第23話

 いつのまにかいなくなっていた香奈ちゃんと浅野はフードコートで食レポをしていた。


「おい、手が震えてるぞ、これじゃ綺麗なインサートが撮れねぇぞ」


「うるさいわねぇ、こういうのは編集でどうにかなるのよ」


「じゃあ編集でなんとかしとくから次は食レポやってみようか」


 そう言われると香奈ちゃんは箸でラーメンをすくって食べた。


「美味しいです。麺にコシがあってスープとよく合います」

 

 次は野菜を食べた。


「野菜がシャキシャキしていて噛むたびに美味しいです」


 次は焼豚を食べた。


「柔らかーい、こんなに分厚いのに柔らかくてとても食べやすいです」


 最後にスープを一口飲み。


「コクがありますね、そして胡椒が入っていてスパイシーでした。ここの塩ラーメンは非常に美味しいのでみんなも一回は来てみてはいかがでしょうか」


 感想を言い終わって最後は宣伝を入れた。


 いや、なかなか良かったじゃなかったかなぁ。


「まぁ、感想はそこそこ良かったと思う」


「でしょ」


「だがラーメンをフーフーして冷まさないとラーメンの熱さが伝わってこないし、ラーメンの一口目はスープ派のやつはかなり過激派だ、麺派は穏やかだ、だからまずスープから飲んだ方が良いな」


 うわー、確かにラーメンの一口目はスープじゃないと怒る店あるよねぇ。


「んー、そっか、私もまだまだね」


 そんなに落ち込むことでもないよ、香奈ちゃん。


「まぁこれから成長していけばいいんじゃねぇか」


「そうね、私頑張るわ」


 なんでそんなにしょーもないことで本気になれるのかな?


「よし、次は一般人のインタビューでこの水族館の良いところを聞きだすぞ」


「うん!」


 またバカなことが始まった。なんで水族館に来て魚を観ること以外で楽しめるのかな?


「じゃああのトイレの前に立ってる女性にしよう」


 と言って二人は席を立ち上がって、食器を返し、私に近づいてきた。


 そして私だってことに気づいた二人は驚き観念したかのように下を向いた。


「ねぇ、今日はロケごっこするなって言ったよねぇ?」


 と言いながら二人の前に立った。


「佐々木がどうしてもやりたいって言うから」


「いや、浅野が誘ってきたじゃない」


「いや、佐々木が」


「いや、浅野が」


「佐々木」


「浅野」


 香奈ちゃんと浅野がなすりつけ合いをしている。


 正直どっちが誘って、どっちがやろうって言ったのかなんてどっちでも良い。私が今日はやるな言ったのに隠れてやったことに怒っている。


 醜いなすりつけ合いをしている香奈ちゃんに私はデコピンをした。


「痛!」


 香奈ちゃんはおでこを押えて涙目になっていた。


「ほらな、佐々木が俺のせいにするから」


 ニヤニヤしている浅野には野球のピッチャーのごとく思いっきり振りかぶって拳を浅野の頭に叩きつけた。


「イッテー??え?え?なんで俺はゲンコツ?」


 浅野は痛そうに頭を押さえて私を見ていた。


「どうせ浅野が悪いんでしょ」


 私は浅野を睨みながら腕を組んだ。


「ちっ、仕方ない、佐々木。日米新聞1、ロン毛3、フルート2、雑煮1」


「うん、分かった」


 浅野が謎の言葉を発すると香奈ちゃんと浅野は走って逃げていった。


 なんで?なに?今の言葉。なにあの二人仲良いし相性良いし。呆気にとられて二人に逃げられてしまった。まだまだ説教してないのに。


 ま、いっか、館内は走っちゃいけないのに、走って逃げたからスタッフにガチ説教されているから。


 

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