第5話

 準備は整った。準備するのに一週間もかかってしまった。これでいじめがなくならなければこの学校をやめる。


 めちゃくちゃ簡単に説明すると俺がいじめられているところをカメラで撮り、証拠をバッチリ押さえる。これが一応作戦だ。


 で準備した物といえば、カメラ、これが一番重要だ。これが無ければ何も始まらない。これはスマホでなんとかなる。


 あと、パソコンとUSBメモリーだ。まぁこれは多分必要ないけど念のために用意した。


 あとは俺がいじめられなければならない。しかし、それに関しては心配しないでもしっかりいじめられるから問題ない。


 問題なのは誰が撮ってくれるかだ。俺が撮ってたらすぐにバレてスマホを取られてしまう。俺に友達なんてものはいない、だからどこかに固定しておかないといけない。


 それで俺が考えたのは、俺がボコボコにされているところを撮る。これは明らかにいじめだし、見栄えが良い。俺が撮る必要もないしどこかに置いておけば良い。


 よし、あとは体育館裏に呼ばれてボコボコにされるだけだ。


 一日中のいじめを耐え抜いた。そして放課後俺はいつも通り体育館裏に呼ばれた。

 

 俺は誰よりも早く体育館裏に行き、カメラを設置して録画を開始した。


「来るの早いじゃーん、そんなに殴られたいの?」


 俺をいじめているリーダー的存在が言った。あとにもゾロゾロと人がやってきた。


 やっぱりまだ緊張している。手が震える、冷や汗が流れる、心臓がうるさい、何度もうけているのにまだ慣れない。


 俺は最近いじめで反応を示している。無言でただ殴られてたら、「ちょっと遊んでただけでーす」と言われる可能性がある。だから一応反抗してたらいじめに見られる可能性がぐっと上がる。


「今日は殴るのやめてくれないかなぁ」


 震えた声で弱々しく相手に向けて言った。


 すると、ハハハハっと笑い声が響いた。

 

「やめるわけねぇだろ、今日はストレスが溜まってんだ簡単に倒れるなよ」


 そこからはよく覚えていない、俺殴るだけ殴ってみんな帰っていった。


 俺は設置していたスマホのカメラの録画を停止した。あとはこれを校長室に持って行って動画を見せるだけだ。


 校長室に着いてノックをした。


「失礼します」


 ドアを開け、校長先生が座ってこっち見ながら


「どうしたんだ?」


 俺は校長先生の座っているとこまで行き、机にスマホを置き、動画を見せた。


 校長先生はその動画をじっくり見ていた。


「分かった、明日いじめてた奴らと親を呼んで話しあいをしよう」


 動画が終わって顔を上げて言ってきた。


「分かりました。失礼します」


 俺は机の上のスマホを取ってポケットにしまって校長室から出た。


 よっしゃー。やっと終わる。本当に長かった。話しあいって言っても圧倒的に俺が優勢だ。勝ったのも同然だ。


 うれしさが隠せず、殴られたことなんて忘れてルンルンで家に帰った。



 次の日の朝、ショートホームルーム終わり


「浅野、森、池田、山口、白川、佐竹はこのあと生徒指導室に来なさい」


「何かあったのかな?」


「誰かがやらかしたんじゃない?」


 先生がショートホームルームの最後にこれを告げたら教室がザワザワした。


「えーだりぃ」


「めんどくせー」


 とか言いながら俺をいじめていたやつらは席を立ち、教室を出ていった。


 生徒指導室に着き、中に入ると、俺をいじめていたやつとその親がいた。


「とりあえず座れ、これで全員です」


 生徒指導の先生が校長先生に言った。


「まぁとりあえずあの動画をみんなさんには見てもらいます。浅野くん」


「はい」


 俺はポケットからスマホを出し、机の上に置いて動画を再生した。


 動画が終わり、校長先生が話し出した。


「まぁ、これはどこから見てもいじめですね。こちらとしては森くんの推薦取り消しと同時に二週間の停学処分が妥当だと思います」

 

 校長先生は淡々と処分内容を話した。


「待ってくださいよ、校長先生、推薦取り消しは違いますよ」


 森はサッカーでかなり有名な選手らしくで色々なところから来て欲しいと言われているらしい。


「違うことは無いですよ、だっていじめをしていた生徒を推薦したくありません」


 おおー控えめに言ってかっこいい。


「校長先生、推薦取り消しだけでなく停学処分も無しにしていただきたい」


 今話したのは森の父で市長をやっている。


「それはなぜ」


「私は市長をやっているんですよ、推薦取り消しに停学処分なんてものがバレたら私の地位が危うい」


「それでも」


「この高校にわざわざ支援してるのはどこだか分かってますか」


 校長先生は完全に何も言えなくなってしまった。

 

 まぁ良い、こっからは俺のターンだ。


「俺は別に良いですよ、推薦取り消しと停学処分無しでも」


「ほら、こうやって本人も言ってることですし」


 ここから始めよう俺超絶怒涛の復讐劇を。


「ただし、この動画を顔と名前を晒してSNSにあげます」


 相手は面を食らった顔をしている。


「ほら、ここのボタンを押せば退学どころか人生終わりだな」


 俺はスマホを手に持ち、ニヤニヤしながら押すふりをした。


 すると森が


「やめてくれええええええええ」


 俺が手に持っているスマホを取り上げて床に叩きつけた。そして何度も踏みつけられスマホはボロボロになった。


「これでいじめの証拠がなくなったぜ。ざまぁ。ハハハハハハハハ」


 スマホも壊れたし森も壊れたようだ。


「なぁ、バックアップって知ってるか?」


「え?」


 俺ポケットからUSBメモリーを何個も取り出した。なんで何個も?と思うかもしれないが少なかったらまた壊れると思ったからだ。


「ここにあの動画を移しといたんだ」


 まぁ嘘だけど。使わないと思ってたんだけどなぁ。


 森はそこでへたり込み、他の生徒は泣きそうになり、森の父とその他の親は顔を青くしていた。


 俺も鬼ではない、そこで俺は提案を出した。


「SNSにあげませんし、推薦取り消しも無しで良いですよ、ただし、しっかり停学処分は受けてもらいます」


 この俺の提案が採用され、話しあいは無事(?)に終わった。


 これで明日からは俺の幸せになるための学校生活が始まる。母さん見ててくれよ、俺絶対に幸せになってみせるから。



 次の日の朝、机に落書きされていた



 佐々木香奈の


 

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