第3話
机に落書きをされていた。
小学校ではよくあった。落書きされるたびに雑巾をしぼって綺麗になるまでゴシゴシと磨いた。最初はキツかったけど段々と慣れた。でもある日、あまりにも悔しくて泣いてしまった。泣きながら机を拭いていると周りが笑っていた、それでまた泣いてしまってもう笑われたくなくてこの日から俺は泣くのをやめた。
泣く、嫌がる、など反応を示してしまったら、やった側の思うつぼである。だから嫌な顔を見せなかったし、泣かなかった。
でもそれは小中学校のことで、今俺が見ているのは高校になった俺の机である。
言葉を失った。高校になってもいじめられるのかよ俺は。このまま立っていても仕方ないし机に近づいていく。
席の前に立った。
「浅野がいけないんだよ、昨日私の胸ぐらを掴んで壁にぶつけたから、痛かったよ」
コイツが昨日のことを広めたのか、コイツしかいないけど。俺がここで「こういう事情があったんだ!」と言ってもいいがどうせ陰キャボッチの言うことより、黒髪美少女の言うことを信じるだろう。
みんながこっちを見ている、残念ながらお前らが思うような反応はしない。
ここで豆知識、机に油性のマジックペン落書きされてしまったら慌てずに身近にある油分が入っている物をさがしましょう。今回はたまたま日焼け止めを持っていたからこれを使いましょう。あとはハンカチで拭き取るだけです。
ほら、この通り綺麗になりました。もう余裕なんだよこんないじめ、お前が知ってる小学校の俺じゃないぞ。
ここから佐々木香奈と俺のいじめの戦いが始まった。
教科書、体操服、上履きを隠さた。次の日からは全部持って帰った。予習、復習できたし、体操服と上履き毎日綺麗にできてむしろ良かったわ。
トイレに呼ばれて個室に入れられて水をかけられた。ちょうど暑かったから涼んだわ。ドライヤーで制服乾かす時髪も濡れてるしついでに寝癖が直せて一石二鳥だわ。
体育館倉庫に閉じ込められた。授業サボれてラッキーだったわ。マットもあって寝やすかったし。
机を窓から外に投げられた。この学校は三年が三階、二年が二階、一年が一階で、二階まで運ぶとちょうど筋トレになって良かったわ。一年に見られながら運んだから一年に俺の存在を知ってもらってうれしかった。
いじめが始まって約一か月のある日の放課後、校舎裏に呼ばれて行ったら、男子5、6人に囲まれてボコボコにされた。何回も吐いたけど殴られた。何が面白いのかゲラゲラ笑っていた。気が済んだのか帰っていき、地面に這いつくばっている俺一人だけになった。
視界が歪んでいる。殴られて目眩でもしているんだろう、すぐに治るはずだ。だが次第に歪みが大きくなり一粒の水滴が落ちた。ここでようやく気づく。
俺、泣いてるんだ。
今まで強がってただけなんだ。全然余裕じゃねぇじゃん、小学校と何にも変わってねぇじゃん。そう思ったら涙が止まらなかった。
もう死のう。
死んだら楽になれる。今なら母さんの気持ちが分かるかもしれない。生きてたらいつか良いことが起こるかもしれないと思って今まで生きてきたけど、もう良いことなんて起きないな俺の人生。
どんな自殺をしようか考えながら帰り道を歩いた。やっぱり大好きな母さんと同じ死に方したら一緒のところにいけるかな?
家に着き、縄を吊るし準備完成した。そこでふと思った、遺書を書こう。遺書を書く紙を探した。探しながら思った、書く相手なんていたっけ?まぁ最後ぐらい良いか。
探してたら何か分からない手紙を見つけた。なんの手紙だろうと思い、自殺するところまで行き、読んだ。
信へ
まず、ごめんなさい。つい感情的になって首を絞
めてしまいました。あと、信がいじめられている
のを薄々感じていても何もしなかったこと。
本当にごめんなさい。
言い訳がましいですがお父さんが浮気していた
事とパートをいっぱい入れてしまって精神的にも
肉体的にも限界がきてしまいました。もう生きて
いける気がしませんでした。ごめんなさい。
しかし、あなたにはこんな風になって欲しくはあ
りません。私は知っています。私が野球を好きな
のを知って野球を始めたこと、いじめを私に悟ら
れないようにいつも私の前では笑顔だったこと、
私を少しでも楽できるように料理を作ってくれた
こと、私の誕生日の時にケーキを作ってくれた時
は涙を堪えるので必死でした。私はこんなに優し
い信が大好きです。ここまでが感謝の手紙です。
次から言うことは絶対に守りなさい。
絶対に死なないで。こんなに優しい信が幸せにな
れないなんてないんだから。最後に、私のもとに
生まれてきてくれてありがとう。愛してます。
母より
この手紙を読んで涙が止まらなかった。俺を愛してくれたんだなぁ本当にありがとう。手が震え、視界が歪み、嗚咽が中々止まってくれなかった。
俺って幸せになって良かったんだ。
もう一生分泣いたし、今から幸せになれるように生きていこう。そのためにもいじめをなくさないといけない。
よし、明日から俺の超絶怒涛の復讐劇を始めるとしよう。
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