第19話
ボウリング場に来た俺らだったが一つだけ問題があった。
「………」
佐々木が異常に緊張して全然しゃべらないのだ。
さっきまで俺とめっちゃしゃべってたのに寺田が来た途端にしゃべらなくなった。寺田は森が来てないから機嫌は良くはない。今のところは俺が寺田と会話してなんとか場を繋いでいる。
「今日は来てくれてありがとうな」
「別に友達になるって言ったんだからこんぐらいは普通でしょ」
へー意外だ、佐々木のことかなり嫌ってたし友達だと思ってないと思ってた。それとも自分の言った言葉を嘘にしたくないのかもしれない。
「2ゲームぐらいでいいか?」
「いいよ」
佐々木はコクッとうなずくだけだった。いやもうしゃべれよ、いつまで下向いて黙ったまんまなんだよ。
自分たちが投げるレーンまで行き、それぞれが座りたい席についた。席はU字のように並べられていて俺は右の一番前に座り、寺田は俺と対面する様に座った。佐々木は俺と寺田の両方を見て迷った挙句俺の席の隣の一個空いているところに座った。
「何やってんだよ、寺田の隣に行けよ」
俺は隣の席に手をつき、体を佐々木の方に寄せコソコソと話した。
しかし佐々木は俺の言葉にも緊張して返せなかった。ダメだコイツ。
もう仕方ないここはボウリングを楽しむことで自然としゃべれる環境を作ってやるしかない。
「じゃあ俺最初だから投げるわ」
と言い俺は自分のボールを持った。ボウリングなんて行ったことなんてないから投げ方はそれっぽく投げてみた。
するとボールはまっすぐ綺麗にピンに向かっていきピンをすべて倒しストライクをとった。うれしさより驚きが勝ってしまった。
驚きを隠せないまま俺は自分の席に戻ろうとしたら
「ナイスストライク、イエーイ」
と言って俺に片手でハイタッチを求めてきた。
「お、おう」
俺は戸惑いつつしっかりハイタッチをした。手汗を心配した俺は普通だと信じたい。
席に座り休憩しようとしたら
「すごいね」
やっと佐々木がしゃべった。
「やっとくか?」
片手を佐々木の前に出し、ハイタッチを待った。
「イ、イエーイ」
佐々木は一瞬迷ったが何故か急いで両手でハイタッチをしてきた。
アホ、こっちは片手なんだから両手でハイタッチすんな。
「次、寺田だからしっかり見とけよ」
「うん」
佐々木の緊張は少しは解けたのだろう表情が柔らかくなってきている。
次の寺田は二回投げて2ピン残した。
「綺麗なフォームで投げてたな、何かスポーツやってたのか?」
「うん、中学校の時にバスケやってたの」
「へー今は?」
「今はもうやってない、なんか疲れちゃって」
「俺も中学までは野球やってたんだぜ」
「わ、意外!ずっと教室の隅にいるから体動かすのできないと思ってた」
そこそこ会話が盛り上がり俺も楽しくなってきた。なんか視線を感じ横を見てみると、佐々木が羨ましそうにこっちを見ていた。
忘れてた、今日は佐々木と寺田が仲良くするために遊んでんだった。
「ほら、次お前だぞ」
やばいと思った俺は佐々木を投げるように誘導した。
「分かってる」
佐々木は怒りながらボールを持っていった。
「怒ってる?」
佐々木の態度に寺田が心配してくれたようだ。
「大丈夫、すぐ機嫌良くなるから」
「じゃあいいけど」
俺たちは佐々木の投げる様子を見ていたら何故か佐々木はボールの穴に指を入れずに両手でボールを持ち、正面を向き、脚を開いて投げた。
うわ、一番ダサい投げ方してるわコイツ。寺田もちょっと引いてるし。
それでも二回投げて五本ピンを倒している。
佐々木が戻ってきて自信満々の顔で
「どう?すごいでしょ」
と言ってきた。
いや、ドヤ顔すな。
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