第31話
体育祭が終わり私たちは河川敷に来ていた。体育祭の祝勝会みたいなことをやろうとしていた。
私たちということはもちろん私だけではない。他に穂花ちゃん、森くん、違う組の神崎くん、そして浅野だ。
本当はこういうのはバーベキューとかどっかのお店の中でやるのだが、今日はコンビニで各自で食べ物を購入して集まっている。
私はペペロンチーノにした。本当は唐揚げ弁当にカップラーメン、ホットスナック一品を買うところだが、みんながいるから遠慮してしまった。
「まぁ、今日は俺のおかげで紅組が優勝することができました。みんなも俺みたいにここぞって時に決めれる人になりましょう。では、かんぱ〜い」
浅野が乾杯の音頭をとって森くんと神崎くんにブーイングを浴びせられていた。
「あれはおまえが優勝決めた感じになってるけど、そもそもおまえが普通にゴールしとけばあんなギリギリの戦いにならなかったんだよ」
森くんが浅野に文句をつける。
「そーだそーだ」
森くんに乗っかる神崎くん。
「おまえらなぁ、よく聞けよ。称賛されるのはな、一回から九回まで投げ抜いたピッチャーでも、完璧な守備をした野手でも、必死な思いで出たランナーでも無くて、最後にサヨナラホームランを打った奴なんだよ」
そんだよねぇ、結局は最後に決めた人が称賛されるんだよねぇ。
でもロシアw杯のセネガル戦で窮地に立たさせていたけど、ケイスケホンダが決めた時は感動した。最後に決めるのはめちゃくちゃ難しいことだから人々に感動を与えられるし、称賛をもらえる。当たり前のことなんだよなぁ。
浅野の言ってることは正しいけど言い方がなんか腹立つ。
「浅野の言いたいことは分かった。でも、言い方と顔が腹立つ」
「俺の顔は元からこれだよ。じゃあ分かった。そこまで言うならそこの川の中で手押し相撲で結着つけようぜ」
「倒れたら全身びしょ濡れってわけだな」
「ああ、そうだ。ウォーターステージってやつだ」
そう言って浅野と森くんは裸足になり、川の中へ入っていった。
「じゃあ、審判やる」
神崎くんも浅野と森くんのところへ行った。
「本当、男子ってバカだよね」
穂花ちゃんが私に話しかけてきた。
「うん」
何で急に勝負することになってんの?本当に意味分からない。
せっかく浅野カッコよかったのに。保健室の時も体育祭の時も私は浅野がヒーローに見えた。困った時に手を差し出していつも助けてくれる。本当にカッコいい。
「で、浅野のことどう思ってるの?」
穂花ちゃんが急に質問してきた。ちょうど浅野のことを考えていたからテンパってしまった。
「え?え?あ、浅野がどうしたの?」
「好きなの?嫌いなの?」
そんなのわからない。カッコいいとは思う。でも、カッコいいと好きは多分別ものだけど、好きか嫌いかで聞かれたら。
「ほんの少しだけ、ほんの少しよ、好きか嫌いかだけで言うと、少しだけ好きかもしれない」
「うん、そっか」
穂花ちゃんは笑顔で私を見ている。
恥ずかしい。何でこんなこと言っちゃったんだろう。顔も体も熱い。
「おーい、今からトーナメント戦するからおまえらも来いよ」
浅野が手押し相撲ウォーターステージに誘ってきた。顔も体も熱いからちょうど良い。
「いま行く」
抽選の結果、一回戦は私と浅野が戦うこととなった。
私は裸足になり、川の中に入る。そして浅野と向き合う。何か緊張してきた。さっきあんな話したから変に意識してしまう。
手が当たるたびに心臓の鼓動が速くなるのが分かる。浅野は楽しそうにしてるけど私はそんな場合ではない。
一瞬だけ油断をしてしまい体が後ろに倒れそうになった。
「あぶね」
浅野が私の手を引いた。しかし引く力が強かったため私は浅野に体を預ける形になった。
「大丈夫か?」
やばい、頭が溶けそう。ずっとこのままでいたい。とても心地いい。
が、急に恥ずかしくなってしまい、浅野を押してしまい川に尻から入ってしまった。
「ごめん、大丈夫?」
「おい、今の反則だろ。なぁ、審判」
「うん、反則負けで浅野が決勝進出」
「よっしゃー」
川に入って濡れたことは怒らずに反則したことに怒っていた。
でも緊張したなぁ。
この手押し相撲ウォーターステージは夜遅くなるまで続き、私以外風邪をひいた。
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