第8話

 今日は土曜日、屋上で佐々木香奈に助けてと言われた次の日だ。なんか結構かっこいい感じ出てたけど今ピンチなのである。


 

 任しとけって言ったけどいじめから救う方法なんてものは無い。


 だってちょっとカッコつけたかったんだもん、流れに任して勢いで言っちゃった。


 何が「おう、任しとけ」だ、そんなん方法があったら最初から救ってるって話。


 そもそもなんで俺はアイツを救わないといけないんだよ、俺アイツのことすっごい嫌いだし、アイツの自業自得なのに。


 でもやっぱり俺はいじめのつらさを知ってしまっているからアイツの気持ちも分からなくはない。アイツは楽しい学校生活を知っているから尚更自分が惨めに思うのだろう。


 それにアイツは泣いてたんだよ、俺は俺をいじめていたアイツしか知らないんだよ、泣かないでくれよそんなんずりぃーよ。


 アイツも俺こと嫌いなのに俺を頼ったんだそれだったらその期待応えてみせよう。


 

 さぁ話を振り出しに戻そう、アイツをいじめから救う方法が無い。


 別に前にやった方法でもいいけどあれは結構最終手段なんだよなぁ。もっと穏便にすませたい。あの時はムシャクシャしてたし、森嫌いだったから良いかなぁと思ったんだよ。


 どうすんだよ、逆に助けて欲しいよ。


 こういう時に相談できる相手がいればなぁ、俺友達いないし頼れる人がいないんだよなぁ。これがぼっちの弱点なんだよ。


 あ!一人だけ頼れる人いたわ。



「こんにちは、今日もよろしくお願いします」


「こんにちは、今日もよろしくね浅野くん」


 そう、同じ仕事仲間の長谷川さんだ。


「すみません、長谷川さん今日終わったら時間空いてますか?」


「あら、珍しい。別にいいわよ」


「ありがとうございます、じゃあ仕事終わりに喫茶店でお話ししましょう」


「ふふ、浮気と間違われたらどうしようかしら」


「いや、親と子に見られるんじゃないですか」


「やっぱりやめようかしら」


 割とガチで怒った声で言ってきた。


「ええ?どうしてですか」


「自覚ないところがたち悪いわね」


 思ったことを口にしただけなのに。なにはともあれ相談に乗ってくれるらしい。


 仕事が終わり、休憩室で長谷川さんが待っていてくれた。


「じゃあ行こうかしら」


「はい」


 二人は荷物を持って店を出た。


 喫茶店に着き、対面にして座った。


「すみません、時間を頂いて」


「別にいいわよ、あと好きなの頼んで良いわよ」


「いやいや、話し聞いてもらうのに、俺が出しますよ」


 首と手を振って全力で否定した。


「いいのよ、私が年上なんだから」


 年上の余裕ってやつだな。かっこいい。ここで断るのも失礼だな。


「すみません、じゃあ遠慮なく」


 とか言いながら安いやつを注文した。


「で、今日呼んだ用はなにかしら?」


「そうでした、長谷川さんは学校でいじめていたことはありますか」


「急にすごいこと聞いてくるね」


 長谷川さんは驚いた表情をしていた。


「残念ながらいじめてもないし、いじめられてもないよ」


「そうですか」


「でも、いじめられているのを見たことはあるわ」


 これはかなり有力な情報かもしれない。


「怖かったよ」


「どうしてですか?」


「だっていつ自分に回ってくるか分からないじゃない」


 そういうものなのかいじめを見ている人って。


 

 あ!そうか、そうすればいじめが無くなる。俺は稲妻でも走ったかのように思いついた。


「ありがとうございます、おかげで悩みが解決しました」


「え?こんなのでいいの」


「はい、大活躍です」


「じゃあ良かったわ」


 よし、これで佐々木香奈を救う方法は思いついた。あとは実行するだけだ。



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