第15話
昨日のファミレスでのゲーム話で盛り上がったせいで完全に寺田との仲良くなる話し合いをすっかり忘れてしまった。
で案の定、次の日はボロボロの結果となった。
最終的には佐々木が歌を歌いだし、俺はテンパって担任の先生のモノマネをしてスベッた。
二人とも元気はなく反省会はなく、だからといって帰る元気もなく、みんなが帰っていくなか二人だけ自分の席で放心状態だった。
「なぁ、もう諦めないか?」
「いやよ、ここまできて諦めるのはなしよ」
最初は佐々木が嫌がってたのに今では佐々木の方が頑張っている。
「でも、このまま進展がないままじゃ、早く手を打たないとだな」
「アンタが裸で踊ってみたらいいんじゃない?」
「お前真剣に考える気ねぇだろ」
もうなげやりになってんじゃねぇか。
「ダメな奴とダメな奴を足すからダメなのよ、ダメな奴とダメな奴をかけたら良い発想が出るわよ」
「なるほどな」
なに言ってんのコイツ。良い案が出ないから頭おかしくなってんじゃん。なるほどなって言ったけど何一つも分からん。
するとドアから誰かが入ってきた。
「最悪、日本史のノート忘れるなんて」
寺田がノートを忘れて教室に入ってきた。
一瞬、教室の中が静まり返ったが、寺田は俺ら二人を見て机に向かって歩きだしてノートを取り、教室を出ようとしていた。
「佐々木」
「分かってる」
俺達はダッシュでドアに向かった。俺は前のドア、佐々木は後ろのドアの前に立ち、寺田を教室から出られないようにした。
「どういうつもり」
寺田は機嫌が悪そうに言ってきた。
「よくもまぁ私達を無視してくれたねぇ」
「別にあなたたちの話を聞く義理がなんてないし」
「俺がスベッたのもお前のせいだ」
「それは普通に面白くなかった」
そんなバカな、特徴はしっかり捉えていたはずなのに。
「もう帰っていい?」
「ちょっと待ちなさい」
俺と佐々木は一切動こうとは思わなかった。これが最初で最後のチャンス、これを逃した今後チャンスなんて訪れない。
「私と友達になりましょう」
きっとこんな友達の誘いはないだろう。気づいたらそばにいて、一緒にいて楽しいのが友達なのだろう。友達はなろうって言ったらなれるものじゃないと思う。友達いたことないから知らないけど。
でも、佐々木にとって初めてのことなのだ友達を作るってのは、不器用ながら寺田に伝えたのは俺はすごいことだと思う。
「無理」
「どうしてよ」
「あなたのことが嫌いだから」
はっきり言いやがった。嫌いだからってそんなにはっきり言われると悲しいよ。
ほら、佐々木がめっちゃ傷ついてるんですけど、今までに嫌いって言われてこない人生を送ってきた佐々木にはつらいだろう。
「なんで私を嫌うの?」
すごいな。傷ついてるのになんで嫌われているのか聞いてる。
「あなたのせいで森くんがおかしくなったからよ」
ああ、そうだった、寺田は森のことで佐々木をいじめてたんだ、忘れてた。
「私のせいじゃないわよ」
「そんなことない、あなたが来て確実に変わった」
二人の話し合いはヒートアップしてきている。
俺は二人の話し合いを聞いていて森のことならなんとかなるかもしれないと思った。
「森と仲良くなりたいのか?」
俺がしゃべりだしたから二人は俺の方へ顔を向けた。
「もちろん、できることなら」
「できる、なぜなら俺と森は親友だからな」
嘘だけどな。でも、俺の言うことはすべて聞いてくれる奴だ。
「嘘よ、だって森はあなたをいじめてたじゃない」
「仲直りしたんだよ、逆にあんなことがあったから絆が深まったとも言える」
「本当に?」
「ああ、本当だ。望みであれば森と話せれるようにするし、森とくっつくように手伝いもする。どうだ、佐々木と友達になってくれるか?」
「うん、なるなる」
よっしゃ、寺田が佐々木と友達になった。絶対にこんなんで友達になるとかおかしいけどそんなのはお構いなしだよ。
「よろしくね佐々木さん」
「うん」
「じゃあ、私先帰るから」
そう言って機嫌良く寺田は教室から出て行った。
これでやっと俺と佐々木の関係は終わる、時間にしてみれば短いけど長く感じた。明日からは通常の生活が始まる。
「ねぇ浅野、会話する時って何話せばいいの?」
やっぱりもうちょっと続きそうだ。
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