第7話
机に落書きされている。それが私の目の前で起きている出来事だ。
最初は見間違いだと思った。でも、周りを見ても同じ光景で同じ人が席に座っている。間違いなく落書きされているのは私の机だ。
はぁ?私がぁ?浅野じゃなくて?
っざけんな。この私だぞ、誰よりもかわいくて誰よりも人気者のこの私だぞ。おかしいだろ。誰がやった、誰が書いた、誰が私を侮辱している。
するとこっちに3人の女子がやってきた。
「あなたが森くんを使ったせいで、森くん停学処分になったじゃない」
今しゃべったのは
私がこの高校に来る前の女子のNo.1で男子にチヤホヤされていた。私が来てからすっかり人気がなくなった。
はぁ?私じゃねぇし、浅野のせいで停学処分になったんだし。
「あなたが転校してきたせいで森くん、全然私に興味なくなったし」
へーコイツ森のこと好きだったんだ。
「それはもともとアンタに魅力がなかっただけよ」
やば、つい思ったことをしゃべってしまった。
「なんですって」
私は胸ぐらを掴まれて壁に押しつけられた。教室の中だから目立ってしまう。とりまきの二人が寺田を抑えた。
「まぁいいわ、そんな生意気な態度とってられるのも今のうちだから」
胸ぐらを離し、自分の席へ帰っていった。私この短期間で胸ぐら二回も掴まれた。
まぁ大丈夫でしょ、みんなは私の味方だし、すぐ終わるでしょ。
しかしそんな考えはあまかった。
机に落書きされたり、教科書、筆箱隠されたり、いきなり水をかけてきたりされているのを見ているのにみんなは無視していた。
みんなは私を避けていた。むしろ私に恨みがある女子はいじめに参加していた。
なんて醜い、みんなは私がかわいいからそれに嫉妬していじめているんだ。
上等だよ!私がいじめなんかに負けるわけがない。
ある日、私は体育館倉庫に閉じ込められてしまった。完全に油断してた。私が最後の片付けをしていたら急に閉められてみんな帰っていった。しかも6時間目だから最悪明日に出ることになるかもしれない。
ここの倉庫には窓があるけど高すぎて届かなかった。スマホも持ってないし。
だりぃ、誰か気づいてよ。なんで閉じ込められないといけないんだよ。そもそも私がいじめられてるんだから誰か助けろよ。次、自分がいじめられるのじゃないかってビビってんなよ。
2時間経っても助けは来なかった。
時間が経って段々精神的に辛くなってきた。私も同じことしてきたしやっぱりバチがあたったのかなぁ。いつまで続くのかなぁこのいじめ、つらいよ。
ネガティブなことを考えれば考えるほどもう生きていける自信がなくなってきた。涙目になり、心が弱ってんなと思った。涙を手で拭い、気持ちを切り替えた。
すると、ドアが開いた。
まだ私にも助けてくれる人がいるんだ。お礼を言おうと誰か見てみると、
浅野だった。
「大丈夫か?」
私を心配して声をかけてくれた。
「すまん遅くなった」
はぁ?なんで謝ってんの、なんで心配してんの、つい最近までいじめられていた浅野が私に心配?
「別に助けてなんか言ってないし、余計なことしないでよ」
最近までいじめられていた浅野に助けられるのは私のプライドが許さなかったからつい大声で言ってしまった。
「今日はありがとう、でももう私に関わらないで、アンタも私のこと嫌いでしょ」
そう言って私は体育館倉庫をあとにして荷物を取りに行って、家に帰った。
次の日も次の日もいじめは続いた。いつか終わると信じていじめを耐え続けた。
しかしある日、教室で食べるのが嫌で屋上で食べていた時、もう死のうと思った。
それは突然だった。一人で食べても美味しくなかったお弁当を食べてる時ふと思った。
死んだら楽になれるし、アイツらも私がいじめで死んだと思っていじめを後悔するだろう。死んで仕返ししてやる。
歩いてフェンスに近づき、フェンスを越えた。下を見ると体が震えてきた。あとは手を離して前に倒れるだけ。
大丈夫、大丈夫、大丈夫、自分に言い聞かせて体の震えを止めようとした。
深呼吸をして、呼吸を整えた。痛いのは一瞬、大丈夫、私ならできる。
よし、
決意を固めて手を離し、体を前に倒れいこうとした瞬間、腕を掴まれていた。
「なに死のうとしてんだ」
浅野が私の腕を掴んでいた。
浅野がフェンス越しから腕を伸ばしてしっかり私の腕を掴んでいた。そして、フェンスから引き上げてくれた。
「なんなのよアンタ、なんで助けにきたのよ、もう来なくていいって言ったじゃん。私のこと嫌いなくせに助けんなよ、うっとしいんだよ。アンタも私のこと死んで欲しいと思ってるんでしょう、もうほっといてよ」
叫びながら本当に情けないことを言ってしまった。プライドもクソもなかった。それほど私はコイツをうざいと思ってたからだ。
「ほっとくわけねぇだろ、がんばって生きろよ」
なんでコイツなんかにそんなこと言われなきゃいけないんだ。
「アンタなんかに私の何が分かるのよ」
私に残っているプライドで言葉を発した。
「お前のことなんか何にもしらねぇよ、だがなぁ、いじめのつらさは知ってる」
そうだコイツは私の何倍もいじめを受けてたんだ。
「いじめのつらさを知ってるから俺はお前を助けるし、俺はお前の味方だ」
それを聞いた瞬間、涙が溢れた。止まれ、止まれ、止まれ、嫌いなやつの前なんかで泣きたくない。でもコイツは私のことを助けるって言ったし、味方って言ってくれた。もしかしたら、もしかしたら、コイツは私をいじめから助けてくれるかもしれない。
「助けてよ、もういやよ、もういじめつらいよ、ひとりぼっちもいや、ひとりでお弁当なんか食べたくないよ、楽しい学校生活を送りたい」
もう涙を止めようとも思わなかった。浅野のこといじめておいて楽しい学校生活を送る資格なんてないだろう。だけど、願いが叶うならもう一度やり直したい。
「おう、任しとけ」
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