第17話

 夏休み


 一学期が終わり二学期が始まるまでの休み期間であり、暑すぎるから自宅学習をしましょうっていうのが夏休みだ。決して遊ぶために用意されたわけではない。つまり夏休みである今日は遊ばずに自宅学習をしてないとおかしいとなる。なのに


「浅野上手いじゃん」


「へーボウリング得意だったんだ」


「俺にこんな才能があったとは」


 ボウリングをしていた。


 

 時を遡ること二週間前


 すっかりお馴染みになったファミレスで作戦会議を行なっていた。


「なぁ会話ぐらい普通にすれば」


「仕方ないじゃない、普通が分からないんだもん」


 晴れて友達(?)になれた佐々木と寺田だったが、会話が全然盛り上がってなかった。友達と言っても友情は1ミリもないので寺田は会話を盛り上げようとも思ってなかった。


「もう無理かもな寺田と仲良くするのは」


「諦めないでよ、まだきっかけがないだけよ」


「そのきっかけができなかったから森を犠牲にして友達になったんだろ」


 森と仲良くなる条件で佐々木と寺田は友達になったから、きっかけを作ってこのザマだともう本当に諦めるしかないと思う。


「お願いだからなんか案を出して」


「いいけどお前も考えろよ」


「ありがとう」


 とは言ったけど友達のいない俺と友達なのに友情がない佐々木が友達になった後のことを考えたところで何も良い案なんて出てこない。


「まずはずっと一緒にいるってところからどうだ?」


 佐々木は気まずくなると愛想笑いをして「あ!私次の授業の準備しなくちゃ」と言って自分の席へ帰ってくる。


「まぁそれは頑張るけど、もっとなんか一気に仲良くなれる方法を知りたいの」


 出た!わがままガール。そんなんだったらいつまで経っても性格悪いぞ。


「じゃあお泊まりするってのは?」


「私の家に?」


「ああ、それでガールズトークとかしたらどうだ」


「私、自分の部屋に他人を入れたくないの」


 コイツ、マジで殴りたい。


「じゃあせめてリビングだったらどうだ。リビングだったら自分が普段から使ってるから気が楽になって普通に話せれるんじゃないか?」


 らしくなく結構喋ってしまった。でもかなり的を得てるんじゃないか。


「家の位置知られたくない、急に仲が悪くなって恨んで家燃やしに来るかもしれないじゃない」


「そんなわけあるかい!それじゃ友達どうこうじゃなくて普通に生きていけないぞ」


 もうコイツはダメだ。


「もうやめだ、お前真剣に考える気ないだろ」


「だって自分の空間を大事にしたいの」


 分からなくはないがそんなこと言ってられる状況じゃないだろ。


 はぁ〜とため息をつき背もたれに背をもたれた。すると後ろの会話が聞こえてきた。


「ねぇ、夏休みどこ遊びに行く?」


「海はマストじゃない?」


「ナンパされたらどうしよう」


「大丈夫アンタはナンパされないから」



 それだ。


「夏休みどっか遊びに行けばいいんじゃないか?」


「それだ」


 色々あって忘れてたけどもう夏休みが近づいてきていた。俺の夏休みは映画を観に行ったりまだ読んでない本を読んだりバイトをしたり、と忙しい夏休みなのである。


「ちゃんと場所とか時間とか決めとけよ」


「ん?浅野も来るでしょ?」


「は?なんで俺が行くんだよ」


 二人で行くから意味あるんじゃないのか。


「気まずくなったらどうするの」


「そこはなんとかしろよ」


「お願い来てよ」


「絶対いや」


「私寺田と二人で盛り上がれる自信がない。だから一生のお願い」


 佐々木は机に頭が当たりそうになるぐらい深々と頭を下げてきた。


「今回だけだぞ」


 本当に俺はコイツにアマイなぁ。


「本当!やったー!いつかファミレス代自分で出すから」


「おい、今日も俺がおごるんかい」


 そして俺の夏が始まる。

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