう一回出してこい」
「そうなんですけどお客様が新しいのを出せって言うので」
「ちっ、分かったよ」
キッチンの人は舌打ちをして新しいしょうが焼きを作り始めた。
「ほい」
「ありがとうございます」
新しく作ってもらったしょうが焼きを受け取りクレームを言った客のところへと戻る。
「大変お待たせしました」
私はクレームを言った客の机に新しく作ってもらったしょうが焼きを置いた。
「次からはしっかりしろよ」
めちゃくちゃムカつくなコイツ。さっさと食って帰れ。
クレームの客が飯を食い終わってレジでお会計をしようとした。
「お会計は670円になります」
「は?何で金を出さなきゃいけねぇんだ。あんなに待たされたのに」
「でもお食べになられたのでお金を払っていただかないと」
「いや、一回目焦げたやつ渡されたんだけどな」
「それでも二回目のやつをお食べになられたのでお会計を払ってもらわないといけないんです」
「分かったよ」
そう言って客は財布から小銭を取り出して思いっきり床に叩きつけた。
「これでいいんだろ」
おいおいふざけんなよ、普通に出せよ。
散らばった小銭を渋々拾いながら店から出て行く客をありがとうございましたって言った。
二度と来るなよ。バーカ。
もう何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ。
いや、私だからこんな目に遭ったのか。
頑張れ私、へこたれるな。
さっきのことは忘れて次の仕事を頑張ることにした。
しばらくしてほぼ同時に二人の客が入ってきて、前後にいたので一回だけいらっしゃいませ、と言った。
「おい」
そしたら後ろにいた客が私を呼んだ。
「はい、なんでしょうか」
「お前俺にちゃんとあいさつしたか?」
「はい、しました」
「いや、お前は前に客にしかやってなかった。お前さぁ俺のこと舐めてるだろ」
「いえ、舐めてません」
「いや、お前は舐めてる。お前は店員で俺はお客様だぞ。お客様は神様なんだぞ、それを分かってんのか?」
「はい、分かっています」
「じゃあ俺にいらっしゃいませって言え」
私は渋々頭を下げていらっしゃいませ、と言った。
「勘違いするなよ、俺はお前のためを思って言ってるんだぞ」
「はい、ありがとうございます。勉強になりました」
「もう二度とするなよ」
そう言って客は席へ向かっていった。
なんかもう私無理かも。
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