第22話

 え?なにやってんのあの二人。


「ちょっとなにやってんの二人とも」


「あ、穂花ちゃんおはよう」


 ボウリングの後から香奈ちゃんとはメールでやりとりして私のことを穂花ちゃんと呼んでくれている。少しずつ仲良くなってきてはいる。

 

「おはよう、香奈ちゃん。ってそうじゃなくてなにやってんの」


「なにって、ロケごっこだけど」


 ロケごっこ?


「いや、コイツがさロケできるって言うから」


「お笑い芸人さんみたいに面白いことは言えないけどロケはできるでしょ」


「ほら、寺田からも言ってやってくれよロケをなめるなって」


 なんなのコイツら、もう二人の関係がまったく分からない。 


「そんなことどうでもいいの、今日一日はロケごっこ禁止ね」


「「え〜」」


 息ぴったり。どんだけロケごっこがしたいの。


「今日は三人だけじゃなくて森くんが来るんだし変なノリに付き合わせちゃダメ、だから今日はロケごっこ禁止、分かったら返事」


「「は〜い」」


 そもそもロケごっこってなに?


 最初はあんなに緊張していたのに、もうすっかり私の前で素でいてくれているのでそこは嬉しい。やっぱりボウリングで恥ずかしいところを見られて緊張がなくなったのかも。


「ごめん、遅れた」


 そんなしょうもないやりとりをしているうちに森くんが来た。


「ううん、全然待ってないよ」


 二人に怒っていたが森くんが来たからすぐに笑顔にして返した。


「じゃあ早速中に入ろっか」


 こんなところで喋っていても仕方ない、早く中に入ろう。


 ここの水族館の入場料は1500円と高いのか安いのかは、水族館にそんなに行ったことのない私には全くわからない。


「ねぇ、1500円って高くない?」


「うーん、どうだろうな、映画がそれぐらいだから安いんじゃないか」


 また香奈ちゃんと浅野の二人が喋っている。

 

「そう考えればそうよね」


「ああ」


 なんなの二人は付き合ってるの?


 私は二人のことを気にしている場合ではない、今日はいっぱい森くんと話さないと今日来た意味がない。


「ねぇ、森くん、今日はサッカー休みなの?」


 休みだからここに遊びに来ている。分かっているけどそっからじゃないと会話ができない。


「今日はたまたまOFFだった」


 なんかスポーツやってる人って休みをOFFって言いがちだよね。


「へー、じゃあ今日は楽しもうね」


「ああ、そうだな。ところであいつらって付き合ってるのか?」


 私に聞かれても知らない。まぁ、あんだけ仲が良いと疑うのは分かるけど。


「付き合ってないんじゃない?」


「そうか」


 気になるんだ、香奈ちゃんと浅野の関係が、やっぱりまだ気になるのかなぁ香奈ちゃんのこと。


「じゃあ、12時にフードコート集合で」


「はーい」


 と言って香奈ちゃんと浅野は各自で水族館を回ろうとした。


 いやいや、せっかく集まって来たのになんでみんなで回らないのよ。


「ちょっと待って、なんで各自で回るのよ」


「だって自分のペースで観たいし」


「浅野と同じでーす」


「良いわけないでしょ、せっかく集まって来たんだからみんなで回るよ」


 香奈ちゃんと浅野は渋々うなずいた。


 最初に見えてきたのはイルカだ。ものすごくかわいい。最初にこんなピークを持ってきていいのか、イルカって人気高いから最後の方だと思ってた。


「あっ、こっちきた」


 イルカがこっちに向かってきてくれたからガラスの向こう側のイルカに手を振った。


「イルカかわいいな」


 イルカを観にきた森くんが私の近くまで来た。


 ヤバイ、近い、イルカどころじゃない。

 

 大丈夫かな、顔赤くないかな。


 ちょっと無理っぽいから香奈ちゃんの方に逃げよう。我ながら情けない。


 ん?香奈ちゃんがいない。と思ったら浅野もいない。


 周りを見ても香奈ちゃんと浅野がいない。


 すると、香奈ちゃんからメールがきた。読んでみると、あとは二人でごゆっくりって、あいつら余計なマネを、二人っきりだったら緊張するじゃん。


「あれ?二人は」


「なんかどっか行っちゃった」


「大丈夫か?」


「多分大丈夫」


 森くんは二人が急にどっか行ったから心配してんじゃん。


「じゃあ仕方ないし二人で回るか」


「うん」


 大丈夫かな、ちゃんと喋れるかな、常に話題を出し続けないと。


 


 やらかした。香奈ちゃんと浅野と別れて森くんと二人で回っていたが、森くんは魚を観たそうにしてたけど私が執拗に話しかけるから結構嫌な顔をされ、ヤバイ、と思いトイレに逃げてきた。


 ハァー、なにやってんだろ私。


 洗面器に手をつき、朝、一生懸命化粧した自分の顔を見た。


 頑張った結果空回りって本当笑える。こっからどうしよう。


 トイレから出たら近くにフードコートがあった。


 時計を見たらもうそんな時間だった。森くん呼んでここでお昼ごはん食べよう、とそう思ってたらよく知る声が聞こえてきた。


「じゃあ今からここのおすすめの塩ラーメンを食べていきたいと思いまーす」


「はい、OK、じゃあ俺インサート撮るからラーメン箸ですくって」


「分かった」


 え、なにしてんの?

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