第10話
俺は屋上が好きだ。外の空気が吸えるし、たまにくる優しい風が心地よい、なんと言っても景色も綺麗だ。
俺はルーティンみたいなのに憧れて、野球はもちろん、寝る時は十一時にとか、決まった日にしか使わないタオルとか、自分の中でルーティンを作ろうとしたがすぐ飽きてしまった、そんな俺でもここの景色は何度見ても綺麗だ。
その綺麗な景色が見れる屋上に佐々木と二人っきりでいる。
「どういうことよ、なんで私のいじめがなくなってるの」
なんで俺は嫌いな奴と二人で屋上にいなくちゃいけないんだ。
「なんだよ、なくなって欲しくなかったのか」
「そう言うことじゃなくて、私が言ってるのはどうやっていじめをなくしたの」
「別に簡単なことだ、「寺田は次にお前をいじめのターゲットにしようとしてるぞ」って言う噂を佐々木をいじめていた女子に流しただけだ。」
「それだけ?」
佐々木はさっきまでの必死な顔からキョトン顔になった。
「それだけ」
俺は当然かのように答えた。
それだけって言われたらお終いだけど。まぁ詳しく言えば
神崎と森に佐々木をいじめている女子に「寺田は次にお前をいじめのターゲットにしようとしてるぞ」と一人一人に言っていった。
そしたら次は自分がいじめられてしまうのではないかと心配でならなくなる。一人一人が不安になって寺田に不信感を抱く。私、いじめられるのかなぁと思った一人は友達に相談したら相談した相手も同じ噂を聞いていてそれが広がり、いつしか寺田に味方はいなくなった。一対一ではいじめは起こらない。いじめに協力していた奴、いじめを見ていた奴が噂を聞いたらいじめに協力しないし、いじめを見ていた奴は冷たい目で寺田を見る。そうして寺田は孤立していき、いじめどころではなくなり、佐々木へのいじめはなくなった。
まぁこれで無理だったら動画作戦でいくつもりだったから助かった。
突然だが俺はいじめは一生なくならないと思っている。背の高い低い、勉強ができるできない、速く走れる走らない、こうやって人はすぐに自分以外の違うところ、劣っているところを探したがるし、それをバカにする。こんな些細なことでいじめは起こる。だが、いじめはなくならないが止めることはできる。それは
勇気
みんな持っているのにそれを出し惜しみ、いざというときに中々出せない、それを出せば確実にいじめはなくなるものだ。これが出せればいじめはなくなると俺は思っている。
そんな話はさておき
「とりあえずありがとう、おかげで助かったわ」
「別に俺は何もしてない神崎と森のおかげだ」
それにまだこの作戦には続きがある。
「確か佐々木って一人でいるの嫌って言ってなかったか?」
屋上で泣いた時に聞いた。そこでひとりでお弁当食べるのは嫌って言ってたのを思い出す。たまに一人で食べるのは美味しくない、みんなで食べる方が美味しいと聞くけどそれは嘘だ。一人で食べてもみんなで食べても味は一緒だ。それを一生懸命作ったのに一人で食べたから美味しくないってそれは作った人に失礼だと俺は思う。話を戻そう。
「別に、言ったけど」
佐々木も屋上のことを思い出したのか少し恥ずかしそうに言った。
「じゃあちょうどいい、お前に紹介したい奴が一人いるんだ」
「えー誰よ、その人!」
友達ができると思って少しテンションが上がっている。
「寺田って奴」
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