第32話

 無事に私ら五人だけの打ち上げが終わり、神崎くん以外は風邪をひいた。


 当たり前だ、何が手押し相撲ウォーターステージだ。まぁ楽しかったから良かったけど。


 火曜日の朝、学校に行く気が無くめざましのアラームをかけずにいたので、朝10時に目を覚ました。


 意外にも風邪が治っていた。そこまで頭は良くないのに欠席を増やすのはまずいので、今日は学校に行くことに決めた。

 

 学校に着いて教室に入るとまだ穂花ちゃんも森くんも浅野も来ていなかった。まだ風邪が治っていなかったのか。日曜日から火曜日なので相当厄介な風邪をひいてしまったのか。


 私はみんなより一足早く学校に来ていたらしい。


 もちろん私が学校に来たところで誰も歓迎しているわけではない。


 今思えば学校で一人でいるのは久しぶりだ。


 昼休憩になり、どこでお弁当を食べるかを考えていた。私が教室で一人でお弁当を食べてたら周りがヒソヒソ話をするのでどこか一人になれる場所を探すことにした。


「佐々木。ちょっとこっち来てくれ」

 

 お弁当を食べる場所をどこにしようか考えていたら担任の先生が廊下に呼び出した。


 私はお弁当をカバンに入れ、お腹を空かせながら先生のところへ向かった。


「なんですか?」


「来週の土曜日に文化祭があるのは知ってるのな?」


 先週の土曜日に体育祭があり、その二週間後には文化祭があるのだ。本当は三週間後だったけど台風のせいで二週間後になったのだ。


「はい。知ってますけど」


 転校生だからあまり何やるかは知らないけど来週の土曜日にあることは知っている。


「その文化祭のミスコンにクラス代表として佐々木が出ることになったから」


 は?


「ミスコンってなんですか?」


「ああ、この学校は文化祭の最後にクラス代表でミスコンが行われるんだ」


「それは分かりましたけど何で私が選ばれたんですか」


「昨日のホームルームで決まったからだ。誰もやりたい奴がいなくて困ってたらお前の名前が挙がったんだ」


 やりたくないことを私に押しつけやがったなあの女ども。


「でも私やりたくないです」


「だがメールで佐々木からやっても良い、ってきたって言ってたぞ」


 は?………やられた


「私そんなメールきてないです」


「そうなのか?でも決定してしまったからもう変えられないんだ」


「ちょっと待ってください、私出ませんよ」


「そんなこと言われても決定してしまったから」


「なんとかならないんですか」


「残念ながらもう決まってしまったからな。頑張って出てくれ」


 そう言って先生は私の肩にポンっと手を置いてどこかへ行った。


 私は自分の可愛さには自信がある。なのになぜ出るのが嫌かというと、私は大の緊張しいだからだ。


 もし全校の前に出たら吐くかもしれない。それほど緊張しいなのだ。緊張のせいで体育祭の時も色々あったしな。


「いいよ、やってやるよ」


 私は怒っていた。そのせいで出ないようにすることを考えないで、緊張しいを克服してミスコンでグランプリをとって見返すことを考えてしまっていた。


 その冷静じゃない判断のせいで良くない未来が訪れるとは知らずに。

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