第9話

 月曜日の朝


 佐々木香奈を救う方法は思いついた。土曜日に長谷川さんからヒントをもらった。あとは実行するだけだ。


 まず協力者が必要だ。一人だけ心当たりがあるけど行きたくないんだよなぁ。でも協力者がいないと成立しないから、仕方ない、行くか。 

 

 俺は朝練をしている野球部を見ていた。


 今から会おうとしてる奴は別に友達ではないけど、初対面でもない、ただのしゃべれる奴だ。


 俺はソイツを今から協力者になってもらおうと思っている。


 でも、なるべくしゃべりたくないんだよなぁ。


「おーーーい」


 うわ、来た。


 コイツは神崎拓海かんざき たくみだ。神崎は野球部の部員でショートのレギュラーでクラスでも人気者だ。


「どうした?信、今度こそ野球部に入ってくれるのか?」


 神崎は俺をいつも野球部に誘ってくる。


 忘れてるかもしれないが俺はリトルシニアでそこそこすごいピッチャーだった。でも、母さんが死んだからもうやる意味がない。


 それをどこで知ったのか神崎は入学当初から熱心に誘われている。


「いや、違う。今回は神崎に頼みごとがあって来た」


「なんだよ、頼みごとって」


「実はな」


 俺は佐々木がいじめられていることと、それを俺が助けようとしていることを話した。


 でも、俺が佐々木にいじめられていたことは話してない。神崎は良い奴だからもしかしたら手伝ってくれないと思ったからだ。


「へー意外、信が誰かのために動くって」


 俺も意外だと思っている。俺は俺のために幸せになるために生きていくと決めたのになんで佐々木を助けなきゃいけないんだと今も思っている。


「うるせぇ、で、協力してくれるか?」


「当たり前だ、信が困ってるなら助けになりたい」


 これだからコイツは嫌いになれない。


 

 念のためにもう一人ぐらい協力者を増やしておこう。


 誰かいないかなぁ、俺にとって都合の良い奴。例えば、俺に弱みを握られて俺の言うことを聞いてくれる奴。そんな奴いないかなぁ。


 

 あ!いたわ、都合が良くて俺に弱み握られてる奴。



「もーりーくーん」


 廊下を走りながら俺は笑顔で手を振りながら近づいていった。


「げ、浅野」


 そう、コイツは森敬もり たかし、停学処分から解けてもう学校に来ている。俺をいじめていたが今は立場が逆転している。


「森くん、頼みたいことがあるんだけど聞いてくれる?」


「嫌だ、って言ったら」


「あの動画をSNSにあげる」


 あの動画とは、俺をいじめていた時の動画だ。


「分かったよ、頼みごとって何だ」


 そう、最初からお前に拒否権なんてない。


「話が早くて助かるよ、実はな」


 神崎と同じことを話した。


「佐々木がいじめられてるってマジか?」


 そうか森は停学で知らないのか。


「マジだ」


「誰がいじめているんだ、俺が直接話してくる」


 どうしたコイツ、何怒ってんだ。佐々木のこと好きなのか?


「まぁ待て、俺の言う通りすればいじめはなくなる、確実に」


「本当だろうな」


「ああ」


「じゃあ俺はどうすればいい、俺に出来ることか?」


「心配するな、とても簡単なことだ」



 

 次の日の放課後


 俺は佐々木に呼ばれて屋上に向かった。


「どういうことよ、なんで私のいじめがなくなってるの」


 俺は佐々木へのいじめをなくすことに成功した。


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